アンダーカットやスリップストリームなど、モータースポーツを観戦する際には普段の生活の中で馴染みのない言葉が溢れています。ドライバーたちが懸命にマシンを走らせる姿はただ眺めているだけでも充分に迫力を感じられると思います。しかし、解説者の話している言葉の意味が理解できるようになると、さらに多くの楽しみ方を見つけることが出来るのではないでしょうか?そこで今回はレース中継でよく耳にするレース用語についてご紹介していこうと思います。

 

©︎Pirelli

レース中継には普段聞きなれない言葉がたくさん!?

 

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どんなスポーツにもその競技でしか使われない言葉が存在しますが、もちろんモータースポーツにも多くの専門用語が存在します。

モータースポーツで使用される言葉のほとんどが海外で生まれているため、レース中継などでも普段の生活では耳にすることのない言葉が使われることも多いのです。

もちろん、これらの言葉の意味が分からなくともレースの迫力や興奮は体感出来るのですが、こうした言葉の意味が分かるようになると、さらにレースの内容まで細かく楽しめると思います。

そこで、今回はレース中継で頻繁に耳にする、モータースポーツの専門用語についてご紹介していきます。

 

ピットストップでの攻防で用いられる”アンダーカット”

 

 

まず最初にピットストップなど、レースの山場で耳にすることの多いアンダーカットからご紹介していきます。

アンダーカットとはピット作業によって他車を追い抜くための戦略の事で、ライバルより先に新しいタイヤに交換し速いペースを刻むことで順位を上げること。

レーシングカーのタイヤは市販車のものと比較して消耗が早く、走れば走るほど顕著にラップタイムが落ち込む傾向にあります。

その特性を利用し他車が消耗したタイヤで走行している間に先にタイヤ交換を行うことで、自らが速いペースを刻み他車がタイヤ交換を行った際に前に出ることを目的としているのです。

ちなみに、上の動画では白とピンクのマシンがコース上で争っており、サーキットを上から見た場合でのアンダーカットの仕組みを表しています。

これはコース上でバトルをせずに順位を上げる事が出来るため、接触などのリスクを避けられる他にも、コース上での追い抜きが困難なサーキットではさらに重要性が増すのです。

これと反対に他車より長くコースに留まり順位を上げる戦略は”オーバーカット”と呼ばれ、タイヤの熱入れに苦労するなど、ピットストップ直後にペースが上がりにくいケースではこちらが用いられることもあります。

 

コース上で他車を追い抜くテクニック”スリップストリーム”

 

 

コース上でのバトルで頻繁に見られるテクニックの1つ”スリップストリーム”。

直線区間に前方のマシンの背後を走行することで、マシンの空気抵抗を減らし速度を上げるという追い抜きに関するテクニックです。

レースで追い抜きが行われる際に毎回のように使われ、前車の真後ろに張り付いてから一気に並びかけるシーンはレースの醍醐味と言えるでしょう。

このスリップストリームは自動車レースだけでなく、バイクや自転車競技などでも同じような理屈で用いられています。

また、現在はレースでのテクニックとして用いられていますが、元々は飛行機が通り過ぎた際に後方に向かって発生する気流のことを指す言葉でした。

レース中継では略してスリップと呼ばれることもあり、スリップ(ストリーム)に入るといった表現で頻繁に耳にする言葉となっています。

 

走行期間を区分けするために使われる”スティント”

 

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続いても、レースで頻繁に使われる”スティント”についてご紹介します。

スティントとは英語で”ある活動を行っていた期間”という意味を持っており、モータースポーツでは主にピットストップの期間を区切る際に用いられます。

仮にレースでのピットストップが1回だとすると、第1スティントはスタートからピットストップまで、そして第2スティントはピットストップからフィニッシュまでという呼び方になります。

当然、ピットストップの回数が増えるにつれて第3、第4…とスティントの数も増えていきます。

 

ピットを示す”ボックス”

 

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続いてご紹介するのは、近年チームラジオで耳にすることの多い”ボックス”です。

このボックスとはピットの事を指しており、同じ意味ではありますが頻繁に使われています。

主にF1のチームラジオでは「Box in this lap.」や「Box box box!」という使い方で、この周ピットに戻ってくるようにと指示を出すのです。

また、この言葉は名詞だけでなく動詞のような使い方をする場合も増えており、ボックスという言葉だけでピットインすることを示している場合もあります。

 

スタート前の確認走行”レコノサンス・ラップ”

 

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レースのスタート前に耳にする、レコノサンス・ラップについてご紹介。

レコノサンスとは、直訳すると偵察という意味に当たり、レース前の確認のための走行という意味になります。

スタート前にピットからグリッドに向かうまでの走行を指しており、ここでドライバーはマシンやコースの最終確認を行うのです。

F1ではフォーメーションラップ開始30分前から15分間に渡って行われ、ドライバーはこの間に好きなだけ走行することが可能。

しかし、このレコノサンスラップはグリッドに着くことを目的としているので、万が一トラブル等でグリッドに着くことが出来なければ、獲得したグリッドからスタートすることが出来ません。

また、ここで消費したガソリンはレース前に給油することが出来ないので、予め搭載する量を計算しておく必要があるのです。

以前はレース日の午前にウォームアップ走行が行われていましたが、それが廃止されてからはレコノサンスラップという形で最終チェックが行われています。

 

マシンが止まり切らなかった際に使われる”オーバーシュート”

 

 

続いてはコースからマシンが飛び出した時に使われる、オーバーシュートという言葉をご紹介。

このオーバーシュートは主に、ブレーキング時に減速しきれずコースから飛び出してしまった場合に用いられます。

マシンがコースから外れる場合にも、その外れ方によって様々な呼び方があり、壁などにぶつかってしまった場合にはクラッシュ、マシンが回転したしまった場合にはスピンアウト、さらにはコースオフなど表現の仕方が変わることも多いのです。

また、経済界でもオーバーシュートという言葉が使われており、こちらは株価が激しい変動をした際に使われています。

モータースポーツの場合はマシンを対象にした言葉になりますが、マシンが通常の走行ラインから大きく変動してしまった事を示しており、その意味合いはとても似ています。

 

まとめ

 

レース中継を見たことはあるけど聞きなれない英語が多く、イマイチ理解できないなんて思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

冒頭でも述べたように、これらの言葉が分からなくてもレース観戦を楽しむ事はできます。

また、言葉が分かなければレースを観る意義が無くなるという事も、決してありません。

レース中継を見ていると、こうした言葉の意味や使い方は自然と覚えることが出来ると思います。

そして、こうした言葉の意味が分かるようになると、レースへの興味はさらに湧いてくるはず!

それまでとは違った新たな楽しみ方が見えてくるのではないでしょうか?

 

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