1980年代、グループCで多くの勝利上げてきたポルシェ 962/962C。デイトナ24時間やル・マン24時間耐久レースで多く優勝し、WECおよびWSPCではシリーズタイトルを獲得してきた伝説のレーシングカーです。そんな純レーシングカーであるポルシェ 962Cが日本の公道を走行する動画が話題になっています。ポルシェ 962/962Cとは一体どんなレーシングカーだったのか?また、公道走行可能なナンバー取得のポルシェ 962Cとは何者なのでしょうか。

 

1990年 ポルシェ962C

1990年メキシコシティ480kmに出場した際の Porsche 962C. Hans-Joachim Stuck, Jonathan Palmer / 出典:https://press.porsche.com/prod/presse_pag/PressBasicData.nsf/press/PCNAenWelcome0?OpenDocument

 

デイトナ24時間・セブリング12時間で多くの優勝を果たしたポルシェ 962

ポルシェ956©️Motorz

1982年、FIAは新レギュレーションに沿ったプロトタイプカーで争われる『グループC』を創設し、世界耐久選手権(WEC)はグループCで争われることになります。

それに合わせ、ポルシェは新しいプロトタイプカー(Cカー)としてポルシェ 956を送り出し、WECのレースで多くの勝利をあげ、中でもル・マン24時間やスパ1000kmといったビッグレースでも優勝を果たします。

 

1989年IMSA-GTP West Palm Beach Grand Prixに出場したポルシェ962 / Photo by formulanone

アメリカでは、1981年にアメリカの自動車レース統括団体IMSA(イムサ)がプロトタイプカーレース選手権の『IMSA-GTP』を開始。

IMSA-GTPにはデイトナ24時間やセブリング12時間など、アメリカンモータースポーツを代表するビッグレースがシリーズ戦の中に含まれます。

レギュレーションはグループCと酷似していましたが、違いとしてIMSA-GTPにはコクピットに座るドライバーのつま先がフロント車軸より後ろになくてはならない規定があり、956はそれを満たしていなかったため、軸距を956より120mm長い、2,770mmまで伸長し、956をIMSA-GTPのレギュレーションに合わせたものがポルシェ・962になります。

ポルシェ・962は、デイトナ24時間で4度、セブリング12時間で4度の優勝を獲得し、圧倒的な速さを誇りました。

 

ポルシェ・962Cとは

 

1989, Porsche 962 C, Bob Wollek, Mexiko-Stadt

1989年ポルシェ962C / 出典:https://press.porsche.com/prod/presse_pag/PressBasicData.nsf/press/PCNAenWelcome0?OpenDocument

1985年になるとグループCの安全規定がIMSA-GTPに沿ったものに改正されます。

そもそもグループCマシンの956をIMSAに合わせたのが962でしたが、このIMSA仕様の962をベースにツインターボエンジンを搭載し、グループCカテゴリーに持ち込んだものが962Cの最初のモデルでした。

ポルシェワークスチームが使用しただけでなく、ポルシェは多くのプライべーターへ962Cをデリバリーしていたため、962Cの部品の需要は高く、962Cのアルミニウム製モノコックフレームは一部でアメリカで製造したものをドイツへ出荷していました。

 

Derek Bell

2011年Goodwood Festivalに参加したDerek Bell氏:Photo by Nigel Brown

英国人ドライバーのDerek Bell氏は1985~1987年の間、962Cで21勝を記録し、そのうち2度のル・マン24時間優勝を果たしました。

ワークスチームがレース撤退しても、962Cを使用していたプライべーターチームは他のメーカーワークスチームを抑えて多くの勝利をあげていました。

チームによっては962Cのアルミニウム製モノコックフレームをカーボン製に改良などもされ、プライベートチームによっても962Cの戦闘力は上げられていきました。

 

チームタイサンのポルシェ962C

1991年 JSPC第2戦フジ1000kmに出場していたチームタイサンのポルシェ962C / Photo by Iwao

また、国内に目を向けると、全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)でも最多優勝しており、高橋国光氏はアドバンアルファ・ノバ・チームから962Cに乗って出走し、1985、1986、1987、1989年にシリーズタイトルを獲得。

1988年はフロムAレーシングチームの岡田秀樹氏が962Cで優勝していたため、962Cは1985~1989年までの5年連続でJSPCを制覇していました。

 

ポルシェ962Cのロードゴーイングカー・シュパン962CR

 

1992年式 ポルシェ962CR

1992年式 ポルシェ962CR / Photo by German Medeot

962/962Cは多くのプライべーターへデリバリーされ、中には962Cを公道走行を可能にして売り出そうと考えたドライバーもいました。

その中のひとり、バーン・シュパン(Vern Schuppan)氏はポルシェのワークスドライバーを務め、ル・マン24時間耐久レースに優勝経験もあるオーストラリア人ドライバーです。

シュパン氏は日本でもレース活動をし、さまざまな日本のチューナーやレーシングチームのオーナーと交流を持つようになります。

当時、日本はバブル景気の真っ只中でスーパーカーの需要は高かったため値段が高騰。そこでシュパンは962C用にカーボン+アルミのモノコックボディにポルシェ製のレーシングエンジンを積んだスーパーカーの製作を開始。

そこで手を貸したのは、シュパンのプライベートチームのメインスポンサーだったアートプラス株式会社(本社所在地:大阪)でした。

そして、シュパンとアートプラスにより『シュパン962CR』が作り出されます。

エンジンはIMSA仕様3.3リッター空冷フラット6DOHC24バルブとし、600馬力を発揮して最高速度は370km/hにも達します。

新車価格は日本で1億9,500万円、英国で83万ユーロ。

生産台数はわずか6台のみのとても希少なスーパーカーです。

 

ポルシェ962Cが日本の公道を爆走

 

さらに日本でも公道走行している962が存在しました。

日本の道路をCカーに乗れるなんて、まさにクルマ好き、レーシングカー好きにとって憧れ。

詳しくは上の動画をご覧ください。

 

ポルシェ962/962Cの主なレース成績

 

ポルシェ962が優勝した主なレース

1990年モデル ポルシェ・962

1990年モデル ポルシェ・962 / Photo by David Merrett

シーズン レース ドライバー チーム
1985 デイトナ24時間 A.J. Foyt
Bob Wollek
Al Unser
Thierry Boutsen
Henn’s Swap Shop Racing
セブリング12時間 A.J. Foyt
Bob Wollek
Preston Henn
1986年 デイトナ24時間 Al Holbert
Derek Bell
Al Unser Jr
Holbert Racing
セブリング12時間 Hans-Joachim Stuck
Jo Gartner
Bob Akin
Bob Akin Motor Racing
1987年 デイトナ24時間 Al Holbert
Derek Bell
Al Unser Jr
Chip Robinson
Holbert Racing
セブリング12時間 Jochen Mass
Bobby Rahal
Bayside Disposal Racing
1988年 セブリング12時間 Hans-Joachim Stuck
Klaus Ludwig
Bayside Disposal Racing
1989年 デイトナ24時間 John Andretti
Derek Bell
Bob Wollek
Miller High Life/BF Goodrich 962

 

ポルシェ962Cが優勝した主なレース成績

ポルシェ962

Derek Bell、Hans-Joachim Stuck、Al Holbertが1986年/1987年ルマン24時間耐久レースに出場したポルシェ962C / Photo by David Merrett

 

シーズン レース ドライバー チーム
1985年 ムジェロ1000km Jacky Ickx
Jochen Mass
Rothmans Porsche
モンツァ1000km Manfred Winkelhock
Marc Surer
Porsche Kremer Racing
シルバーストン1000km Jacky Ickx
Jochen Mass
Rothmans Porsche
ホッケンハイム1000km Hans-Joachim Stuck
Derek Bell
Rothmans Porsche
ブランズハッチ1000km Hans-Joachim Stuck
Derek Bell
Rothmans Porsche
セパン800km Jochen Mass
Jacky Ickx
Rothmans Porsche
1986年 ル・マン24時間耐久レース Derek Bell
Al Holbert
Hans-Joachim Stuck
Rothmans Porsche
モンツァ1000km Derek Bell
Hans-Joachim Stuck
Rothmans Porsche
ヘレス360km Oscar Larrauri
Jesus Pareja
Brun Motorsport
1987年 ル・マン24時間耐久レース Derek Bell
Al Holbert
Hans-Joachim Stuck
Rothmans Porsche
1989年 ディジョン480km Bob Wollek
Frank Jelinski
Joest Racing
1990年 ワールド・オブ・タンパ James Weaver Dyson Racing
1991年 デイトナ24時間 Frank Jelinski
Henri Pescarolo
Hurley Haywood
Bob Wollek
Joest Racing
1993年 ロード・アメリカ 500 John Winter
Manuel Reuter
Joest Porsche Racing

 

まとめ

ポルシェ962/962Cは最強の名をほぼ十年間に渡って欲しいままにした不世出のレーシングカーであり、現在、プロトタイプカーの主流であるLMP(ル・マン・プロトタイプ)にも大きな影響を与えていました。

962/962Cの活躍していた当時を知る方なら大きなインパクトがあったでしょう。

ドライバーや見ている観客も魅了し続けた962/962Cはモータースポーツ史上最も成功したプロトタイプカーといえるでしょう。

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