2017年12月現在、日本に正規輸入されているアメ車と言えばGMとテスラが代表的です。しかし、日本で長年の歴史を誇るGMも、日本での取り扱いはごく一部の日本人受けする代表的な車種のみ。その1台に選ばれているのがシボレー カマロです。そんな、フォード マスタングの対抗馬として登場したカマロの初代モデルとは、どんな車だったのでしょうか?

 

初代シボレー カマロ  / Photo by Ben Johnstone

 

 

開発コードXP-836、お蔵入りでマスタングの後塵を拝す

 

初代シボレー カマロ  / Photo by Ashley Buttle

 

日本ではいわゆるアメリカンマッスルカーの1台、しかし本国ではマスタング同様”ポニーカー”と呼ばれるスペシャリティカーの先駆け的小型スポーツカー代表である、シボレー カマロ。

その初期の企画がGMに提出されたのは意外や古く1961年でした。

当時、アメリカではMGやジャガーなどのヨーロピアン・スポーツが好評を博していたものの、アメリカ車よりは小型だったので、「アメリカンサイズの小型スポーツカー」開発コードXP-836が提案されたのです。

しかし、当時のGMには”シボレー”ブランドからスポーツカーならコルベット、スポーティな小型車としてもコルヴェアがあり、シェビーII(後のノヴァ)が発売されたばかりという状況でした。

そのためXP-836はGM首脳陣の関心を全く引かず不採用となるのですが、翌1962年に米BIG3(当時のGM、フォード、クライスラー)のライバル、フォードからオープン2シーターのコンパクトスポーツ、マスタングIが発表され、1963年には4人乗りマスタングIIへ発展、1964年に市販版初代マスタングが発売されると、状況は一変。

マスタングは小型車のファルコンをベースにスポーツカールックとしたお手軽スポーツカーとも言えましたが、それでもスタイリングや性能には問題が無く、多彩なオプションからユーザーが好みの1台を作れる「フルチョイスシステム」もあって、大ヒットとなったのです。

これに慌てたGMは、お蔵入りにしていたXP-836を急きょ正式なプロジェクトに昇格させました。

(なお、その影響で日本でもカリーナをベースに「フルチョイスシステム」ともども模倣したスペシャリティカー、初代トヨタ セリカが1970年に登場。)

こうして1966年6月には発表、同9月には発売という超特急スケジュールで世に出されたのが、初代シボレー カマロなのです。

 

実は大昔のフランス語から命名されたカマロ

 

初代シボレー カマロZ28  / Photo by Nathan Bittinger

 

発表時の車名は「パンサー」でしたが、当時のシボレーでは「Chevrole」に合わせてCで始まる車名を名付けることになっており、正式車名を決めるべく上層部はその条件に合致する単語を探しました。

そして、フランス語の古語に「仲間」という意味のカマロ(Camaro)という単語を見つけ、これを新型車の車名に決定したのです。

 

ちなみに、フランス語と言っても相当古い言葉のようで、現在のフランス語で「仲間(あるいは「戦友」)」などに相当するのは「Camarade(カマラード、あるいはカメラードとも)」になります。

 

現行カマロのおかげで古さを感じさせないデザイン

 

初代 / 5代目シボレー カマロ /  出典:http://www.chevroletjapan.com/cars/all-new-camaro/model-overview/lounge-chevrolet.html

 

開発部内で“マスタングキラー”と呼ばれたXP-836はマスタング同様の手法で、シェビーIIノヴァをベースにロングノーズ・ショートデッキ、短いトランクを持つノッチバックボディという古典的スポーツカールックで構成されました。

スポーツカーらしく先端で絞り込まれたフロントマスクや、リアフェンダーがグッと盛り上がったコークボトル・スタイルなどは2017年現在販売されている5代目カマロが、そのリメイク元としただけあって、今の視点で見ても古さを感じさせません。

エンジンは230キュービックインチ(3.8リッター)直列6気筒から350キュービックインチ(5.7リッター)V型8気筒まで数種類が用意されましたが、オプションで396キュービックインチ(6.5リッター)V型8気筒も選択可能。

そしてミッションは3速か4速のマニュアルミッション、あるいはパワーグライドと呼ばれた2速AT(後に3速ATも)と組み合わされ、駆動方式はFR。

マスタングに人気で劣ったこともあり、1969年モデルではフロントマスクが再設計されたほか、オプションで標準のドラムブレーキに代わり4ポットキャリパーを持つ4輪ディスクブレーキも選択可能になっています。

 

SCCA Trans-Amレーシングシリーズで活躍

 

シボレー カマロ(1969年SCCA仕様) / Photo by Matt Morgan

 

デビュー当初からホットバージョンのZ28でSCCA Trans-Am(トランスアメリカン・セダン・チャンピオンシップ)レーシングシリーズで活躍することになった初代カマロですが、そのレーシングホモロゲーションモデルとしてZ28が生産されました。

排気量305キュービックインチ以下という規則に沿い、中途半端な302キュービックインチ(4.9リッター)V型8気筒を搭載していたZ28は、アメリカンV8エンジンとしては異例な高回転高出力型エンジン、オートマやエアコンの設定が無い純粋なベース車です。

そのため人気が低迷し、同じシリンダーブロックを使うグレードも合わせた生産台数でようやくレース参加のためのホモロゲーションを取得できるという状況でしたが、ペンスキーの手で参戦したカマロZ28がレースで活躍すると、次第に人気が高騰。

1968年にはホットバージョンのSS396と並ぶ人気グレードになるとともにSCCA Trans-Amのチャンピオンタイトルも獲得したことで、「(アメ車としては)小排気量高回転型V8でも人気が出る」という新しい波を生み出しました。

また、GMが通常400キュービックインチ(6.6リッター)以上のエンジンをシボレー車に搭載しないと決めていたものの、ディーラーからの要望による特注で427キュービックインチ(7リッター)のV型8気筒エンジンが搭載された初代カマロも!

中でもNHLスーパーストックドラッグレース用として開発、69台が生産されたCOPO9560と呼ばれるモデルは500馬力以上を発揮して活躍しています。

 

初代シボレー カマロ 主要スペックと中古車価格

 

初代シボレー カマロ  / Photo by Nick Ares

 

シボレー カマロ Z28 1969年式

全長×全幅×全高(mm):4,724×1,880×1,311

ホイールベース(mm):2,743

車両重量(kg):1,415

エンジン仕様・型式:水冷V型8気筒OHV16バルブ

総排気量(cc):4,949cc

最高出力:294ps/5,800rpm

最大トルク:40.1kgm/4,200rpm

トランスミッション:4MT

駆動方式:FR

中古車相場:330万~1,280万円

 

まとめ

 

フォード マスタングに対抗するスペシャリティカーとして世に出た初代シボレー カマロですが、保守的だったGM首脳陣に先見の明があれば、マスタングより先にデビューし、あるいはスペシャリティカーの代名詞と語られる可能性のあった1台でした。

結果的には先行したマスタングより人気が今ひとつなまま、初代モデルはわずか3年程度の短いモデルライフを終えて2代目に移行します。

しかし、フォードの日本撤退でマスタングの正規輸入車が買えない今、唯一正規輸入車を購入できるアメリカン・スペシャリティカーとして、往時のリメイク版5代目カマロの購入を検討しているアメ車ファンもいることでしょう。

そんなファンにとっても、発売から50年を過ぎた初代カマロがどんな車だったかこうして振り返る事で、より購入意欲が増すのかもしれません。

 

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