名機4A-G搭載後、レースやラリーなど幅広いモータースポーツで活躍したカローラレビン / スプリンタートレノですが、特にグループAレースであるJTC(全日本ツーリングカー選手権)で最後までホンダ シビックと覇権を争ったのが6代目のAE101でした。それは最後のスーパーチャージャー搭載車で最初の20バルブ4A-G搭載車でもあり、歴代レビン / トレノの中でもっとも大きく豪華仕様モデルでもありました。

 

トヨタ AE101スプリンタートレノ / Photo by Ben

 

 

バブル時代に開発され、もっとも豪勢だったレビン / トレノ

 

トヨタ AE101カローラレビンGT-APEX / Photo by FotoSleuth

 

固定ヘッドライトのカローラレビンが『ミニソアラ』、リトラクタブルライトのスプリンタートレノが『ミニスープラ』として人気のあったE90系カローラレビン / スプリンタートレノ兄弟(以下、レビン / トレノ)でしたが、1991年6月には6代目E100系に移行します。

そして元来が大衆向けセダンのベストセラー、カローラ店向けのカローラおよびオート店(現在のネッツ店)向けのスプリンターのスポーツバージョンとして複数のボディタイプが開発・販売されたレビン / トレノは、5代目E90系で2ドアノッチバッククーペに統一。

同クラスのライバル、ホンダ シビックや三菱 ミラージュが実用大衆車としての役割を兼ね、ハッチバックや4ドアセダンをラインナップしていたのに対し、ベースモデルやカローラFXなど派生車にその役割を任せたレビン / トレノはスポーツクーペ路線に特化していきます。

それもFF化&クーペ化したE90系以降はピュアスポーツというよりミニGT路線を歩むようになり、快適性や豪華装備を誇って大型化していきました。

その頂点に立ったのが6代目E100系で、カタログスペック面でのボディサイズこそそれほど大きくは無かったものの、重量面では歴代でもっともヘビーになっています。

しかし、こうした豪華GTクーペ路線はバブル崩壊とともに市場を失い、高価で実用性や経済性に劣るレビン / トレノはモデルライフ後半、急激に販売台数を落としていき、7代目E110系でのダウンサイジングとコストダウン化につながっていきました。

 

5バルブ4A-GEなど、スペック面では歴代最強クラス

 

トヨタ AE101カローラレビンGT-Z  / Photo by Brent Shaw

 

E100系レビン / トレノの基本ラインナップは、1.5リッターハイメカツインカムの4A-FEエンジンを搭載するAE100と、1.6リッタースポーツツインカムの4A-GE系エンジンを搭載するAE101の2種類です。

さらにAE101のエンジンには、NA(自然吸気)の4A-GEとスーパーチャージャーで過給する4A-GZEの2種類がありました。

特に4A-GEは先代AE92後期ハイオク仕様に対し、1気筒あたり4バルブ仕様(DOHC16バルブ)から5バルブ化、可変バルブ機構VVTを搭載した仕様(DOHC20バルブ)に進化させて最高出力が140馬力から160馬力へと向上。

これによりトヨタ初のリッター100馬力を達成し、AE101の発売3ヶ月後にホンダ シビックSiRが搭載するB16Aで170馬力を発揮するまで、一時的とはいえライバルとエンジンスペック面で肩を並べました。

また、スーパーチャージャー仕様の4A-GZEも4バルブ仕様のままでしたが170馬力にパワーアップされ、歴代レビン / トレノの中で最強のエンジンスペックを誇ります。

サスペンションは基本的にベース車同様4輪ストラットのままでしたが、ライバル(シビック)の4輪ダブルウィッシュボーンに対抗すべく、フロントに『スーパーストラットサスペンション(SSサス)』を初採用。

スーパーストラットはキャンバーコントロールアームなどを装備した特殊ストラットで、ストローク時のキャンバー変化を抑えて操縦安定性やコーナリング限界を大幅に高める一方、ハンドリングの違和感や旋回半径の大きさから、好みの分かれるところです。

そのため社外品の車高調なども少なく、セッティングも難しいためモータースポーツでも公道でも一般受けしにくいサスペンションでしたが、長年の経験からツボを抑えたドライバーであれば、巧みに操ることもできました。

しかしモータースポーツベースグレードの『GT』には設定が無かったことから、どちらかと言えば公道ノーマル派向けだったと言えます。

 

グループA末期とジムカーナなどでホンダ勢に一矢報いたAE101レビン

 

 

E100系レビン / トレノでは、主にレビンがモータースポーツで活躍、発売された1991年のグループAレース、JTC(全日本ツーリングカー選手権)の最終ラウンド、インターTEC(富士スピードウェイ)のクラス3に初登場、主にチームトムスとチームADVANで使われました。

また、本格参戦は1992年からで、この年AE101は以下の主な成績を残しています。

第2ラウンド『全日本ツーリングカー選手権 in AUTOPOLIS』(オートポリス)

鈴木 恵一 / 新田 守男 組(ADVAN COROLLA レビン):優勝

第4ラウンド『鈴鹿スーパーツーリングカー 500kmレース』(鈴鹿サーキット)

横島 久 / 和田 久 組(ランドマーク・カローラ):優勝

第5ラウンド『オールジャパンツーリングカー 300kmレース』(MINEサーキット)

星野 薫 / V.ロッソ組(富士通テン トムスカローラ ):優勝

 

 

そして8ラウンド中3勝してライバルのシビックに一矢報いたAE101レビンでしたが、対するシビックも第4ラウンド以降順次新型のEG6に切り替わっていくと勢力は一変、1993年にはついに1勝もできずにJTC最後の年を終えました。

 

 

同時期に全日本ラリーにもAE101レビンは参戦していましたが、軽量ツインチャージャーのマーチRやジェミニ・イルムシャーR、ミラージュなど4WD勢に比べると分が悪く、勝ち星は残せていません。

1995年以降の2WD部門やその後のターマックラリーなどにも参戦記録がありますが、後継のAE111がある程度活躍したのに対し、重量面で不利なAE101には厳しかったようで、ラリーでの勝利は叶いませんでした。

一方、舗装系のジムカーナ、オフロード系のダートトライアルといったスプリント競技の改造車部門では、生産終了後の活躍が目立ちます。

特に目覚しい活躍をしたのがGA2シティから転換、EK9で再びホンダ車に戻るまでの1997~1998年、全日本ジムカーナC1クラスでAE101レビンを駆った根尾 貞克で、この期間ほぼ全戦で上位入賞成績を挙げつつ1997年に1勝、1998年には2勝を手にする事に!

このクラスはGA2やEG6などほぼホンダ車の独壇場だった中、AE101レビンで好成績を上げた梶尾の戦績が光ります。

また、全日本ダートトライアルでも2017年になってSC1クラスで則信 重雄がAE101レビンでフル参戦。

最高位は3位でしたが、多種多様な車種が活躍する同クラスに華を添えました。

 

主要スペックと中古車相場

 

トヨタ AE101 カローラレビン 出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=A&CARTYPE_CD=A40&GENERATION=-2&CARNAME=%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%B3

 

トヨタ AE101 カローラレビン GT 1991年式

全長×全幅×全高(mm):4,275×1,695×1,305

ホイールベース(mm):2,465

車両重量(kg):1,080

エンジン仕様・型式:4A-GE 水冷直列4気筒DOHC20バルブ

総排気量(cc):1,587

最高出力:160ps/7,400rpm

最大トルク:16.5kgm/5,200rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:38万~76万円

 

まとめ

 

トヨタ AE101カローラレビン/ Photo by Ben

 

それまでVTEC搭載のホンダ シビックに苦渋を飲まされていたレビン / トレノユーザーが、これに一矢を報いるべく5バルブ版4A-Gを搭載したE100系ですが、その戦績を振り返ると見事にその役割は果たしたと言えます。

その反面、大きく重く、高コスト高価格とカローラクラスとしては豪勢過ぎたことが、バブル崩壊後の経済情勢には合わないと次期型E110系ではスリム化が図られますが、実際には2ドアクーペ市場自体が既に消滅していたと判断しただけでした。

そういった意味では、E100系レビン / トレノはその役割を果たし、一定の人気を得て、最後の栄光を担ったモデルだと言えるのではないでしょうか。

E100系カローラシリーズ、あるいはバブル時代に開発された車種特有の、(当時としては)豪華で頑丈、高品質な作りから現在でも中古車の程度は良く、シビックほど酷使されてもいないことから、現在乗ってもソコソコの満足感を得られそうです。

「歴代でもっとも豪華だが大きく重くなった。」とも言われるE100系レビン / トレノですが、これもまた『バブル時代にひたすら右肩上がりを続けようとした日本』を象徴する1台かもしれません。

 

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