ドライビングの練習として、もはや当たり前になってきているシミュレータ。限りなくリアルな挙動、そしてシートやステアリングからのインフォメーション。そして何よりも、重要なのは視覚からの情報。その全てを再現するために、日本人として初めてNASCARにフル参戦したレーシングドライバー、古賀琢麻選手がVR対応シミュレータを製作、発表しました!そして今回は、Motorzで「T3R VR Edition」を取材してきました!

Photo by Yamato.

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触らないとわからなかった、VR対応レーシングシミュレータのスゴさとは?

レーシングドライバー古賀琢麻とは

出典:http://www.takumakoga.com/

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愛知県名古屋市出身のレーシングドライバー、古賀琢麻選手。1977年3月16日生まれの39歳(2016年)

幼少期からレーシングドライバーになることを決めており、幼稚園の文集に「レーサーになる」と書ききっていたというほど。

しかし、当時はレーシングカートのライセンス取得可能年齢が12歳だったため、それまでに準備をしようと決意。

10歳から新聞配達を開始し、2年間で100万円を貯めてレーシングカートを始めます。

カート活動開始後は、フォーミュラトヨタのスカラシップを獲得し、ドライバーとして活動の幅を広げながら、ついに2000年には憧れのNASCARに参戦を開始!

出典:https://www.facebook.com/takuma.koga.77

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2005年にはNASCARシリーズのグランドナショナルディヴィジョンに日本人初のフル参戦!同年には全米オールスター戦にも出場!

年々ステップアップし、2007年、2008年には、ウェストコーストプロトラックスで2年連続シリーズ3位を獲得。

2009年にはGOODYEARレーシングのタイヤ開発ドライバーも務めました。

2016年現在は、JKRシボレー・レーシングから、ナスカーK&Nプロシリーズに参戦しています。

 

T3R VR Editionとは

Photo by Yamato.

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前述の通り、日本人初のNASCARフル参戦ドライバー、古賀琢麻選手が作ったレーシングシミュレータ“T3R VR Edition”

元々は古賀さんが製作した「T3Rフローティングモーションシミュレーター」に、VR機能を搭載したものが今回のシミュレータになります。

Photo by Yamato.

シートの下はアクチュエータがあるのみでフローティング状態(Photo by Yamato.)

このシミュレータは、世界にも類を見ないフローティング構造で、ドライビングポジションを損なわないまま、クルマの挙動再現を追求。

ステアリングからのインフォメーションにも徹底的に拘り、ハイドロプレーニング現象すら再現。

こういた拘りから、スポーツ走行で一番重要なタイヤのグリップを十分に感じることができる構造とされています。

また、パーツひとつから組み上げまで全て日本製。ミクロン単位の部品管理で高品質高精度にこだわり、実用性の高さを徹底的に追及したシミュレータ、それが「T3Rフローティングモーションシミュレーター」なんです。

Photo by Yamato.

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そこにVR機能を搭載し、よりリアルに近づけたのが、今回取材した“T3R VR Edition”。

VRゴーグルを装着することで、首を振れば景色が、車内が、並走するクルマが確認できる。

よりリアルを追求する上で絶対に必要なVRを投入し、いち早く高精度で実用化したのが今回の“T3R VR Edition”なんです。

 

究極の実車再現。それが”T3R VR Edition”

Photo by Yamato.

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Motorz編集部で取材に伺ったところ、待ち構えていたのはT3Rのロゴがついた1台のトラック。

中をのぞき込むと、古賀さんと、赤い筐体のシミュレータ“T3R VR Edition”が鎮座していました。

Photo by Yamato.

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細かい取材をする前に「とりあえず乗ってみてよ」と古賀さんに勧められ、“T3R VR Edition”を体験させていた際にまず感じたのはグラフィックの綺麗さ。

昨今のシミュレータで主流となっているソフト「rFactor」は拡張性の高さと挙動やコースの再現力の高さに非常に定評がありますが、2005年発売のソフトのため、どうしてもグラフィックと言う意味では最新のソフトには劣ります。

“T3R VR Edition”で使用しているソフトはAssetto Corsa(アセットコルサ)

このソフトはコースも車両も全てレーザースキャンされて製作されており、超流麗なグラフィックが魅力。

Photo by Yamato.

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実際、シートに座ってVRゴーグルを装着すれば、そこはもうF1のコクピット。

乗った車両はフェラーリF1の2016年モデルでしたが、首を振れば目の前にコクピットの内壁が。

さっきまで居た現実は普通の空間だったのにいきなり「狭い」と感じるほどのリアルさでした。

また、アセットコルサ自体はフェラーリのレーシングチームが使用していたソフトをベースに製作されているため、クルマの挙動自体についてもお墨付き。

Photo by Yamato.

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走り出してまず最初に感じたのは、その綺麗さとクルマの動きからくる「違和感のなさ」でした。

VRゴーグルの映像にうつる自分の手を触ればそこにステアリングが、アクセルやブレーキを踏めば、ナチュラルにシートが動いてGを疑似的に感じることができ、VRゴーグルの映像から、かなり本物に近い間隔を覚えました(F1に乗ったことはありませんが)。

しかし、ここに来るまでに古賀さんは相当なセッティングを行っていたとのこと。

その内容を、事細かに語っていただきました。

 

古賀さん:最初にオキュラス(※VRゴーグル【Oculus Rift】)を導入した時は、酔っちゃってまともに運転なんてできなかったよ。視覚からの情報と、自分が想定しているクルマ、シミュレータの動きの違いでとにかく気持ち悪さを感じて、15分もテストできなかった。

 

編集部:いわゆる”VR酔い”ということですね。

 

古賀さん:ただ、そこで諦めずに実車からデータを取って、ロガーの内容とシミュレータの動きを徹底的に合わせた。アセットコルサは首都高のコースもあるから、実車にECUをつけて首都高を走行したロガーと、シミュレータで同じクルマ、同じルートを法定速度で走行して詰める。クルマがブレーキングでノーズダイブする角度や、タイヤの温度上昇など、とにかく併せこんでいく。そういうやり方。ここで出たデータを元に、Gの頂点でシミュレータのアクチュエータの動きも頂点に来るようにして、頂点までの動きも、かかる時間もロガーと同じように設定したよ。当然、同じことをサーキットでもやった。この調整でVRとシミュレータの精度が格段に良くなったよ。

 

編集部:限りなくリアルに近づける、と。

 

Photo by Yamato.

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古賀さん:これをアバルトや、市販のコルベットとC7R、86とか色んな車でやったよ。実車とシミュレータ本体、アセットコルサの動きを併せ込むことで、どんどん実車に近づいていった。86なんかは、実際のタイムと0.2秒差まで詰められたよ。その時はアセットコルサ側の路面温度設定が甘かったから、今やったらもっと近いタイムが出るだろうね。こうやって実車に近づけることで、自然とVRにも酔わなくなったよ。感じていた動きと映像の違和感もどんどん消えていった。

 

編集部:実車とデータの情報と、普通の人が感じにくい細かな差まで併せ込むことができるのは、レーシングドライバーならではですね。

 

古賀さん:特に、うちのT3Rはフローティングだからこそ表現できることも多い。走行中のクルマの動きっていうのは基本”揺り返し”。コーナリング中にGがかかってクルマがロールしたら、元の姿勢に戻るときに揺り返しが起こる。シートが固定されてると、ただ横に動くしかないけど、T3Rならフローティングだからその動きも繊細に再現できる。急な上り坂、下り坂も表現できる。Gのかかる方向を、シート自体が自由に動くことで、より現実に近く演出できるからこそ、動きと認識の差からくるVR酔いが起きにくいんじゃないかな。

 

T3R VR Editionは、クルマから降りられる。

Photo by Yamato.

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今回のT3R VR Editionを取材して一番驚いたのは、車から降りられるということ。

VRゴーグルをつけたままシミュレータから降りれば、サーキットの真ん中であろうと、首都高の真ん中であろうと、マシンの横に降りることが可能でした。

走行中でも、シートから横に顔を出せば、窓から顔を出して走行することも可能です。※実車では絶対やってはいけません。

 

古賀さん:車から降りられることで、従来のシミュレータの枠を超えた活用法がある。アセットコルサはグラフィックも綺麗だから、レーシングカーのデザインを間近で見ることもできる。どんなアングルからも見れる。本末転倒だけど、VRゴーグルを外して足元に置けば地面スレスレのアングルから見るレーシングカーを、ディスプレイで見ることもできるよね。これがあれば実物が目の前になくても、車両について解説できるのよ。サーキットでもなかなか間近で見れないレーシングカーを目の前で見ることができる。こういったところも、VRならではだよね。

 

 

新世代のVR対応シミュレータ”T3R VR edition”

古賀さん曰く、このシミュレータの本質は「速く走ることじゃない」と語っていただきました。

それは一体どういうことなのか?次のページでご紹介します。