1970年代半ば、高度経済成長期の真っ只中の日本にスーパーカーブームが訪れました。子供から大の大人までスーパーカーは憧れの的となり、交差点で止まると人が群がり動けなくなるほど!まさに社会現象となったスーパーカーブームで人気を博した10台を厳選してご紹介!今回は後編です!
一番好きだったマシンはどれですか?
スーパーカーブームとは?
1975年、「少年ジャンプ」にて池沢さとしの漫画「サーキットの狼」の連載が始まり、少年たちの間で爆発的な人気を集めました。
スーパーカーが激闘を繰り広げるこの漫画の人気は、本を飛び出し現実世界でもブームが巻き起こします。
街で見かける車とは全く違う形、そして圧倒的な性能を誇るスーパーカーは少年たちを魅了し、超高価格であった事から、自動車好きの羨望の的となったのでした。
こうしてスーパーカーブームが訪れたのです。
免許がまだ取得できない層へのプロモーションとして、企業は様々な形でスーパーカーを商品に取り入れていきました。
それは、スーパーカーの形をした消しゴム「スーパーカー消しゴム」であったり、ファンタなどの王冠の裏に車が描かれたり、プラモデルやミニカーの発売など。
そして、どれも大ヒットを飛ばします。
また、日本各地でスーパーカーショーが開催され、大人から子供まで数十万人が来場。
2010年代では考えられないようなテレビ番組「対決!スーパーカークイズ」が放送されていたことは、まさに社会現象と言えるでしょう。
ブームは1978年頃には沈静化したと言われていますが、当時知名度を得たスーパーカーは現在でも根強い人気を誇っています。
本記事ではその当時人気を誇ったマシンたちをご紹介します。
今回は後編です。
ランチア・ストラトス
世界でも屈指の名車に数えられるランチア・ストラトスは、完全にラリーで勝つためだけに作られたホモロゲーションモデルです。
当時のグループ4のホモロゲーション取得条件が「連続12ヶ月間に400台生産」と少ないことを利用し、ストラトスは誕生しました。
1970年、巨匠マルチェロ・ガンティーニに率いるベルトーネ社よって発表されたコンセプトモデル「ストラトス・ゼロ」が当時のランチアワークスチームの監督チェザーレ・フィオリオの目に止まり、ラリーカーとしての開発が始まりました。
視界の良さや超コンパクトな外寸などは全てランチアのドライバーの意向に沿って作られています。
1973年にはプロトタイプが公開され、1974年に市販車が発売されました。
同じフィアットグループのフェラーリの子ブランド、ディーノからディーノ246GTのパワートレインを僅かにデチューンし搭載、190馬力を発生しました。
そして980kgの軽量なボディは素晴らしい運動性能をもたらしました。
漫画「サーキットの狼」では風吹の3台目の愛車として登場、シルエットフォーミュラに改造され戦う姿が描かれました。
WRCではその年、9回の優勝を収めタイトルを獲得すると、翌年、翌々年ともにタイトルを獲得。
その戦績はストラトスを一躍有名にし、その異色性と希少性は世界中のコレクターから注目されるスーパーカーとなりました。
前編から見て、ここまでで気づくのはマルチェロ・ガンティーニの手がけるスーパーカーは傑作ばかりということですね。
ディーノ・246GT
フェラーリ初のミッドシップ2シーターにして唯一のV型6気筒エンジン搭載のディーノ・246GTは、1971年から74年にかけて生産されました。
現在のV8フェラーリの始祖的存在とも言われています。
どこか可愛らしい顔を持つディーノは、実はフェラーリとは別ブランドであり、エンブレムは跳ね馬ではなく「Dino」。
ディーノという名はエンツォ・フェラーリの長男で若くして亡くなったアルフレード・フェラーリの愛称が由来と言われています。
ポルシェ911に対抗するため、親会社フィアットの意見によりもっと低価格で一般にも乗りやすい実用スポーツカーを目指し開発されました。
前述のストラトスに供給したエンジンは195馬力を発生、最高速度は235kmに達し当時としては高い性能も持ち合わせており、その乗りやすさと軽快さから当時、多数の自動車評論家に絶賛されました。
漫画「サーキットの狼」には元警察官レーサー・沖田の愛車として登場しています。
日本での人気は現在も衰えず、日本に存在するディーノの台数は未だに増えて続けているそうです。
デ・トマソ・パンテーラ
イタリア製のボディにアメリカ製の大排気量エンジンという魅力に溢れたパンテーラは、デ・トマソが生産した初の量産スーパーカーでした。
元々レースのシャシーを作っていたデ・トマソはフォードとタッグを組み少量生産のマングスタを経て、1971年にパンテーラを発表。
フォードの「GT40のイメージを踏襲するスポーツカー」の開発に誘われる形でデ・トマソが参加し、デ・トマソ傘下のカロッツェリア・ギア制作のボディに310馬力を発生するフォード製5.8リッターV型8気筒エンジンを組み合わせるという手法が取られました。
当時としては画期的だったこの方法は、現在の少量生産のスポーツカーでは一般的となりました。
低いノーズにリトラクタブルヘッドライト、幅広タイヤを収めるリアフェンダーそして大迫力の4本出しマフラーと何度見ても飽きることのない美しいデザインは長年ファンを魅了し続けました。
豪華版パンテーラL(ルッソ)を経て、73年には350馬力までパワーアップした高性能版、パンテーラGTSも登場。
その後も500馬力を誇るグループ4ホモロゲーションモデルのパンテーラGT4、80年には大幅なエアロ武装が施されたパンテーラGT5、改良版GT5Sがラインナップ。
91年には巨匠マルチェロ・ガンティーニによるフェイスリフトが行われたパンテーラSIが発表されましたが、このモデルを最後にパンテーラは幕を下ろしました。
漫画「サーキットの狼」では、ぼっちゃん、四国の獅子の愛車として登場しました。
ファンの間では悪役のイメージが大きいようです。
1971年から93年まで22年間もの長期間、ベースの形を変えることなく生産されたスーパーカーはパンテーラだけだと思います。
2004年にデ・トマソは解散してしまいましたが、2009年にフィアットグループが商標権を獲得し復活しました。
未だ市販モデルの発表はありませんが、またパンテーラのような魅力に溢れたスーパーカーが発表されることを心から待ち望んでいます。
フェラーリ・308GTB
1975年にデビューした308GTBはフェラーリ初のV8ミッドシップ2シーターでした。現在488GTBまで続くV8搭載フェラーリの直系の祖先にあたるモデルです。
308GTBは先代のディーノ246GT時代から続く打倒911を掲げて開発されました。ピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティによる絶妙な直線と曲線で描かれるモダンで美しいデザインは当初、FRP製のボディで作られました。
しかし生産性の悪さと大幅なコストが掛かってしまうため、スチール製のボディへの変更を余儀なくされてしまい、結果的に1090kgのボディは1330kgに増加してしまいました。
ところがV8エンジンにおいてもフェラーリサウンドは健在で、官能的なエキゾーストノートは多くのスーパーカーファンを魅了しました。
漫画「サーキットの狼」では、「フェラーリの女豹」と言われた田原みかの愛車として登場しました。
40年前、フェラーリを支えた主力モデルは現在でも人気は健在。
特に初期型のFRP製ボディを持つモデルはレアモデルとして今も高い人気を誇っています。
トヨタ・2000GT
最後は説明不要の名車、2000GT。1967年にデビューした2000GTは、トヨタ自動車とヤマハ発動機によって当時の技術の粋を集結して共同開発された日本が誇るスーパーカーです。
1960年代前半、日産はフェアレディZ、ホンダはSシリーズなど軽快なスポーツモデルでセールスを伸ばすと共に技術アピール行っていましたが、トヨタは業界最大手にして社の看板を背負い、技術アピールをする本格スポーツカーを持っていなかったため急ピッチでスポーツカーの開発を進めていました。
そこで、当時バイクの製造で日本を代表するメーカーとなっていたヤマハの技術供給が行われ開発されたと言われています。
実際の開発はほとんどヤマハ主導で行われたなど、諸説ありますが明確なことは分かっていません。
その美しい曲線で描かれたボディ、特徴的なフォグランプやリトラクタブルヘッドライトの独特なフロント周り、絶妙なロングノーズショートテールは当時の日本車としては圧倒的なスタイリングを誇りました。
また、最高速度220km/hを誇り当時の2リッターエンジンを搭載するスポーツモデルでは世界トップレベルの性能にも達していました。
当時の販売価格はクラウンが2台、カローラが6台買えるほどの超高級車でした。
現在のお金に換算すると1500万〜2000万円程度と言われています。
それでも売れば売るほど赤字と言われており1970年に製造が終了しました。
2013年に行われたクラッシックカーオークションでは1億1800万円で落札され、日本車の史上最高額を記録しました。
そんな2000GTももちろん漫画「サーキットの狼」にも登場し、悪役・ピーターソンがドライブする姿が描かれています。
登場から半世紀近く経った今でも世界中のスーパーカーファンを魅了し続けている2000GTはまさに日本が誇る伝説のスーパーカーと言えるでしょう。
まとめ
現在高校生の自分にとってここまでスーパーカーが注目されていた時代があったことにとても驚きました。
個人的に、この時代に登場したスーパーカーは荒削りなところがあり、今の綺麗すぎるスーパーカーよりもむしろ多くの魅力を感じられました。
また何よりマルチェロ・ガンティーニ氏の存在がどれだけ大きいか、今のスーパーカーのあり方の基礎はこの人によって作られたと言っても過言ではないですよね。
今回選ばせていただいた10台はすべて漫画「サーキットの狼」に登場するスーパーカーでした。これから時間があるときに是非読んでみようと思います。
そして、また日本でスーパーカーブームが起こり自動車業界全体が盛り上がる日が来ればいいなと思います。
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