日本で最も有名なレースといっても過言ではない、SUPER GT!観客数は年々増加し、2019年第2戦は91,800人を動員!2018年の同ラウンドより5,500人も増えており、年々人気が増しています。そんなSUPER GTのGT300クラスでは、速さの違う世界中のレーシングカーが、コンマ1秒でも速く走るために、そしてレースを盛り上げるために様々な施策が盛り込まれています。今回は、そんなGT300クラスのルールBoPと、その裏にあるギモンに迫ります。

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スーパーGTとは

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ハコ車レースの国内最高峰である、スーパーGT。

1994年に始まった全日本GT選手権(※注)を前身にもち、2005年から開催されている、日本で最も人気のあるレースです。

レースはGT500とGT300という、馬力の異なる2つのクラスの混走で行われ、速度差を利用した激しいバトルが、モータースポーツファンを熱狂させています。

また、参戦するレーシングドライバーには、世界最高峰のフォーミュラカーレース、F1をはじめとした世界の舞台で戦った経歴を持つ選手も多く、非常にハイレベルな戦いが繰り広げられます。

(※注:1993年にも全日本GT選手権が開催されていますが、公式には94年となっています。)

なお、レースおよびクルマにおいて最も大事なパーツである「タイヤ」は、マルチメイクとなっており、ブリヂストン、ミシュラン、ダンロップ、ヨコハマの4社から供給され、「勝てるタイヤ」を作るために熾烈な開発競争が行われています。

今回紹介したいのは、そんなスーパーGTの中でも、馬力の小さいGT300クラスについてです。

GT300とは

スーパーGTのGT300クラスは、国産車と輸入車が入り乱れて争うため、たくさんの車種が登場し、観る者を飽きさせません。

何故多種多様なクルマたちが登場するのか?
その理由は、参戦車両のレギュレーションにあります。

GT300クラスには、FIA-GT3、JAF-GT、JAF-GT300 MCという3種類の規格の車両が参戦可能なのです。

では、それぞれの規格について、簡単に紹介していきましょう。

FIA-GT3とは

2018年のマネパ ランボルギーニウラカンGT3/ ©Motorz

FIA-GT3は、ひとことで言うと世界共通規格のレーシングカー。

自動車メーカー主体で製作したマシンで、改造は禁止なのですが、購入してそのままレースに出られるので、従来のレーシングカー開発と比較すると、かなりコストを下げられることがポイントです。

GT3車両を製作しているのは海外メーカーが多く、輸入車が多めとなりますが、近年はNSXやRC Fなど、国産車も増えています。

※販売価格やスペックなど、もっと知りたい方は以下の記事をチェック!

究極の市販レーシングマシン!世界中のレーサーが注目するFIA-GT3車両カタログ2018

JAF-GTとは

2018年仕様のスバルBRZ/©Motorz

次に、JAF-GTは量産車をベースに大幅な改造が許されたクラス。

プリウスにV8エンジンを搭載してしまうなど、市販車とは別次元のマシンに進化している点が魅力です!

現在の参加車両では、プリウスPHVやBRZが該当します。

JAF-GT300-MCとは

2018年のHoppy 86/©Motorz

最後にご紹介するJAF-GT300-MCは、市販車をベースに、共通のカーボンモノコックとエンジンを搭載したレーシングカー。

共通の仕様とすることで、FIA-GT3と同じく大幅な開発コストの削減を実現しています。

なお、市販車と駆動方式が異なることは許されないため、現在はロータスエヴォーラのMRと、トヨタ86とマークXのFRという2種類の駆動方式が存在。

上記3つの規格で作られたレーシングカーが争うため、状況によってはプリウスがスーパーカーであるランボルギーニを追い抜く……なんてシーンも見られるのがGT300クラスの面白いところです!

しかし、規格が違えば速さも当然違います。

正直、そのまま走ると勝負にならないマシンも……
そんな状況を回避するために、スーパーGTではBoPというルールを導入しているのです。

BoP -Balance of Performance- とは

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BoPとは、直訳すれば「性能調整」。
つまり、速さの異なるレーシングカーの性能を均一に近づけることで、クルマによる不公平が生まれないようにするためのレギュレーションです。

元々は、FIA-GT3車両で行われている世界戦、Blancpain GT Seriesで導入されたレギュレーションで、スーパーGTではこのルールをアレンジして適用しています。

主な内容としては、最低車両重量、エアリストリクター径、最低地上高、最大過給圧の制限。

といっても、それぞれ難しいのでかみ砕くと、クルマの運動性能を下げ(最低車両重量・最低地上高の決定)、エンジンパワーを制限する(エアリストリクター径・最大過給圧の制限)ことで、なるべく均一の性能になるように調整されているのです。

これを人間に置き換えると、オリンピックを戦う陸上選手に重りを持たせて、みな100メートルを12秒ぐらいでゴールできるようにしている。ということになります。


クルマが重くなればなるほど、コーナリング時にはより大きな慣性が働き運動性能は大きく下がる。/©Motorz

このBoPにより、予選タイム1秒差以内に10台がひしめき合うなど、ギリギリのバトルが繰り広げられているのです。

GT300クラスの魅力

2018年のプリウス。このころは駆動方式もFFからMRに変更されていた。/©Motorz

前述しましたが、やはりGT300の魅力と言えば、スーパーカーVSプリウスのような、一般的には大番狂わせに見えるシーンが見れること。

さらに台数についても、GT500の15台に対してGT300は29台と多く、コースのそこら中でバトルが起こっていることや、世界中のレーシングカーが見られることも挙げられるでしょう。

また、ドライバーについても、歴戦の名ドライバーから将来を期待される若手ドライバー、ジェントルマンドライバーなど多種多様。

参戦チームもプライベーターが多いので、厳しいルールが少なく、自由度の高い露出・演出や交流イベントが多いので、がっちりとファンの心を掴むユニークなチームが多いです。


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タイヤも3メーカーのマルチメイクなので、サーキットや天候ごとにどのメーカーが速いのか?といったところを調べてみるのも、面白いかもしれません!

挙げ始めればキリがないほどたくさんの面白さがありますので、皆さんも是非サーキットに足を運んで、実際にマシンたちを見て、触れて感じてみてくださいね!
きっともっと好きになると思います!

GT300クラスに感じる疑問

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さて、ここまでGT300クラスの簡単なルールや魅力を紹介してきましたが、どんなことでも”ギモン”はつきもの。

この疑問について、実際にレースファンや、モータースポーツに関わっていた方々に取材してみると、返ってくる答えは「本当に公平なレースになっているとは思えない。」というような回答が目立ちます。

具体的な例で言うと、BoPの精度は年々上がっていますが、性能調整自体は本来のクルマの性能を抑える「デチューン」。

せっかく速いクルマを購入したのに、極端に性能を下げられてしまって勝負できなくなってしまえば、元も子もありません。

ひとつ間違えると、オーガナイザー側で勝敗をコントロールできてしまう。ということにもなりかねないのです。


AMG GTを走らせるLEON Racingがチョイスするのはブリジストンタイヤ/©Motorz

同じAMG GTでも、GOODSMILE RACINGはヨコハマタイヤをセレクト。/©Motorz

また、BoPは車両単位で行われるため、タイヤが異なる2台に同じ調整を施しても、均一に調整したとは言い難い状況も起こりえます。

もはや、調整するぐらいであれば、それぞれの規格ごとにクラスを分けて、タイヤもワンメイクで開催したほうが面白いのかもしれません。

本当に見たいのは、マシンの足並みをそろえて「よ~いどん!」するかけっこではなく、メーカーが威信をかけて開発したマシンが、そのパフォーマンスを全て発揮して、輝いて走るレース。

この疑問は、これからのGT300クラスの課題かもしれません。

まとめ

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今回は、GT300クラスについてご紹介させていただきました。

最後に紹介した疑問点ですが、性能調整なしでレースを開催した場合、近年のF1や、93年の全日本GT選手権のように特定のメーカー・マシンだけしか勝てないワンサイドゲームになってしまうこともあります。

こうなってくると、メーカーやチームの開発費・資本力で勝敗が決まってしまうので、ファンとしてはつまらなくなってしまいます。

しかし、昔のレースでハコスカGT-Rの49連勝やR32スカイラインGT-Rの29連勝のような、無敵の姿に憧れを抱くのも事実。

皆さんは、日本で一番人気のレースが、どんな姿になっていってほしいですか?

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