戦後初の小型乗用車『カデットA』で宿敵フォルクスワーゲン・タイプ1『ビートル』打倒を目指し、ある程度成功したドイツの自動車メーカー、オペル。しかし、ユーザーがカデットAを歓迎すると同時に4ドアセダンがラインナップされていない事へ不満を感じた結果、オペルは早急なモデルチェンジを迫られます。こうして1965年に生まれ、ついにドイツや北米でビートルを打倒したのがカデットBです。
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一回り大きくパワフルに、今度は4ドアセダンもあり!
1962年に戦後オペル初の小型乗用車として発売、ある程度の成功を収めたカデットAですが、ユーザーから求められた4ドアセダンの設定には、少々寸法が足りませんでした。
そこで全長85mm、全幅100mm、ホイールベースも95mm拡大した上で全高は少々下げたロー&ワイドかつ車内の前後方向に余裕を持たせたバージョンのカデットを開発。
カデットAの販売をわずか3年足らずで打ち切り、新型のカデットBを1965年9月に発売します。
しかし、カデットAからそうそう変わらなかった見た目に当時の自動車評論家は失望の声を上げたとも言われますが、ユーザーにとっては『シンプルで広くて安い』希望の車が登場したので、言うことはありません。
そもそも余裕ある独立トランクスペースで使い勝手は良かった上に、実用的な後席と希望すれば後席ドアがある4ドアセダンも選べるようになったカデットBは、たちまち大ヒット。
ドイツ本国ではついに戦前からの宿敵、フォルクスワーゲン タイプ1『ビートル』をトップの座から引きずり落とし、30年近く時間はかかったもののオペルの執念を実らせたのです。
さらに輸出された北米でも、2ドアのファストバッククーペを中心に大ヒットを記録。
日本車が全米を席巻する以前の北米市場で大人気を得ていましたが、ある意味で後の日本車人気はカデットがその下地になっていたのかもしれません。
後に1.9リッターCIHまで発展したパワーユニットと、5つのボディタイプ
カデットBでは前作の993cc OHVエンジンをそのまま搭載した輸出型もありましたが、初期の主力となったのはボアアップした1,078ccエンジンで、通常版は45馬力を発揮し、相変わらずシンプルな軽量ボディを最高速度125km/hで走らせました。
さらにはスポーティグレードの『1100S』ではソレックス ツインキャブレターを組んだ有鉛ハイオクガソリン仕様で55馬力を発揮し、最高速も140km/hに向上。
後に環境問題で有鉛ハイオクガソリンが規制されたため、1100Sは廃止。
通常版はさらにボアアップして1,196ccエンジンを積むようになりますが、ハイパフォーマンス版は新開発の1,698cc SOHCエンジン『オペルCIHエンジン』へ移行。
最終的にCIHエンジンは1,897ccで90馬力を発揮するに至りました。
なお、ミッションは基本4速フロアMTでしたがオプションでGMの3速ATも選択可能で、さらにこのクラスでは珍しいことに、スポーツグレードにはフロントディスクブレーキが搭載されていました。
なお、カデットBには2ドア / 4ドアセダンのほか2ドアファストバックの『クーペ』とオープンカーの『カブリオ』、それにステーションワゴン版『キャラバン』の5タイプを設定。
ドイツ本国などヨーロッパでは実用的なセダンが人気でしたが、北米ではおそらく通勤・通学用のセクレタリカー需要か、クーペ人気が炸裂していました。
ドライバーを育てるエントリースポーツとしても活躍
スポーティ版も『ラリー カデット』と呼ばれるスポーツ仕様が1.1リッター、または1.9リッターのツインキャブ仕様で設定され、主にラリー競技のローカルイベントで活躍しました。
多くのアマチュアドライバーがラリーやサーキットでデビューするには、小型軽量でパワフル、シンプルで安価なカデットBはうってつけで、エンジンやサスペンションをチューニングする余地も大いにあったようです。
ラリー カデットは、日本で言えばまさに日産B110サニーのような存在で、特にサーキットを走る姿を見ると、カデットBとB110サニーやKP47パブリカ スターレットなどのTSレース車が競うレースなど実現したならばと胸が熱くなってしまいます。
主なスペックと中古車相場
オペル カデット(カデットB) 1965年式
全長×全幅×全高(mm):4,105×1,570×1,390
ホイールベース(mm):2,420
車両重量(kg):755
エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒OHV8バルブ
総排気量(cc):1,078
最高出力:33kw(45ps)/5,000rpm
最大トルク:75N・m(7.6gm)/2,400~3,200rpm
トランスミッション:4MT
駆動方式:FR
中古車相場:皆無
まとめ
1973年までの8年間で通算260万台もの販売台数を誇ったカデットBは、紛れもないベストセラーモデルでした。
GMにとってもヨーロッパのみならず北米でも成功する世界戦略車として成功したのは喜ばしいことでしたが、そこからさらに一歩推し進めて『世界共通のプラットフォームから各国の市場に合ったモデルを派生させる』GMのTカー構想が生まれます。
そのため、その中核に定められたカデットは新プラットフォームへの移行を迫られ、ヨーロッパのベストセラー車としては意外なほど短期間でカデットCへとモデルチェンジしていくのでした。
カデットBまでは『日本車へも強い影響を与えた1台』でしたが、カデットCからはいよいよ日本でもGM傘下の国産車メーカーが生産する国際戦略車として、姿を現します。
という話は、次の機会に。
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