モータースポーツの舞台でワゴン車を見かける事はあまりありません。それは、そもそもあまりメリットがない、というのがズバリの理由ですが、そんなワゴンでレースに勝とうとした勇者たちが、確かに存在したのです。今回は一度見たら忘れられない、インパクト絶大の「レーシングワゴン」をまとめてご紹介したいと思います。

 

出典:http://jalopnik.com/volvos-850-wagon-racer-was-all-sorts-of-two-wheeling-aw-1567506405

SYMS インプレッサ ツーリングワゴン(1998年 JTCC)

出典:https://www.gtplanet.net/

1998年まで開催されていた全日本ツーリングカー選手権(JTCC)。

そこに唯一ワゴンボディで参戦していたのが、この『SYMSインプレッサ』でした。

SYMSはスバルの協力会社である矢島工業(株)のパーツブランドで、インプレッサやレガシィ用のモータースポーツパーツを製造しています。

同社がワゴンでの参戦に踏み切った理由はズバリ『話題性』と言われていますが、実は、ワゴンは空力面と後方視界はセダンより有利とされていました。

また、搭載されたエンジンは1.8L自然吸気のEJ18型フラット4を、ロングストローク化し2.0Lにボアアップしたもの。

駆動系はFR化されており、車重はわずか1000kgまで絞られています。

そして1996年のSUGOラウンドにデビューを飾ったSYMSインプレッサですが、大きなキャビンゆえのボディ剛性対策や、エンジンのパワー不足、信頼性にも悩まされ、思う様な結果を残すことは出来ないまま、姿を消す事に。

 

出典:http://syms.jp/service/racing-factory/

 

しかし再び挑んだ1998年シーズンは、大型のリアウイングとフロントスポイラーを装備し、よりスパルタンな姿で登場。

ドライバーは松田秀士/セバスチャン・マルティノ が務めました。

この年のJTCCはホンダ勢の撤退でトヨタのワンメイク状態という中、唯一「トヨタ以外で、しかもワゴン」での参戦。

スポットで3戦のみ出場し、完走がやっとという結果に終わってしまいますが、このクルマで培われたボディワークやパーツのノウハウは、市販パーツへと生かされています。

 

VOLVO 850 エステート(1994年 BTCC)

出典:http://jalopnik.com/volvos-850-wagon-racer-was-all-sorts-of-two-wheeling-aw-1567506405

1994年、英国ツーリングカー選手権(BTCC)に参戦するボルボは、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)とのジョイントにより『850エステート』のレースカーを送り出します。

当時のBTCCではリアウイングの使用が禁止されており、セダンより空力面で有利というのがワゴンボディ採用の主な理由だった様です。

2.0L直列5気筒エンジンはフロントミドシップに搭載され、駆動方式は市販車と同じFFを採用。

しかしリアアクスル後方の重量がどうしてもかさむ上、ボディ剛性の面でも不利となり、5位が最高位。

翌年からは、セダンベースに変更となってしまいました。

 

出典:http://jalopnik.com/volvos-850-wagon-racer-was-all-sorts-of-two-wheeling-aw-1567506405

 

そして1995年仕様の850セダンは実に12回のポールポジション、更に6勝を挙げてマニュファクチャラーズ3位の座を手に入れ大成功を収めます。

つまりは同じシャ―シを持つエステートも、素性は充分に速いマシンだったと言える結果となりました。

この勇気ある参戦により850エステートはスポーティなイメージを手に入れ、市場では大ヒット。

その後の世界的スポーツワゴンブームの火付け役となったことも見逃せません。

 

オーリンズランサーEVO ワゴン(2007年 十勝24時間耐久レース)

 

出典:https://www.gtplanet.net/forum/threads/mitsubishi-lancer-evolution-wagon-2006.301720/

 

こちらはランサーエボリューションⅨでスーパー耐久に参戦していた『OHLINSレーシングチーム』が、2007年の十勝24時間耐久レースに持ち込んだマシンです。

もともと同チームがイベントプロモーションの一環で作ったデモカーが発端となり、「ぜひ実戦投入を」というファンの声に後押しされて実現。

ドライバーは桂 伸一/瀬在仁志/奴田原文雄/関 豊 らが務めています。

当時のスーパー耐久でクラス最強を誇ったランエボの速さは言うまでもありませんが、このマシンも不利なパッケージながら見事24時間を完走。

クラス5位という成績を収めました。

 

ホンダ シビック ツアラー(2014年 BTCC)

出典:http://www.inautonews.com/honda-yuasa-racing-civic-tourer-btcc-unveiled

 

2014年、BTCCの舞台へ20年ぶりにツーリングワゴンを持ち込んだのが『HONDA YUASA RACING』です。

そんな『シビック ツアラー』は日本未発売の欧州専用モデルで、2014年に登場し人気を博したモデル。

BTCC仕様ではシビック タイプRを思わせるエアロに身を包み、2.0Lターボエンジンを搭載して300PSを叩き出すものの、ワゴンは遅いというBTCCにおける”悪しき常識”を覆せるかに注目が集まりました。

結果的にこのマシンは、2台合わせて4つのヒートで優勝を記録。

チームランキング3位という好成績を残しています。

 

 

SUBARU LEVORG(2016年〜 BTCC)

出典:http://www.btcc.net/

2016年より、BTCCへ参戦を始めたSUBARU LEVORG (スバル レヴォーグ)。

イギリスのバンティングフォードにあるTeamBMRが開発し、4WDベースでありながらレギュレーションにより、駆動方式がFR(フロントエンジン・リアドライブ)であることが特徴です。

2017年にはアシュリー・サットンがこのレヴォーグでBTCCシリーズチャンピオンを獲得し、ポテンシャルの高さを証明してみせました。

 

まとめ

不利なパッケージングにめげず、『速いワゴン』というブランドイメージを勝ち取るためにモータースポーツの舞台に挑んだ熱いワゴンたち。いかがでしたか?

レースの世界ではボディ剛性や重さが不利に働いてしまうものの、まさに記録より記憶に残る存在と言えそうです。

最高のギャップを秘めたスポーツカーを食う激速ワゴン「市販車編」は次の機会にご紹介します!

 

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