目次
2019年はSUPER GTの大きな転換期が到来。クラス1規程の導入とDTMとのジョインイベントの開催です。数年前からSUPER GTとDTMの運営陣が水面下で話し合いが進み、2030年までのクラス1規定・長期予定は発表しました。いよいよ日独との対抗戦が本格化し、世界最高レベルのGTカーレースが現実となるわけです。そこでクラス1規程と何か、2019年以降のSUPER GTはどうなっていくのか説明していきましょう。

©SUPERGT.net All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
DTMとの交流戦を実施!日本のカーレース史上大きな転換期となる

DTM第4戦ノリスリンク開催時に行われた共同会見に現れたITRのゲルハルト・ベルガー会長とGTAの坂東正明代表 / ©SUPERGT.net All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
SUPER GTは、2019~2020年シーズンからGT500マシンとDTMマシンとの共通レギュレーション『クラス1(Class 1)規定』を採用することと、シリーズ戦の合間でのジョインイベントの開催を決定しました。
そして2018年10月15日(日)に、DTM最終戦が行われたホッケンハイムサーキットでSUPER GT GT500クラス車両とDTM車両3台によるデモ走行を実施。
11月11日(日)にSUPER GT最終戦が行われたツインリンクもてぎサーキットでは、クラス1規定に基づいてつくられたGT500クラス車両3台とDTM車両3台の計6台がファンの前でデモ走行披露しました。
また、SUPER GTを運営するGTA(GTアソシエイション)代表 坂東正明氏とDTMを運営するITR代表 ゲルハルト・ベルガー氏は共同記者会見を行い、GTAとITRの間で頑固たる協力体制を築き、双方がクラス1規定の統一化とジョインイベントに意欲的であることを表明。
DTMとSUPER GTのジョインイベントは世界最高峰のGTレースとなり、世界中のレースファンの注目を集めると共に、世界中のモータースポーツメディアから注目されています。
クラス1規定とは

10月14日(土)にホッケンハイムで行われたSUPER GTマシンのデモ走行 / Copyright ©SUPERGT.net All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
クラス1規定とは、SUPER GT GT500クラスとDTMで車両規定統一化を実施するためのレギュレーションであり、DTMでは2019年、SUPER GTでは2020年から導入される予定です。
パワートレインはNRE(ニッポン レース エンジン)に基づいて製作される2リッター直列4気筒ターボエンジンに統一され、GT500マシンは既に同等のエンジンが搭載されていますが、DTMマシンはV型8気筒エンジンだったため、コンストラクターはイチからエンジンを開発することになります。
また、現在のGT500マシンのエンジンは最高出力600馬力台後半とされており、DTMマシンは現状で500馬力程度といわれるため、さらなるパワーを手に入れGT500マシンと争うことになります。
ちなみに、欧州自動車メーカーが販売する乗用車でみると、ダウンサイジングターボ化されたエンジンがシェアを伸ばし、クラス1規定に基づいて作られたエンジンは市販車に十分フィードバックできるノウハウを得ることができる仕様となっており、実際にGT500マシンのエンジンの熱効率は40~45%を優に超え、クラス1で得た技術は市販車エンジンをより高性能へ導くでしょう。
そして、フレームはGT500マシンとDTMマシンが共通のカーボンモノコックを使用する事が決定。
エアロパーツに関しては、現在GT500マシンはデザインライン下部に各メーカーオリジナルの空力パーツを開発してきました。
一方、DTMマシンはベース車両の基本的なデザインは生かしながらも、フロントフリックのカナードを縮小化。
ラテラルダクト部分のパネル/カナードの廃止や、リヤフェンダー後端下部のフリックの廃止などが定められ、クラス1規定上のエアロパーツに関してはDTMのレギュレーションを継続させ、GT500マシンは2020年からのジョインイベントでクラス1規定に沿うものに変更して参戦する予定です。
タイヤ供給はどうなる?

DTMで使用されるハンコックタイヤ / 出典:https://www.dtm.com/en/news/new-generation-hankook-tyres-2017-dtm-season-2017-03-10.html
マシンのパフォーマンス向上に大きく寄与するタイヤですが、世界的に見ればレースに参戦するマシンが共通したタイヤメーカーを使用するワンメイク化が主流となっています。
そしてDTMでもタイヤはハンコックタイヤのワンメイクでレースが行われています。
一方、SUPER GTではブリヂストン、ミシュラン、ダンロップ、ヨコハマタイヤが契約するチームにタイヤ供給し、タイヤメーカー同士の争いの場になっているのが現実。
このように、現在SUPER GTとDTMは、タイヤに関して異なったレギュレーションを持っています。
ジョインイベントではマシン性能を統一させるためにGT500マシンもハンコックタイヤを装着する方向で調整中とのことです。
また、2020年からSUPER GTにクラス1規定を導入するのであれば、GT500クラス自体も年間を通してタイヤがワンメイク化されるかもしれません。
しかし、タイヤメーカーの争いの場でもあるSUPER GT選手権が、2020年から1社のタイヤメーカーが独占するとなれば、よりイコールコンディションに近づけられたとしてもタイヤの性能競争が見れなくなり、SUPER GTの面白さがひとつ減ってしまう事に寂しさを感じるファンもいるのではないでしょうか。
クラス1規定でホンダが撤退って本当?

KEIHIN NSX-GT(塚越広大選手/小暮卓史選手) / ©SUPERGT.net All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
DTMはSUPER GTより先にクラス1規定を導入するため、来年のSUPER GTとDTMのジョインイベントは、マシン性能を均一化させるために適切なBoP(Balance of Performance|性能調整)を導入することが予定されています。
翌2020年はSUPER GTにもクラス1規定が導入されるため、BoPなしでジョインイベントを開催することになっていますが、その規定がホンダにとってはSUPER GTへの継続参戦を困難にしているのです。
なぜなら現在のSUPER GTのレギュレーション上、3メーカーのGT500マシンには共通のモノコックフレームを採用することが義務化されていますが、唯一MRのホンダ NSX-GTに関しては同じモノコックフレームを使用しながらも、性能調整を加えながらの参戦となっています。
しかし、クラス1規定では共通のモノコックフレームとFRであることが義務化されるため、現状でNSX-GTはクラス1規定をクリアできなくなるのです。
また、クラス1規定はベース車両の最低販売台数規定を100台としており、ホンダがクラス1規定に沿うホモロゲーションモデルをイチから開発するには莫大な費用が必要。
そしてホンダのモータースポーツ活動の中にはF1へのエンジン供給もあるため、SUPER GTから撤退し、その分をF1に注力するのではないかとの見方もあるのです。
このことは多くの自動車メディアの間で話題となり、一部ではホンダのSUPER GTからの撤退見込みを報道。
これに対し、坂東正明氏はSUPER GT第6戦SUGOの定例記者会見の中で、2019年からホンダNSX-GTが出場不可になるというのは誤解であり、ホンダがSUPER GT GT500クラスに参戦できないという話はどこにもないと言及しました。
GTAのトップがそういうのであれば、ホンダがSUPER GTから撤退するという噂は誤報であると安心したいところですが、ホンダがクラス1規定をどうクリアするか見ものです。
とはいえGTAとITRはクラス1規定導入後もNSX-GTに対しては特別なBoPを設けることも考えられるので、2019年以降のホンダの動向からも目が離せません。
2019/2020年シーズンはどうなる

出典:https://supergt.net/news/single/17653
2019/2020年シーズンはジョインイベントを年間2戦開催することが予定されており、ドイツと日本のサーキットそれぞれ1戦ずつ行われる予定です。
開催地はまだ未定ですが、ドイツはホッケンハイム、日本は富士スピードウェイまたは鈴鹿が有力とされています。
2019年SUPER GT開催スケジュール
日程 | 開催地 | |
---|---|---|
Rd.1 | 4/13~14 | 岡山国際サーキット |
Rd.2 | 5/3~4 | 富士スピードウェイ |
Rd.3 | 5/25~26 | 鈴鹿サーキット |
Rd.4 | 6/29~30 | チャン・インターナショナル・サーキット |
Rd.5 | 8/3~4 | 富士スピードウェイ |
Rd.6 | 9/7~8 | オートポリス |
Rd.7 | 9/21~22 | スポーツランドSUGO |
ジョインイベント1 | 未定 | ホッケンハイム? |
Rd.8 | 11/9~10 | ツインリンクもてぎ |
ジョインイベント2 | 未定 | 富士スピードウェイ?または鈴鹿サーキット? |
2025年以降はジョインイベントがチャイナ・SUPER GTになる?
SUPER GTの長期計画においてクラス1規定を2030年まで適応することが予定されており、その期間の2024年まではジョインイベントを年2~3回開催。
2025年からは年間6レースを行うシリーズ戦を視野に入れてやっていくことが発表されています。
しかも、その詳細は現状の日本3メーカーとアウディ、BMWからの共通パーツで車両を作り、中国に持ち込んで年間6レースのシリーズ戦を行うことです。
アジアでの拡大計画は不透明なところが多いものの、実現すればアジア地区のモータースポーツ拡充とレベルアップが見込める一大プロジェクトになるに違いありません。
DTM | SUPER GT | |
---|---|---|
2018 | 共通エアロ採用 メルセデス・ベンツワークス撤退 |
|
2019 | クラス1規定導入 | |
BoP適用でジョインイベント開催(年間2戦) | ||
2020 | クラス1規定導入 | |
BoPなしのジョインイベントを初開催(年間2戦) | ||
2020~2024 | ジョインイベントを年2~3開催 | |
2025~ | ジョインイベントを年6戦(アジア地区での開催?) | |
2030 | クラス1規定満了、継続するかは未定 |
まとめ

Copyright ©SUPERGT.net All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
クラス1規定を導入する目的は、高い安全性、低コスト、戦闘力の均一化をすることで参戦するコンストラクターを増やし、世界トップレベルのツーリングカーレースにすることです。
そのためにはまだ解決されていない多くの問題が山積みなので、SUPER GTとDTMがクラス1で完全に統一化される2020年までの双方の動向から目が離せません。
来年行われる交流戦が成功すれば、観客はさらなる面白いレース観戦を楽しむことができ、SUPER GTやDTMが浸透していない地域でも注目されるはず!
SUPER GTとDTMに、大きなターニングポイントの到来が間近に迫っているのです。
[amazonjs asin=”B007VQIBB6″ locale=”JP” title=”KORG USB MIDIキーボード microKEY-25 マイクロキー 25鍵”]
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!