事前の天気予報通り、心地よい秋晴れのもとでスタートした全日本ロードレース選手権 最終戦のレースWEEK。悪天候に翻弄され続けた
今シーズン
も、終わりよければ全て良し!誰もがベストコンディションでのレースになると思っていた決勝日にまさかの降雨。ぶっつけ本番のレインコンディションとなってしまった最終戦で、ライダー達はいったいどんな結末を迎えたのでしょうか。
まずは、J-GP3クラスの決勝レース
前日までの秋晴れとはうって変わって、冷たい雨が降りしきる中行われたJ-GP3クラスの決勝レースはウェット宣言が出され、2周減算の10周で争われる事に。
レースWEEKで唯一のウェットという難しいコンディションの中スタートを決め、ホールショットを奪ったのは、前日の公式予選でポールポジションを獲得した#13 長谷川 聖(CLUB Y’s&J)でした。
しかし2コーナーを抜け、S字に差し掛かる頃には4番グリッドスタートの#93 菅原 陸(RG NIWA with オーテック・スズカ)がトップに浮上。
そこから一気に2位以下を引き離し独走状態を築き上げ、その後を#29 鈴木 大空翔 (BATTLE FACTORY) 、#71 小室 旭(Team P.MU 7C MIKUNI)、長谷川とセカンドグループが続きます。
そして2周目には、長谷川と小室の激しい3番手争いが勃発。
激しく順位を入れ替えながらも、2番手鈴木を追う展開となりました。
その後もトップ菅原、そして鈴木、長谷川、小室の激しい2番手争いが続きます。
そんな激しい2番手争いから最初に抜け出したのは、小室!
そこから着々とペースを上げていき、その後を長谷川が追う形で4周目には3台によるトップ争いに。
5周目のホームストレートで小室がトップに立つも、菅原が抜き返すなど激いバトルを展開する中、菅原がテグナー1つめで痛恨の転倒。そのままリタイアとなり戦線を離脱します。
その後のトップ争いは、小室と長谷川の一騎打ち。
最終ラップまで、逃げる小室と追う長谷川という展開は続くも、日立オートモティブシステムズシケインで小室のイン側を付こうとした長谷川が小室に接触。
2台はグラベルに飛び出すも、小室はすぐにコース復帰。
長谷川もコースには復帰できたものの、3番手を走っていた#090 藤井 謙汰(au・テルルMotoUP RT)に抜かれ、小室、藤井、長谷川の順でのチェッカーとなりました。
Motorz注目の♯13長谷川聖 選手(CLUB Y’s & J)の決勝は?
前日に行われた公式予選でポールポジションを獲得するなど、絶好調の長谷川選手。
決勝レースでもスタートを決めホールショットを奪いますが、後方ライダーの勢いに押され、一時は4番手までポジションを下げる事に。
しかし、2番手争い集団に食い下がり、激しいバトルを展開。
3番手、2番手と着実にトップに迫り、最後はトップを走る小室選手との一騎打ち!
チェッカーを受けるその瞬間までトップをプッシュし続けるも、最終シケインで接触。
すぐにコース復帰しましたが、3番手を走行中だった藤井選手に抜かれ3位でチェッカーを受けました。
長谷川選手 決勝レース終了後コメント(決勝:3位)
勝てるレースだったのに・・・ちょっと計算を間違えちゃいました。
最後はずっと小室選手の後ろについていて、自分の得意、不得意を見つけながら走っていて、絶対イケると思っていたのですが、やはり小室選手は上手くて、最後の最後だけ全く違う走りをしていました。
実はその前に自分がミスをして、スピードが乗せれなかったのもあったのですが・・・。
そのせいで、シケインのブレーキングまで届かなくて。
でも、そのまま終わっても何も残らないから、その次の切り返しで無理があるというレベルを超えるぐらい無理なラインで、ほぼ追突する勢いで小室選手に仕掛けました。
結果、接触してしまって・・・。
小室選手の順位が変わらなくてよかったです。
ペナルティになっちゃいましたけど(笑)
これまでの経験上、1周目でガンガン行くといい事はないというのを学んだので、焦らず、普通にゆっくり様子を見ながら少しずつペースを上げたら、最後はイケると思っていました。
そこまでは良かったのですが、もう少し早めに小室選手の前に出ておいた方が良かったかな?と反省です。
今シーズは最終戦までずっとマシントラブルが発生していて、自分とバイクが一体化しなかったのですが、最終戦にきてレースWEEKの木曜日からノートラブルで、完璧なバイクになっていて、久しぶりに楽しい練習や予選・決勝ができました。
いい締めくくりだったと思います。
来年はまだ決まっていませんが、ST600にステップアップできたらいいなと思っているので、引き続き応援よろしくお願いします。
そんな長谷川選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
①ブレーキで差を詰められる。
②リズムに乗れたら気持ちがいい。
③バンクを上手く使えると、速く立ち上がれる。
④立ち上がりで差を詰められる。
⑤ブレーキで差を詰められる。
苦手(赤〇):
①クリッピングポイントに狙いが定まらない。
②路面のギャップで飛んでいきそうになる。
③芝生に落ちそう。
④少しと路面が悪くて走りずらい。
⑤立ち上がりで少し離される。
鈴鹿サーキットは、簡単にタイムが出せない難しいコースだと教えてくれた長谷川選手。
しかし、そんなテクニカルなレイアウトを研究し尽くし、予選ではトップタイム!
決勝でも、激しすぎるトップ争いを見せつけてくれました。
Motorz注目の♯29鈴木 大空翔 選手(BATTLE FACTORY)の予選・決勝は?
7番グリッドからスタートし、一気に3番手までポジションアップ。
レース序盤は2位を走行するなど、アグレッシブな走りを見せた鈴木選手。
後半は激しいトップ争いの速度に少しずつ離されるも、4番手争いを展開。
最終ラップまでポジションを守り切るも、一歩及ばず5位でチェッカーという悔しい結果となりました。
鈴木選手 決勝レース終了後コメント(決勝:5位)
スタートから1・2・3コーナーぐらいまでで2番手まで上がれて良かったのですが、その後、抜かれてからは順位を上げる事ができませんでした。
ただ、それ以上下がる事も無かったので、良かったです。
最終ラップで福嶋選手に抜かれて、130Rでミスをしてしまったのですが、そのあと福嶋選手がシケインでつまっていたので、ミスが無ければと悔やまれます。
ただ、路面のコンディションに少しビクビクしてしまった面もあるので、もっと自信をもって行けるように頑張ります!
来年も同じ体制でJ-GP3クラスにフル参戦予定なので、第1戦からしっかりとトップグループに絡んで行けるようにしたいと思います。
そんな鈴木選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
①スピードを落とさずに、しっかりアクセルをあけられている。
苦手(赤〇):
①切り返しが少し遅い。
②ブレーキが少し弱い。
鈴鹿サーキットは、全体的にスピードが速いコースだと教えてくれた鈴木選手。
細かいコーナーが苦手とは言うものの、雨の決勝レースではどこにでも突っ込んでいくアグレッシブさと、離されても諦めない粘り強さを見せ、堂々の5位入賞!
来年の活躍に期待が高まる走りを見せてくれました。
Motorz注目の♯34村田 憲彦 選手(CLUB Y’s & J)の決勝は?
マシントラブルにより十分な準備ができず、24番グリッドからのスタートとなった村田選手。
しかしレースがスタートすると、前を走るライダーを1台1台着実に交わしていき、一時は11番手までポジションを上げる事に成功!
驚異の13台抜きを見せるも最後は少し苦戦し、12位でチェッカーを受けました。
村田選手 決勝レース終了後コメント(決勝:10位)
自分の得意な鈴鹿の雨という事で、12台抜いたかな?
本当に雨で良かったです!!
ドライでの走行時も、自己ベストを更新していたりと自信が無い訳ではなかったのですが、ドライと同じ感覚で走れるように足回りをセットアップして挑んだので、乗り方も変えずにいけたのが順位をここまで上げられたポイントだと思います。
今シーズンは9年ぶりに全日本に復帰して、もう少し上位を走れるかと思っていたのですが、正直難しいところがたくさんありました。
来年はもう少し戦えると思いますので、J-GP3への再挑戦!!
応援よろしくお願いします。
そんな村田選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
①どこまでも突っ込めるので楽しく走れる。
②ミニバイクのように走れるので得意。
③難しいけど、走っていて楽しい。
④走っていて気持ちいので大得意!!
苦手(赤〇):
①リズムが掴みにくくて苦手。
②難しい。
③切り返しで失速してしまい、上手く走れない。
鈴鹿は低・中・高速コーナーが有り、テクニカルなサーキットだと教えてくれた村田選手。
限られた時間でのマシンセッティングに苦戦しながらも、決勝レースではベテランの意地を見せてくれました。
来年も全日本継続参戦という事で、9年のブランクを吹き飛ばし復帰2年目の活躍に期待したいと思います。
続いてJ-GP2クラス決勝レース
早朝から冷たい雨が降り、午前中のフリー走行はフルウェットコンディション。
各チーム朝フリーで雨用のタイヤ選択に専念するも、決勝レースが始まる頃には一気に雨量が減ってしまいセミウェット状態に。
そんな難しい路面コンディションの中、ウェット宣言が出され2周減算の10周で行われたJ-GP2クラスの決勝レース。
まずはスタートを決めホールショットを奪ったのは、ポールポジションスタートの#4 岩戸 亮介(Team 高武 RSC)でした。
しかし、その後のS字で岩戸を交わし一気にトップに立ったのは#634 名越 哲平 (MuSASHi RT HARC-PRO.)。
そのままオープニングラップを制するも、3周目のホームストレートでは3番グリッドスタートの#34 榎戸 育寛(Kohara Racing Team)がトップの名越をオーバーテイク!
レース序盤から激しくトップが入れ替わる、目の離せない展開となりました。
そんなテールトゥノーズのトップ集団から一気に抜け出したのは榎戸で、3周目にトップに浮上すると一気にペースを上げ、2番手以降を引き離します。
その後は榎戸の独走状態が続くも、好ペースを刻み2番手集団から抜け出してきた名越が着々と距離を詰め、トップ争いは2台の一騎打ちに。
榎戸も決死のブロックを見せるも、7周目のシケインで捕らえられ、トップを入れ替えると、名越の勢いは止まらずそのまま最終ラップのコントロールラインを通過!
圧倒的な雨での速さを見せ付け、最終戦にして今季初優勝を飾りました。
Motorz注目の♯71 三原 壮紫 選手(TONE RT SYNCEDGE4413)の決勝は?
前日の予選により、7番グリッドからスタートした三原選手。
レース序盤からペースも良く、周回を重ねるごとに着実にポジションを上げ、岩戸、名越、#44 関口 太郎(SOX Team TARO PLUSONE)との2番手争いを展開するも、トップ2台のペースが速く、5周目に3番手に浮上してからは単独走行に。
その後はトップ集団を懸命に追いかけるも前との差は大きく、そのまま3位でチェッカーを受けました。
三原選手 決勝レース終了後コメント(決勝:3位)
しっかりとスタートを決められ、トップグループに食らいついていく事はできたのですが、序盤は上手くペースを上げる事ができず、前方に出て行けませんでした。
結果的には3位表彰台という事で、開幕戦から最終戦まで右肩上がりで来れたのは良かったと思います。
これはチームの皆さん、タイヤメーカーの皆さん、応援してくれた皆さんがいての結果だと思うので、来年もこの調子で頑張って行きたいです。
ただ、この表彰台3位という結果が、できれば2戦目ぐらいで欲しかったですね(笑)
でも、来年またJ-GP2クラスに乗れるとは思うので、来年こそは1戦1戦結果を残していきたいと思います!!
そんな三原選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
①走っていて楽しいので得意。
②スピードを乗せられるので好き。
苦手(赤〇):
①上っていて難しい。
②シケインの立ち上がりが時々上手くいかなくて苦手。
鈴鹿はとにかくハイスピードで、スリルと迫力のあるテクニカルなサーキットだと教えてくれた三原選手。
決勝レースではその言葉を体現するかのような迫力ある走りで、難しいコンディションを走り抜き、3位表彰台を獲得!
最終戦を最高の結果で締めくくってくれました。
Motorz注目の♯7 石塚 健 選手(will-raise racing RS-ITOH)の決勝は?
レースWEEK初日から立て続けに発生するマシントラブルにより、上手くセッティングをまとめる事ができなかった石塚選手。
7番グリッドからスタートするもタイヤ選択にも失敗し、ペースを上げられないまま13番手、15番手と周回を重ねるごとにポジションを落としていく苦しいレース展開に。
しかし、完走を諦める事なく10周のレースを走り切り、14位でチェッカーを受けました。
石塚選手 決勝レース終了後コメント(決勝:14位)
朝フリーの走行で感触が悪く、レースではチームと話し合い柔らかめのタイヤを選択しました。
レース中は思ったより雨量が少なく、序盤からペースを上げていけずに我慢のレースになってしまいました。
最終戦をいい結果で終えられなかったのはとても悔しいですが、自分の足りない部分、結果を残す為に必要なものをシーズンオフで準備し、来シーズンに向けて頑張っていきたいと思います。
今シーズンも応援、サポートいただき、本当にありがとうございました。
来シーズンもよろしくお願いします。
そんな石塚選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
スムースに切り返し、車速を落とさずに走るのが得意!
苦手(赤〇):
車体に合わないから苦手。
鈴鹿は、ブレーキをできるだけ使わずに車速を意識しながら走る高速サーキットだと教えてくれた石塚選手。
最終戦は自身とマシンが噛み合わず、我慢のレースとなってしまいましたが、今回の悔しさを糧に、来季も是非頑張ってもらいたいと思います。
Motorz注目の♯31 豊島 怜 選手(DOG FIGHT RACING・YAMAHA)の決勝は?
17番グリッドからスタートし、1つ1つのコーナーを順調にクリア。
追い上げのレースに向けて、体制を整えていた豊島選手。
しかし他者との接触により、オープニングラップの日立オートモティブシステムズシケインで転倒。
すぐにコース復帰し、ピットイン。
メカニックの決死の復旧により再度コースに戻るも、レースの集団に戻る事は叶わず、7周を終えた所でチェッカーを受ける結果となりました。
豊島選手 決勝レース終了後コメント(決勝:19位)
自分の外側を走っていたライダーと接触し、転倒してしまいました。
怪我がなくて良かったです。
このレースWEEKでGP2マシンやスリックタイヤの感触が一気につかめるようになりました。
去年までは250㏄でレースをしていて、かなりマシンコントロールができていたので、今年600㏄のJ-GP2クラスにステップアップしても普通にイケるだろうと思っていたのですが、コテンパンにされて色々な事を身をもって学べた1年になりました。
もちろん一気にマシンのパワーが上がったことにも苦戦しましたが、1番の問題はスリックタイヤ。
なんと説明していいか分からないのですが、今までのタイヤに比べてグリップ力がすごい分、マシンのパワーも食われてしまいタイムが出なかったり・・・。
その部分のコントロールなど、今までのレース経験の中で全く未経験だった事の数々に苦しみました。
それがやっとこの鈴鹿で理解できたので、来年も多分GP2クラスで走る予定なので、初戦からいきなり上位で争えるように頑張ります!
そんな豊島選手に聞いてみた。鈴鹿サーキットの得意な所・苦手な所は?
得意(青〇):
リアタイヤを滑らせながらアクセルを開けていけるので、楽しい。
苦手(赤〇):
リズムが取りにくくて難しい。
鈴鹿サーキットは、全体的なスピードを上げないとタイムアップしていけない難しいサーキットだと教えてくれた豊島選手。
決勝はレーシングアクシデントにより残念な結果となってしまいましたが、走行ごとに確実なスキルアップを見せ、このレースWEEKでも誰もが目を見張る成長を遂げていました。
まとめ
台風や集中豪雨など、天候に翻弄され続けた今シーズンの全日本ロードレース選手権。
その流れは最終戦も例外ではなく、2018年の集大成とも言える予想外のコンディションとなりました。
しかしそんな難しい状況を打破し、驚くべきファイトを見せたライダー達。
シリーズでMotorzが追いかけてきたライダー達も、2人が表彰台を獲得するなど、大きな成長を見せてくれました。
レースの世界は基本的には1年ごとの契約で、来年の事はまだ確定していないという厳しい現実の中戦っているライダーがほとんどですが、2019年もまた、彼らそれぞれの戦いを応援していければと願わずにはいられません。
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