国内トップカテゴリーのスーパーフォーミュラ。2019年シーズン最大のトピックスは、新型マシンSF19が投入されることです。SF19は去年まで採用されていたSF14からダウンフォースの強化を果たし、レース中でのオーバーテイクが容易になるよう設計されました。オフシーズンのテストでも、昨年を上回るタイムを記録し、SF19の戦闘力は開幕間近な昨今、徐々に明らかになっています。

出典:https://superformula.net/sf2/headline/11893

 

2019年シーズンからダラーラ社製SF19を投入!SF14からパーツ流用も可能

SE19 / 出典:https://superformula.net/sf2/sf19photo_halo

 

2019年シーズンからスーパーフォーミュラに投入される新型車両『SF19』が2018年7月4、5日に富士スピードウェイで行われたシェイクダウン走行で、メディアに国内初公開されました。

スーパーフォーミュラは車両がレギュレーションで統一されており、約5年周期でニューモデルがデビュー。

今回も例に漏れず、2014年以来の新型投入となります。

車両は今まで使用されていたSF14に続き、ダラーラオートモービル(以下:ダラーラ)が開発を担当。

SF14のコンセプトである『クリック&ライト』を継承した上で、全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営する『株式会社日本レースプロモーション(JRP)』の倉下明社長の意思を汲み、製造されています。

また、シリーズに年間参戦するうえでのコスト高騰を抑えるために、モノコックやアフターパーツ、前後ウイングなどカーボンパーツ以外はSF14のものをキャリーオーバーできるように設計されました。

具体的にはエンジン、ギアボックス、ブレーキおよびアップライト以外の足回りパーツはSF14のものを流用可能で、昨シーズン使用していたマシンも無駄にすることなく活用できます。

SF14 / 出典:http://superformula.net/sf/news/2014/201401/0112fsw.shtml

 

SF19の概要

SF19 / 出典:https://superformula.net/sf2/sf19photo_halo

SF19とSF14のマシン寸法を比較すると、全長が35mm、全幅が10mm短く、ホイールベースが60mm短くなったことで、全体的に引き締まってコンパクトになり、重量はSF14と最低重量はかわらないものの、マシン自体が軽量化され、F1マシンと比べても80kg軽くなっています。

倉下社長はダラーラへ、よりオーバーテイクのしやすいマシンを開発することを要望し、接近時のダウンフォースの抜けを防ぐことに注力。

 

出典:https://superformula.net/sf2/headline/10231

フロントウイングはF1の最新トレンドであるSF14より大型化されたV型デザインを採用し、乱気流に影響されやすいウイングへの依存率を下げてフロア下面でダウンフォースを多く得られるように設計されています。

また、フロントウイングに装着されるフラップを1枚から2枚にし、通過する空気量を多くして効率よくダウンフォースを得られるように設計され、さらに増えたダウンフォースに対応するためにフロントタイヤは250から270に拡大化されています。

 

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車体の横側面に存在するサイドポンツーン前後のレイアウトも変更され、ポッドウイングというパーツが追加されて、エンジンカウルにかけての空気の流れを整える役割を担っています。

さらにサイドポンツーンの下部にアンダーフロアフィンという空力パーツが追加され、アンダーフロアに取り入れる空気を増やして、床下でより多くのダウンフォースを発生。

リアウイングの形状は側面から見ると平行四辺形になり、上部が後斜めに伸びた翼端板によって翼を通る気流と内巻き渦を整える効果を強化する試みが成され、F1マシンやLMPマシンのようにリアウイングの上端にLEDを配置し、後方からの視認性を向上させています。

 


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コクピットは安全性能を向上させるために、去年からF1に採用されている『ヘイロー(HALO)』の装着が可能となり、コクピットのサイド、ショルダー部の寸法も高くなっています。

また、ステアリングホイールはコスワーズ性のデザインとなり、スイッチの配置などが変更されました。

 

OTSを100秒時間制に変更!エンジンパフォーマンスは2基から1基に

SF19

出典:https://superformula.net/sf2/

エンジンに関する2019年シーズンのレギュレーションは、2018年シーズンのエンジンパフォーマンスを維持しながら、年間使用基数を2基から1基に減らしています。

また、OTS(オーバーテイクシステム)は今まで20秒×5回から、上限100秒の時間制になり、100秒という時間枠なら制限なく細かく複数回に使い分けることもでき、100秒間継続して一気に使うことも可能です。

さらにOTSの使用可能時間は、コクピット上のランプによりライバルからも把握できるようになり、残り100~20秒で緑、20秒以下で赤、使い切った場合はランプがスロー点滅し、OTS使用時はリアコーションランプが連動して点滅します。

そんなOTSを作動させれば、制限されている燃料流量よりもさらに5パーセント多くの燃料が流れるので、20~30馬力の出力が向上。

ライバルを追い抜くのが容易になります。

また、スーパーフォーミュラのエンジンは『NRE(Nippon Race Engine)』と呼ばれる2.0リッター直列4気筒ターボが搭載されており、現在はトヨタとホンダによって供給。

スーパーフォーミュラ独自の燃料制限製が導入されていて、エンジン回転数が毎分8,000回転以上で1時間あたりのエンジン内に送り込まれる燃料の量が約140リットルに決められているため、燃料流量を制限するためにリストリクターと呼ばれるパーツを搭載。

メーカーは制限された燃料でよりパワーを発揮するために、燃料効率の良いエンジンを開発しなければならず、NREの開発はメーカー間の激しい技術競争になっています。

 

エンジン主要諸元

2014年シーズン NRE / 出典:https://superformula.net/sf/race/2014/1401/preview.shtml?3

メーカー/型式 本田技研工業株式会社製/HR-417E
トヨタ自動車株式会社製/RI4A
排気量 2,000cc
仕様 直列4気筒、ダイレクトインジェクション
過給器 ターボチャージャー(ギャレット製)
最低重量 85kg
出力 405kw(550ps)以上
出力制限方法 燃料リストリクターによる燃料流量制限

シャシー・タイヤ主要諸元

SF19
全長×全幅×全高(mm) 5,233×1,900×900
ホイールベース(mm) 3,115
乾燥車重(kg) 660以上(ドライバー込み)
ブレーキキャリパー ブレンド製6ポット・ブレンボ製カーボンディスク
トランスミッション リカルド製6速シーケンシャル パドルシフト
タイヤ 横浜ゴム製 270/620R13
横浜ゴム製 360/620R13

2019年シーズンの日程&参戦ドライバー

出典:https://superformula.net/sf2/

ラウンド 日程 サーキット
第1戦 4月20日(土)・21日(日) 鈴鹿サーキット(三重)
第2戦 5月18日(土)・19日(日) オートポリス(大分)
第3戦 6月22日(土)・23日(日) スポーツランドSUGO(宮城)
第4戦 7月13日(土)・14日(日) 富士スピードウェイ(静岡)
第5戦 8月17日(土)・18日(日) ツインリンクもてぎ(栃木)
第6戦 9月28日(土)・29日(日) 岡山国際サーキット(岡山)
第7戦 10月26日(土)・27日(日) 鈴鹿サーキット(第18回JAFグランプリ)
ゼッケン ドライバー名 チーム エンジン
1 山本 尚貴(やまもと なおき) DOCOMO TEAM DANDELION RACING ホンダ
5 福住 仁嶺(ふくずみ にれい)
4 山下 健太(やました けんた) KONDO RACING トヨタ
2 国本 雄資(くにもと ゆうじ)
7 Artem Markelov(アーテム・マルケロフ) TEAM LEMANS トヨタ
8 大嶋 和也(おおしま かずや)
15 Daniel Ticktum(ダニエル・ティクトゥム) TEAM MUGEN ホンダ
16 野尻 智紀(のじり ともき)
17 Tristan Charpentier(トリスタン・シャルパンティエ) REAL RACING ホンダ
18 小林 可夢偉(こばやし かむい) carrozzeria Team KCMG トヨタ
19 関口 雄飛(せきぐち ゆうい) ITOCHU ENEX TEAM IMPUL トヨタ
20 平川 亮(ひらかわ りょう)
36 中嶋 一貴(なかじま かずき) VANTELIN TEAM TOM’S トヨタ
37 Nick Cassidy(ニック・キャシディ)
38 石浦 宏明(いしうら ひろあき) JMS P.MU/CERUMO・INGING トヨタ
39 坪井 翔(つぼい しょう)
50 Lucas Auer(ルーカス・アウアー) B-Max Racing with motopark ホンダ
51 Harrison Newey(ハリソン・ニューウェイ)
64 Alex Palou(アレックス・パロウ) TCS NAKAJIMA RACING ホンダ
65 牧野 任祐(まきの ただすけ)

まとめ

出典:https://superformula.net/sf2/

2019年からSF19での新時代に突入するにあたり、レギュレーションの改正やオーバーテイクがしやすくなった車体設計などによる新たな名勝負の予感が漂っています。

さらに、フル参戦経験をもたない1~2年目の若手選手が、全20名中7名も存在する事実にも注目です!!

これまでのSF14からSF19にチェンジするにあたり、マシンに違和感を感じるドライバーも少なくはないでしょう。

新車導入というタイミングはある意味イコールコンディションと言え、ルーキーがいきなりタイトル争いに加わっていくことも十分可能です。

SF19がスーパーフォーミュラの面白さを引き上げてくれることに期待して、まずは開幕戦を楽しみたいと思います。

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