1980年代、グループCで多くの勝利上げてきたポルシェ 962/962C。デイトナ24時間やル・マン24時間耐久レースで多く優勝し、WECおよびWSPCではシリーズタイトルを獲得してきた伝説のレーシングカーです。そんな純レーシングカーであるポルシェ 962Cが日本の公道を走行する動画が話題になっています。ポルシェ 962/962Cとは一体どんなレーシングカーだったのか?また、公道走行可能なナンバー取得のポルシェ 962Cとは何者なのでしょうか。
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デイトナ24時間・セブリング12時間で多くの優勝を果たしたポルシェ 962
1982年、FIAは新レギュレーションに沿ったプロトタイプカーで争われる『グループC』を創設し、世界耐久選手権(WEC)はグループCで争われることになります。
それに合わせ、ポルシェは新しいプロトタイプカー(Cカー)としてポルシェ 956を送り出し、WECのレースで多くの勝利をあげ、中でもル・マン24時間やスパ1000kmといったビッグレースでも優勝を果たします。
アメリカでは、1981年にアメリカの自動車レース統括団体IMSA(イムサ)がプロトタイプカーレース選手権の『IMSA-GTP』を開始。
IMSA-GTPにはデイトナ24時間やセブリング12時間など、アメリカンモータースポーツを代表するビッグレースがシリーズ戦の中に含まれます。
レギュレーションはグループCと酷似していましたが、違いとしてIMSA-GTPにはコクピットに座るドライバーのつま先がフロント車軸より後ろになくてはならない規定があり、956はそれを満たしていなかったため、軸距を956より120mm長い、2,770mmまで伸長し、956をIMSA-GTPのレギュレーションに合わせたものがポルシェ・962になります。
ポルシェ・962は、デイトナ24時間で4度、セブリング12時間で4度の優勝を獲得し、圧倒的な速さを誇りました。
ポルシェ・962Cとは
1985年になるとグループCの安全規定がIMSA-GTPに沿ったものに改正されます。
そもそもグループCマシンの956をIMSAに合わせたのが962でしたが、このIMSA仕様の962をベースにツインターボエンジンを搭載し、グループCカテゴリーに持ち込んだものが962Cの最初のモデルでした。
ポルシェワークスチームが使用しただけでなく、ポルシェは多くのプライべーターへ962Cをデリバリーしていたため、962Cの部品の需要は高く、962Cのアルミニウム製モノコックフレームは一部でアメリカで製造したものをドイツへ出荷していました。
英国人ドライバーのDerek Bell氏は1985~1987年の間、962Cで21勝を記録し、そのうち2度のル・マン24時間優勝を果たしました。
ワークスチームがレース撤退しても、962Cを使用していたプライべーターチームは他のメーカーワークスチームを抑えて多くの勝利をあげていました。
チームによっては962Cのアルミニウム製モノコックフレームをカーボン製に改良などもされ、プライベートチームによっても962Cの戦闘力は上げられていきました。
また、国内に目を向けると、全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)でも最多優勝しており、高橋国光氏はアドバンアルファ・ノバ・チームから962Cに乗って出走し、1985、1986、1987、1989年にシリーズタイトルを獲得。
1988年はフロムAレーシングチームの岡田秀樹氏が962Cで優勝していたため、962Cは1985~1989年までの5年連続でJSPCを制覇していました。
ポルシェ962Cのロードゴーイングカー・シュパン962CR
962/962Cは多くのプライべーターへデリバリーされ、中には962Cを公道走行を可能にして売り出そうと考えたドライバーもいました。
その中のひとり、バーン・シュパン(Vern Schuppan)氏はポルシェのワークスドライバーを務め、ル・マン24時間耐久レースに優勝経験もあるオーストラリア人ドライバーです。
シュパン氏は日本でもレース活動をし、さまざまな日本のチューナーやレーシングチームのオーナーと交流を持つようになります。
当時、日本はバブル景気の真っ只中でスーパーカーの需要は高かったため値段が高騰。そこでシュパンは962C用にカーボン+アルミのモノコックボディにポルシェ製のレーシングエンジンを積んだスーパーカーの製作を開始。
そこで手を貸したのは、シュパンのプライベートチームのメインスポンサーだったアートプラス株式会社(本社所在地:大阪)でした。
そして、シュパンとアートプラスにより『シュパン962CR』が作り出されます。
エンジンはIMSA仕様3.3リッター空冷フラット6DOHC24バルブとし、600馬力を発揮して最高速度は370km/hにも達します。
新車価格は日本で1億9,500万円、英国で83万ユーロ。
生産台数はわずか6台のみのとても希少なスーパーカーです。
ポルシェ962Cが日本の公道を爆走
さらに日本でも公道走行している962が存在しました。
日本の道路をCカーに乗れるなんて、まさにクルマ好き、レーシングカー好きにとって憧れ。
詳しくは上の動画をご覧ください。
ポルシェ962/962Cの主なレース成績
ポルシェ962が優勝した主なレース
シーズン | レース | ドライバー | チーム |
---|---|---|---|
1985 | デイトナ24時間 | A.J. Foyt Bob Wollek Al Unser Thierry Boutsen |
Henn’s Swap Shop Racing |
セブリング12時間 | A.J. Foyt Bob Wollek |
Preston Henn | |
1986年 | デイトナ24時間 | Al Holbert Derek Bell Al Unser Jr |
Holbert Racing |
セブリング12時間 | Hans-Joachim Stuck Jo Gartner Bob Akin |
Bob Akin Motor Racing | |
1987年 | デイトナ24時間 | Al Holbert Derek Bell Al Unser Jr Chip Robinson |
Holbert Racing |
セブリング12時間 | Jochen Mass Bobby Rahal |
Bayside Disposal Racing | |
1988年 | セブリング12時間 | Hans-Joachim Stuck Klaus Ludwig |
Bayside Disposal Racing |
1989年 | デイトナ24時間 | John Andretti Derek Bell Bob Wollek |
Miller High Life/BF Goodrich 962 |
ポルシェ962Cが優勝した主なレース成績
シーズン | レース | ドライバー | チーム |
---|---|---|---|
1985年 | ムジェロ1000km | Jacky Ickx Jochen Mass |
Rothmans Porsche |
モンツァ1000km | Manfred Winkelhock Marc Surer |
Porsche Kremer Racing | |
シルバーストン1000km | Jacky Ickx Jochen Mass |
Rothmans Porsche | |
ホッケンハイム1000km | Hans-Joachim Stuck Derek Bell |
Rothmans Porsche | |
ブランズハッチ1000km | Hans-Joachim Stuck Derek Bell |
Rothmans Porsche | |
セパン800km | Jochen Mass Jacky Ickx |
Rothmans Porsche | |
1986年 | ル・マン24時間耐久レース | Derek Bell Al Holbert Hans-Joachim Stuck |
Rothmans Porsche |
モンツァ1000km | Derek Bell Hans-Joachim Stuck |
Rothmans Porsche | |
ヘレス360km | Oscar Larrauri Jesus Pareja |
Brun Motorsport | |
1987年 | ル・マン24時間耐久レース | Derek Bell Al Holbert Hans-Joachim Stuck |
Rothmans Porsche |
1989年 | ディジョン480km | Bob Wollek Frank Jelinski |
Joest Racing |
1990年 | ワールド・オブ・タンパ | James Weaver | Dyson Racing |
1991年 | デイトナ24時間 | Frank Jelinski Henri Pescarolo Hurley Haywood Bob Wollek |
Joest Racing |
1993年 | ロード・アメリカ 500 | John Winter Manuel Reuter |
Joest Porsche Racing |
まとめ
ポルシェ962/962Cは最強の名をほぼ十年間に渡って欲しいままにした不世出のレーシングカーであり、現在、プロトタイプカーの主流であるLMP(ル・マン・プロトタイプ)にも大きな影響を与えていました。
962/962Cの活躍していた当時を知る方なら大きなインパクトがあったでしょう。
ドライバーや見ている観客も魅了し続けた962/962Cはモータースポーツ史上最も成功したプロトタイプカーといえるでしょう。
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