宿敵VWゴルフを追いかけ、カデットD(1979年)からFF化したオペル カデットですが、進化を続けるゴルフに対して十分な魅力を持っていたとは言えずに短命に終わり、1984年にはより洗練されたカデットEへとモデルチェンジされます。少なくとも前作よりは魅力的であり、ラリー用やレース用モデルも開発されたカデットEでしたが、次作はアストラと名を変えたため、これが最後のカデットとなりました。
デザインと空力的な洗練を優先させた最後のカデット、『カデットE』
1984年に発売されたカデットEは、1979年までの保守的な後輪駆動のカデットC、FF化したもののライバルより一周遅れた古臭さの抜けないデザインで短命な過渡的存在にしか過ぎなかったカデットDに代わるものとして、ようやく当時のトレンドに追いついた車でした。
ボディは全体的に丸みを帯びて角ばった印象は排され、当時フォルクスワーゲン ゴルフのみならず他のライバルに対しても古臭い印象を、少なくともイギリス製大衆車よりは余裕とデザイン負けしないメカニズムをもって実現していたと言えます。
とはいえ少々車内の開放感が欠けるところはまだ好みの範疇で、パワーユニットは当初先代カデットDからキャリーオーバーな部分が多かったとはいえ、空力性能の向上で走行性能や燃費は改善されていました。
多彩なボディバリエーションは継続
相変わらず2ドアクーペモデルが復活することこそ無かったものの、ボディバリエーションは引き続き豊富であり、先代同様ベーシックな3/5ドアハッチバック、4ドアセダン、3/5ドアキャラバン(ステーションワゴン)に加え、ベルトーネデザインの2ドアカブリオレが新たにラインナップ。
ヨーロッパ特有の、税金を安くするためにリアサイドウィンドウが塞がれた商用バン仕様は荷室の天井が盛り上がったフルゴネットタイプとなり、カデット コンボを名乗っています。
また、当初カデットDからのキャリーオーバーで平凡だったエンジンは段階的にバージョンアップを受け、特に1988年に追加された2リッターDOHC16バルブ仕様は当時のヨーロッパ同クラス車の中で最強レベルの動力性能と歓迎されました。
ラリーやツーリングカーで活躍したカデットE
1986年に小型軽量・空力性能の高さにより、1.8リッターエンジンながら最高速は220km/hに達するGSiが追加され、スポーツ性の高さをアピールする必要に迫られたオペルはグループAでWRCへ参戦。
DTM(ドイツツーリングカー選手権)にも1987年から参戦し、DOHC16Vエンジン搭載のGSi 16Vが登場すると1989年にワークス/セミワークス体制で数台のカデットEを送り込みます。
その結果、優勝こそ1度も無かったため1990年から少しずつオメガに取って代わられていったものの、消えゆくカデット最後の晴れ舞台の1つとなりました。
また、カデットEのラリー挑戦はグループAにとどまらず、グループB、そしてその先のグループSを見越した4WDモンスターラリーマシンの開発が進んでいました。
しかしよく知られているように1986年に相次いだ観客やドライバーが死亡する重大事故を立て続けに起こしたグループBにより、WRCは1986年をもって廃止。
行き場を失ったカデットEの『ラリー4×4』はその後、各地のラリークロスやパリ~ダカールレースへと戦いのステージを移しています。
主なスペックと中古車相場
オペル カデット(カデットE) 4ドアセダンGT 1985年型
全長×全幅×全高(mm):3,998×1,663×1,400
ホイールベース(mm):2,665
車両重量(kg):1,130
エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒SOHC8バルブ
総排気量(cc):1,598
最高出力:66kw(90ps)/5,800rpm
最大トルク:124N・m(12.6kgm)/4,000rpm
トランスミッション:4MT
駆動方式:FF
中古車相場:皆無
まとめ
ようやく1990年代でも見られるようなヨーロッパ車らしいデザインテイストを手に入れたカデットEは、1991年までの7年間とソコソコのモデルライフを経て、海外生産モデルの末裔は実に2006年までルーマニアなどで作られていたと言われています。
しかしモデルチェンジに際し、海外名として使われていた『アストラ』へ車名を統一。
途中第2次世界大戦による初代カデットの生産中断後、1962年のカデットAから復活していた『カデット』の名は、30年足らずで再び消滅したのです。
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