近々、最も速いクルマの称号は、内燃機関のレシプロエンジン搭載車からEV(電気自動車)に移るかもしれません。なぜなら、フォルクスワーゲンが開発したプロトタイプEV『フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピーク』が、世界中のタイムトライアルイベントでコースレコードを樹立しているからです。EVの技術が急速に向上する中で、フォルクスワーゲンはEV技術をリードするメーカーへと変貌を遂げ、そのポテンシャルはレシプロエンジン搭載車以上に達するのも時間も問題となっています。
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パイクスピーク&グッドウッドフェスティバルでI.D. R パイクスピークがレコード樹立
フォルクスワーゲンが開発したプロトタイプEV『フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピーク』は、アメリカのコロラド州にある山を使ったヒルクライムレース『パイクスピーク インターナショナル ヒルクライム』にて、フランス人レーシングドライパー ロマン・デュマ選手のドライビングによりコースレコードを樹立し、総合優勝を飾りました。
そして今年7月には、イギリスで開催された『グッドウッド フェスティバル オブ スピード』でもEVの最速タイムを記録。
これはグッドウッド史上でも歴代3番目に速いタイムであり、EVで初めてのヒルクライム総合優勝という快挙でした。
この記録だけを見ても、I.D. R パイクスピークが史上最速のEVと呼べるレーシングカーであることは言うまでもありません。
また、レシプロエンジンを搭載したレーシングカーと比べてもトップレベルの速さであるのです。
パイク・スピークのコースレコードから16秒も短縮
I.D. R パイクスピークが、パイクスピークで叩き出したタイムは7分57秒148です。
これは、セバスチャン・ローブ選手がプジョー208 T16パイクスピークで記録したコースレコード8分13秒878から約16秒も短縮する大記録!!
また、歴代出場してきたEVで比較すれば、EVのコースレコードは2016年にリース・ミレン選手がDrive eO PP100で記録した8分57秒118であるため、約1分ものアドバンテージを持つ圧倒的な速さ。
まさに、モンスター級レーシングEVの登場となりました。
グッドウッドのEVレコードを樹立
グッドウッドフェスティバルオブスピードのヒルクライムでは、約1.9kmのコースを43秒86のタイムで駆け抜け、2013年に記録したEVによる最速記録の47秒34を、3秒以上短縮するEVレコードを樹立しました。
これはグッドウッドヒルクライムの最速記録であるF1マシン マクラーレンメルセデスMP4/13が記録した41秒6に、約2秒迫るという驚異のタイム。
1.9kmという短いコースでありながら、F1マシンに迫る速さを見せたI.D. R パイクスピークは、EVの性能がエンジン搭載のフォーミュラーカーの性能に、間近まで迫っていることを知らしめたのです。
フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピークとは
I.D. R パイクスピークは、フォルクワーゲングループが開発したレーシングカーです。
フォルクスワーゲンは次世代EVとして『I.D.ファミリー』と呼ばれる電動自動車のコンセプトモデルを次々と発表し、今回登場したI.D. R パイクスピークは、I.D.ファミリーで初めて実車化されたモデルです。
モデル名からわかるように、I.D. R パイクスピークはアメリカで100年以上の歴史を誇るヒルクライム レース『パイクスピーク インターナショナル ヒルクライム』に出場するために開発したレーシングカー。
開発チームはわずか8ヶ月でI.D. R パイクスピークを作り上げ、ボディにはポルシェのエンジニアが参加。
LMP(ル・マン プロトタイプ)マシンのように空気抵抗が少なく、強力なダウンフォースを発生させるスタイルングとなっています。
また、パワートレインはフロントタイヤとリアタイヤにモーターを搭載し、一つのモーターが335馬力を発揮することで、トータル馬力は670馬力となりました。
フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピークの速さの秘密は
I.D. R パイクスピークの速さの秘密は、モーターならではの加速力と標高が高いコースでも出力の低下がないことです。
0-100km/h加速は驚きの2.3秒となっており、ヘアピンコーナーが連続し、中低速域の加速力が試されるパイクスピークでのタイム短縮に大きく貢献しました!
その上、コースを進めば進むほど標高が高くなり、空気の量がどんどん減っていくので内燃機関のエンジンであればシリンダーに送り込まれる空気の量が著しく低下し、本来の出力が発揮できなくなってしまいます。
一方、EVでは大気中の空気量が減っても出力が低下することはなく、安定した速さをゴールまで継続できるため、最終的にガソリンエンジン車よりも有利に走行する事ができるのです。
また、世界中のサーキットをみれば、パイクスピークやグッドウッドフェスティバル ヒルクライムコース以外でも、高低差のあるサーキットは多数存在。
例えば独 ニュルブルクリンク北コースを、8分間も全開走行可能なバッテリーを搭載するI.D. R パイクスピークが走行すれば、歴代最速タイムを記録できるかもしれません。
そう考えると、I.D. R パイクスピークは歴代のレーシングカー最速の称号を得るポテンシャルを秘めている事になるのです。
フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピークのスペック
フォルクスワーゲン I.D. R パイクスピーク | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 5,200×2,350×1,200 | |
ホイールベース(mm) | 2,850 | |
車両重量(kg) | 1,100 | |
フロントモーター | 最高出力(kW[bhp]) | 250[335] |
最大トルク(N・m[ft・lbs]) | 325[240] | |
リアモーター | 最高出力(kW[bhp]) | 250[335] |
最大トルク(N・m[ft・lbs]) | 325[240] | |
最高速度(km/h) | 240 | |
0-100km/h加速(秒) | 2.3 |
まとめ
I. D. R パイクスピークは、フォルクスワーゲンが持つEVの開発力を証明するスポーツカーとなりました。
これは、I.D. R パイクスピーク以外のI.D.ファミリー車両にも、かなり期待が持てる結果です。
そんなフォルクスワーゲンEVの今後にも大注目!
どんなレースに登場し、どんな記録を樹立してくれるのか、楽しみです。
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