F1を120%楽しむのであれば、レギュレーションを把握しておくことは必須。2019シーズンは昨シーズンより抜きつ抜かれつのデッドヒートが白熱するようなレギュレーション変更が行われました。そんなレギュレーションの変更点を詳しくご紹介します。
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2019年シーズンは抜きつ抜かれつのデッドヒートが頻繁に繰り広げられる!?
F1では2019シーズンの開幕にあたり、レギュレーションでは空力パーツの大幅な見直しが行われました。
今回のレギューレション変更の主な意図は、レース中のオーバーテイクシーンを増やすためのものです。
これまでサーキットによっては、レースを通してオーバーテイクをするシーンが見られないラウンドもありましたが、今回のレギュレーションの見直しでレース終盤までデッドヒートが行われる事が予想されます。
ほかにも、CFDシミュレーションの制限撤廃などレースウィーク以外でもいくつかの規制緩和が見受けられ、チームにとってはシーズン期間でもマシンチューニングが行いやすい環境に改善。
しかし、観戦側にとっては2019年シーズンが開始するまでに全てを把握することが困難なほど多数のレギュレーション変更が行われています。
2018→2019シーズン主要レギュレーション変更点
フロントウィングの変更
Day 2 of #F1Testing complete ✔️
Today saw @Anto_Giovinazzi take to the track at @ymcofficial for the second day of testing, ahead of the 2019 season.
Read all about today’s track action here: https://t.co/3oH4q5q20T#Alfaromeosauberf1team pic.twitter.com/Gv6rsObKfh
— Alfa Romeo Racing (@SauberF1Team) 2018年11月28日
フロントウィングでは、上部に追加されているカスケードウイングやフロントウイングの側面エンドプレートにあるカナードを排除。
ウイング裏のアンダーウイング・ストレーキも2本に制限されるなど、従来の複雑な構造から単純化される事に。
サイズは空力パーツを減らす分、ダウンフォースを稼ぐためにサイズアップされます。
これは、従来の複雑なフロントウイングでは接近戦が困難だとF1とFIAが判断し、今回の単純化にふみきりました。
フロントウイングを大きくしたことで、前車と接近した時にフロントグリップが失われるリスクを軽減させています。
2018 | 2019 | |
---|---|---|
ウィング幅(mm) | 1,800 | 2,000 |
フロントオーバーハング(mm) | 1,200 | 1,225 |
地面を基準点としたときの垂直方向高さ(mm) | 75~275 | 75~300 |
リアウイングのサイズ変更
リアウイングもテール トゥ ノーズの接近戦を行いやすくするための変更が成されています。
ウイングの高さを上げ、後方へ流れる気流を高くし、後続車への悪影響を軽減。
奥行きや幅の長さもアップされ、よりダウンフォース量は向上することが予想されます。
同時にテール トゥ ノーズの激しい展開になった時、スリップストリームエリアが広がる事で、後続車が抜きやすくなるのです。
またDRSの開口部も拡大。
DRS(Drag Reduction System)とはリアウイングの角度を変更できるシステムで、DRSの開口部を20mm増やす事で、その効果が25%程度向上することが見込まれます。
しかし、エンドプレート上部のスリットは禁止されました。
2018 | 2019 | |
---|---|---|
ウィング幅(mm) | 950 | 1,050 |
ウイング奥行き(mm) | 710 | 810 |
車底を基準点としたときの垂直方向の高さ(mm) | 800 | 870 |
DRSの開口部 | 65 | 85 |
バージボードの小型化
Dettaglio dei barge board della @redbullracing RB14. #F1 #Tech #Design #Illustrazione #RedBull @CircusFuno pic.twitter.com/U04BvkuURl
— Rosario Giuliana (@RosarioGiuliana) 2018年11月2日
バージボードは前輪付近で乱れた気流を制御するためのパーツで、気流を車体底面に向かわせる役割によりダウンフォースを増大させる効果があります。
しかし『ダーティーエアー』と呼ばれる乱気流を生み出すため、後続車への影響も考慮して2019シーズンから従来より小型化。
寸法は全高を150mm小さく、100mm前方へ移動される事になりました。
タイヤ・ラインナップが3種に変更
2018シーズンはドライタイヤが7種類用意され、識別のためにタイヤフォールにそれぞれ決まった色が塗られていました。
これをFIAとFOM(Formula One Management)が分かりづらいと指摘。
3種類へ厳選され、サイドフォールのカラーは白色がハード、黄色がミディアム、赤色がソフトとなります。
ブレーキダクトのデザイン制限
ブレーキダクトは空力パーツとしての役割を担っていましたが、冷却だけの効果にするため、ブレーキダクト周りの複雑なデザインが制限されます。
最低車両重量を引き上げ
ドライバーを含めた車両の最低重量は燃料を含めない状態で、従来の733kgから2019シーズンでは740kgに変更。
内訳はマシン最低重量が660kg、ドライバー+ドライバーシートの最低重量が80kgとなり、重量が満たない場合はパラスト(重り)を追加することで調整されます。
リアウィング・エンドライトの装着義務化
リアウイングの両端のエンドプレートに『リアウィング エンドライト』と呼ばれるLED製ライトの装着が義務化されます。
そして、インターミディエイトタイヤまたはフルウェットタイヤを装着する際は、常時リアウィングエンドライトを点灯させなければなりません。
使用可能燃料の増加
決勝レースで使用できる燃料が従来は105kgだったのが、2019シーズンから110kgに増加されます。
これにより、決勝レース中にドライバーがエンジンを全開にできる時間を増やすことが可能に!!
ハイブリッドターボが導入されて以降は燃費性能が重要視されていたため、ドライバーが限界までアクセルを踏み込むことが少なくなっていましたが、使用できる燃料が増加したことで終盤でのデッドヒートも増加する事が予想されます。
新規格のヘルメットを導入
安全性の向上のため、『FIA 8860-2018規格』とよばれる新基準に沿ったヘルメットの装着が義務化されます。
この規格では飛散したデブリが衝突したときの衝撃リスクを低減させるために、バイザー部分を10mm低く設定。
ヘルメットシェルは先進的な複合材料が使用され、今まで以上の耐衝撃性、ショック吸収、耐貫通性が高いレベルで設定されています。
CFDシミュレーションの実施制限撤回
CFDとはComputational Fluid Dynamicsの略記で、数値流体力学のこと。
F1マシン開発において、CFDを用いたマシン上を流れる気流のシミュレーションは非常に重要で、開発段階でもレギュレーションによる制限がありました。
そのため従来はスケールモデル60%以下、速度50m/sという制限の下で風洞実験を行わなければなりませんでしたが、今後はこれらの制限がすべて撤回されます。
グリッド降格ペナルティを調整
今までのレギュレーションではパワーユニット交換によるペナルティで、15グリッド降格がありましたが、今後15グリッド以上降格となるマシンが複数発生した場合は、予選結果の順にグリッドに並ぶ事になりました。
ちなみに2018年までは15グリッド以上降格ペナルティとなった場合は、最後尾からのスタートとなり、複数のドライバーに降格ペナルティが発生した場合は、ペナルティを課せられた順にグリッドの最後に配置されるルールでした。
しかし、20台のグリッドで60グリッド以上の降格ペナルティといった異常なケースが発生したたため、グリッド降格のペナルティでもドライバーが予選に参加することを奨励するよう変更されたのです。
SCピット帰還後もイエローフラッグ状態継続
これまでは、レース中にSC(セーフティーカー)がサーキット内に導入された後、SCがピットに帰還した後にイエローフラッグとSCボードが撤去され、グリーンフラッグが降られていましたが、2019からはSCがピットに帰還した後もコントロールラインを通過するまでは、イエローフラッグ状態が継続されるようになります。
燃料取扱手順をレースイベントと同様化
ピットイン時の燃料を扱う手順は、テストの際にもグランプリレース時と同様の燃料取扱手順で行うことが義務化されます。
その手順はエンジン停止し、給油または燃料を取り除く際には0.8リッター/秒以内の流速で行うというもの。
これは、テストとレース本番のピットでの燃料補給のやり方を統一することで、事故を防ぐことが目的です。
まとめ
上記で紹介した2019レギュレーション内容以外に、以下の変更もアナウンスされています。
・グランプリ開幕前に行われる公式車検の廃止
・レース終了を知らせる公式合図をチェッカーライトパネルに変更。
・大きくされるリアウイングに従い、車体後方の視認性確保を行うためたミラー関連のルール変更。
・車載カメラの規約を修正。
・ヘイローのフェアリングに関する規約を修正。
この新レギュレーションが、参加チームやドライバーの公平性と観戦客が楽しめるレースにつながってほしいところ。
抜きつ抜かれつのデッドヒートが繰り広げやすいよう、再構築したレギュレーションのもとで行われる今シーズンは、白熱した激戦が繰り広げられる事が大いに期待されています。
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