CONTENTS
モータースポーツだけに限らず、興行の世界ではとても大事な制度であるスポンサー制度。企業や個人が広告宣伝費としてチームやイベントに出資し、マシンやサーキットに大きなロゴを掲示しています。彼ら無くしてはレースが成り立たないわけですが、その中でも珍しいのが個人スポンサー制度。今回は国内で最も人気のあるレース、SUPER GTで、GOODSMILE RACING & TeamUKYO(以下GSR)にMotorz編集部員が帯同し、個人スポンサーの皆さんに取材してきました!

©Yukio Yoshimi
なぜスポンサーが必要なのか?
そもそもスポンサーって?

グリッドウォークの瞬間。各チームのスポンサーロゴの載った旗が立ち並ぶ。/©Yukio Yoshimi
Wikipediaによると、スポンサー(英語: Sponsor)とは、団体、個人、スポーツチーム、イベント、施設、番組などに対し、広告やPRを目的に金銭を支出する団体あるいは個人、すなわち広告主である。とのこと。
ことモータースポーツでは、マシンに大きなロゴを掲げていたり、マシンの名前になっていたりするので、馴染み深い存在かと思います。
テレビでも「ご覧のスポンサーの提供でお送りしています。」というアナウンスが流れるのを、聞いた事があるのではないでしょうか。
レースでスポンサーが必要な理由

©Yukio Yoshimi
なぜスポンサーが必要なのか?それは、モータースポーツには、多額の費用がかかるからです。
レーシングカーを開発するよりも安く車両を手に入れられるFIA-GT3車両ですら、1台約5,000万円(※車両により異なります)
それに伴うメンテにかかる費用や輸送費、人件費などを考えると、チーム運営に必要なお金はとてつもなく巨大な金額となります。
そこで、自分たちの車両やチームを広告媒体とし、スポンサーを募っているのです。
これらは基本、チームの営業マンが各企業に営業を行って獲得してくるものですが、今回帯同したGSRでは、個人でもスポンサーになれる仕組みを導入しています。
それが、個人スポンサー制度です。
ファンとともに走る

ファンとチームが直接触れ合えるピットウォーク。サインももらえる貴重な時間です。/©Yukio Yoshimi
「ファンと共に走るレーシングチーム」をスローガンに掲げている初音ミク GTプロジェクト(※プロジェクト名。GSRが中心となって推進)が導入している個人スポンサー制度。
それは、マシンへのロゴ掲載という枠にとらわれず、フィギュアやチームシャツ、ブルゾンがもらえるなど、様々なコースが設けられています。
なかには、レーシングカーに名前を貼れたり、チームのパドックテントに入れるパスがもらえるなど、通常では考えられない範囲まで楽しめるコースも。

パドックに掲示されている個人スポンサーのネームリスト/©Motorz
また、個人スポンサーになるとパドックのウォールにも名前が掲載されるため、ファンとしても嬉しいだけでなく、チームの一員として確かに迎え入れられているのです。
詳しく知りたい方はコチラ
その昔はF1でもあった
小口の個人スポンサーを集めたコローニ&はっちゃんですが、結果は残念なことに…(´・ω・`)#f1jp #JapaneseGP https://t.co/s0Rh6YBSeG
— Akan-tea (@akan_cha) 2018年10月18日
ちなみに、個人スポンサーという制度自体は、過去にも何件か事例があります。
有名なところで言うと、F1を戦ったコローニというイタリアのレーシングチームが1991年に実施。
ドライバーには当時の若手ドライバーの中で有望株だった服部尚貴選手を起用し、第15戦の日本GPにて一口2万円の個人スポンサーを募っています。
実際にスポンサーとなった方の名前は、マシンのサイドポンツーン上部にびっしりと書き込まれましたが、トップチームとの性能差に苦しみ、予備予選を通過できず、決勝は走行していません。
現場のリアルな声

GSRピットウォーク名物の祭壇。ファンが有志で初音ミクグッズを飾っている/©Motorz
今回、一番近い距離からチームを見て疑問に思ったことは「ファンの人は、どう思って個人スポンサーになったのか?」ということ。
実際に、サーキットにいる皆様に話を伺ってみたところ、やはり「一緒に走れる(レースに参加できる)楽しさがある。」「ファンとチームという垣根を越えられる喜びがある。」という声が多く聞かれました。

個人スポンサーになることで、グリッドウォークの旗を持つこともできる。/©Motorz
個人スポンサーになることで、限定のグッズも手に入れることができますが、それ以上に大事なのはレースに関わるということ。
また、その思いを語る際に、みな満面の笑みだったということも印象深く、本気で心の底から「個人スポンサーであること」を楽しんでいるのを強く感じました。
その中でも、やはり長年個人スポンサーを続けている方はひときわ熱い思いを持っているようで、
「プライベートで塞ぎこんでいた時期があったんです。
どうしようもない。何もうまくいかないと思っていたころにGTを見ていたら、いつもトラブルで完走できなかったり、出走できなかったりしている一台がいて、なんだか自分とリンクしたんですよね。
それがここのチームのマシンで…。なんとか応援したいなと思って個人スポンサーを始めたんですよ。それからはもう毎年ずっと続けています。
だんだんチームが強くなっていくところを間近で見てこれたのは、本当に良かったです。」

©Yukio Yoshimi
チームに自分を投影して、一番近い距離で応援できる。
実はレースファンにとって、これが最も嬉しいことなのかもしれません。
これからのレース

©Yukio Yoshimi
GSRに帯同して感じたのは、本当にファンとチームの距離が近いということ。
ピットウォークの最中、サイン会の列が乱れ始めたら、ファンが自ら整理を始める。
ステッカーやグッズの配布なども率先して行うなど、ファンがチームメンバーとして立ち振る舞う姿が非常に多く見られました。

グリッドウォーク直前。左右に見える旗を持つのは個人スポンサーの皆さん。/©Motorz
さらに、これらは全てボランティアで行われているということに大きく驚かされます。
ピットウォークといえば、大好きな選手やチームに近づけるレースの一大イベント。
その時間を「チームがより多くのファンと安全に接する時間」として行動する。
これは、ファンが自ら広報の一部を買って出ているのと変わりありません。
チームが本当にファンを大事にしてきたからこその行動で、ファンがチームを本当に愛しているからこそのアクション。
今までのモータースポーツには無かった新しいカルチャーが、GSRというチームを通して生まれている事がひしひしと伝わります。
もしかすると、従来までの「ファンはファン。チームはチーム。」という分断した考え方は、近い将来消えてしまうのかもしれません。
まとめ

祭壇にあったブレーキローター。実際にレースで使用していた製品にサインとロゴを配したアイテム。GSR忘年会の景品だった。/©Motorz
今回はSUPER GTの人気チーム、GOODSMILE RACING & TeamUKYOの個人スポンサー制度についてご紹介させていただきました。
取材を通して感じたのは、個人スポンサーでありながらチームの一員であるという姿勢、志の高さ。
そして、スポンサーの皆さんがチームに自分を投影しているということは、GSRの4号車は名実ともに「ファンの夢を乗せて走るレーシングカー」なのだなという事。
応援の方法は十人十色ですが、もし興味があれば、個人スポンサーになってみてはいかがでしょうか。
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!