「国産車ではもう5ナンバーサイズでMTを駆使して操るFRスポーツセダンは作れないのか?」という声は1990年代後半、こぞってFF化、3ナンバー化を図った国産各社の4ドアセダンがすっかり飽きられ、ユーザーに見放された頃に最高潮へ達しました。ちょうど新型FRスポーツそのものが枯渇仕掛けていた事もあり、二重の期待を背負ったトヨタ アルテッツァが登場した1998年とは、そんな時代だったのです。

 

トヨタ アルテッツァ / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-altezza-rs200-l-edition-sxe10-1999-2001-45903-800×600.htm

 

あまりに大きすぎる期待を背負った悲劇のスポーツセダン、アルテッツァ

 

トヨタ アルテッツァ  / Photo by Aidan Cavanagh

 

「トヨタが計画しているカリーナED/コロナExiv後継車はFRスポーツセダンらしい。」という情報が飛び交い始めたのは、1990年代も半ばのことでした。

当時4ドアセダンといえば1989年の税制改正で3ナンバー車の高額な自動車税が単純な排気量ごとに改められ、国産車メーカー各社から競って3ナンバー車が登場。

さらに1980年代からのFF化の波を受けて、国産FR車が高級車や商用車を除きほぼ絶滅していた頃です。

カリーナEDをFR化したような予想イラストが出回ったり、『意外に安価でかつてのトヨタAE86カローラレビン/スプリンタートレノのような入門FRスポーツらしい』という噂など、期待は膨らみますが、内情はいささかどころではなく異なっていました。

その頃、トヨタではまだ日本で展開前だった高級車ブランド『レクサス』向けの小型高品質スポーツセダンを開発しており、安価なエントリースポーツとは真逆のコンセプトでしたが、自動車メディアの報道による過熱は激しさを増すばかり。

そのため、1998年10月に発売されたトヨタ アルテッツァに対する反応は、まことに自動車メディアらしくメーカーへ便宜を図った好意的記事を除けば、最大限好意的に解釈しても『非常に微妙』だったと言えます。

そのためもしかしてこれは、同時期にデビューした『小さな高級車』プログレのスポーツセダン版なのでは…という声もありましたが、ノーマルではともかくチューニングベースとして考えれば、ソコソコ面白いスポーツセダンとして一応は受け入れられました。

ただし、反響次第で追加されると言われていた派生モデルはシューティングブレーク版のアルテッツァジータを除いては登場せず、販売面では初期の新車効果を除けば地味に終わったと言えます。

また、2代目からは日本でもレクサス店が開業したのでレクサスISとしてモデルチェンジし、当然高級スポーツセダンとして本来のコンセプトとは全く異なるキャラクターの車として販売されて今に至る事となりました。

 

ベストバランスはAS200、獰猛なRS200はチューニング必須

 

トヨタ アルテッツァジータ / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-altezza-gita-as300-jce10w-2001-05-45910-800×600.htm

 

確かに同じ2リッターでも海外仕様レクサスISと同じ直列6気筒の1G-FE(AS200)に加え、当時のトヨタ2リッター級スポーツエンジン『3S-GE』の最終進化系に新開発の6速MTを組み合わせた『国内ユーザーの期待に応えたモデル』(RS200)も用意されてはいました。

しかし吸排気双方に可変バルブ機構を設けた『Dual VVT-i』仕様により歴代最高の210馬力を発揮した3S-GE搭載車は、特有の激しいメカノイズをうならせながら高回転まで荒々しく吹け上がるものの、シャシーやサスペンション性能とのマッチングが良いとは言えません。

また、同時期に登場した日産R34スカイラインが『ボディは力だ』というCMで売り出したのに対抗したのか、『ボディは力じゃない』というキャッチフレーズまで準備されましたが、試乗するとちょっとしたコーナリングでフロアのねじれがわかるほど。

これはサードパーティ製フロア補強パーツが多数売り出されるに違いないと思っているとまさにその通りで、3S-GEを搭載したアルテッツァRS200はボディやサスペンションの補強を大前提とした、いわばチューニングベース車となったのです。

もちろん相応のチューニングを施したRS200はFRスポーツセダンとしての魅力にあふれていましたが、ノーマル状態でのベストバランスは、160馬力の直列6気筒エンジンを搭載するAS200だったのは間違いありません。

実際、サーキット走行やドリフト走行をする訳では無い公道向けスポーツセダンとしてのアルテッツァAS200の評価は非常に高く、トヨタでも4速ATのみだったAS200へ6速MTを2000年5月に追加するなど、テコ入れはAS200に対して行われました。

また、アルテッツァジータ用には海外仕様と同じ3リッター直6の2JZ-GEを搭載。

セダンへ搭載されなかったのは残念でしたが、大型化された2代目(レクサスIS)でその願いは果たされています。

 

ワンメイクレースからスーパー耐久まで、ラリーにも参戦!

 

トヨタ アルテッツァ  / Photo by Ben

 

ノーマルに近いほど「スポーツ走行まではちょっと」となるアルテッツァでの全日本ジムカーナや全日本ダートトライアル選手権への参戦記録はありませんが、全日本ラリー2輪駆動部門では2002年に『ナプロふくしまアルテッツァwithオンタイム』がBクラスへ出場しています。

実際はあまりグラベル(未舗装路)が得意とは言えなかったようですが、海外でもラリークロスや短距離ラリーへの出場している姿が残されていました。

 

トヨタ アルテッツァ / COPYRIGHT© TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

もっとも注目されたのは初期のネッツカップでワンメイクレースが開催されていたことで、現在まで続くヴィッツのナンバーつき車両によるレースとは異なり、ナンバー無しの純然たるレーシングモディファイが施された迫力あるレース。

それまでのシビックやミラージュによるワンメイクレースとは異なり、後輪駆動特有のコーナー毎に激しく競り合うサイド バイ サイドの戦いが注目され、より上位のレースへ参戦するためのステップアップとして多数のドライバーがしのぎを削りました。

また、メジャーレースではスーパー耐久のグループN+(後にST-5クラス)で活躍し、ほぼ同仕様のアルテッツァが2003年にはニュルブルクリンク24時間レースに参戦したほか、現在まで続く『GAZOO Racingプロジェクト』初年度の2007年には2台のアルテッツァがともに完走しています。

 

トヨタ アルテッツァ Copyright  / ©  Sunpros Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

また、FRスポーツセダンらしくドリフト競技にも出場。

2015年のD1グランプリ第5戦では匂坂 晋治のアルテッツァ(YUKE’S チームオレンジ with SAGISAKA.SPL)が単走優勝するなど、チューニングによって得られる高いポテンシャルを証明しました。

 

主なスペックと中古車相場

 

トヨタ アルテッツァ / 出典:https://www.favcars.com/toyota-altezza-rs200-z-edition-sxe10-2001-05-photos-45906-800×600.htm

トヨタ SXE10 アルテッツァ RS200 1998年式

 

全長×全幅×全高(mm):4,400×1,720×1,410

ホイールベース(mm):2,670

車両重量(kg):1,340

エンジン仕様・型式:3S-GE 水冷直列4気筒DOHC16バルブDual VVT-i

総排気量(cc):1,998

最高出力:154kw(210ps)/7,600rpm

最大トルク:216N・m(22.0kgm)/6,400rpm

トランスミッション:6MT

駆動方式:FR

中古車相場:9.8万~249万円(アルテッツァジータ含む全モデル)

 

まとめ

 

トヨタ アルテッツァ  / Photot by Aidan Cavanagh

 

アルテッツァは期待ばかりが先行した挙げ句、メディアの的外れな予想が原因で、実車が発売された時には『あまりにも期待していた姿と違ってガッカリ』という、メーカーに全く責任が無いところで評価を落としてしまった、ある意味不幸な車でした。

2代目から日本でもレクサスISとして販売して以降もブランド浸透に苦労していくこととなりますが、『AE86の再来となるFRスポーツのエントリーモデル』に対する渇望が満たされるには、2012年のトヨタ 86/スバル BRZ発売を待たねばなりません。

アルテッツァ自体は発売初期を除けばAS200の方が新車購入ユーザーから高評価という状況でしたが、安価な中古車が出回るようになってようやく、RS200もATからMTへの載せ換えが不要な数少ないFRチューニングベースとして真価を発揮するようになっています。

 

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