全日本格式や国際格式などの公式なレースには、徒歩や自転車などでコースの下見ができるTrack Walkの時間が設けられています。それは、そのコースでの走行経験が少ないチームやライダーにとって、コースの状況を知る重要な時間なのです。
Track Walk
年間を通して行われる公式なレースシリーズでは、世界・国内共に各地に散らばるサーキットを転戦します。
ステップアップ1年目のライダーなどは、レースWEEKがそのサーキットの初走行となることも。
また、天候や経年劣化などでコースの路面状況が変わることもあるので、走行経験があったとしても、コースのコンディションを確認することは、レースを戦う上では重要です。
そのため、公式なレースのレースWEEKには、チームやライダーを対象に徒歩や自転車などでコースの下見ができるTrack Walkの時間が設定されています。
もちろん2019年7月26日~28日に開催された、『2018-2019 FIM世界耐久選手権シリーズ最終戦”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第42回大会(8耐)』でも、搬入日となる7月23日の夕方と公式テストが行われた24日の早朝に、Track Walkが行われました。
搬入日のTrack Walkに参加してみた。
レースを観戦していても、パッシングポイントなどの重要なポイントを見ることはできても、コース全体を見ることはなかなかできません。
そこで、鈴鹿8耐のレースWEEKに行われたTrack Walkで、実際にコースを歩いて一周してみました。
鈴鹿サーキットの国際レーシングコースは、全長5,821㎞(2輪)と日本で最長。
10の右コーナーと8の左コーナーで構成され、途中の立体交差を挟んで右回りと左回りが入れ替わる、世界的にも珍しい8の字形レイアウトのサーキットです。
まずは、ピットロードからコースに合流!
サーキットではピットアウト時、この白線をまたぐ事は「ホワイトラインカット」と呼ばれ、禁止されています。
レースでは、下り気味のストレートからのハードブレーキングでオーバーテイクポイントともなっている鈴鹿サーキットの1コーナーから2コーナー。
実際に歩いてみると、思った以上に急なカーブとなっている1コーナーの進入に驚きます。
また、昼間に雨が降ったので、路面に川が残っていたりと、水が乾きにくいポイントも一目瞭然です。
観客席からも見やすく、左・右・左・右とリズミカルに切り返しながら走り抜けるライダー達の姿が見られるS字コーナーも実際に歩いてみると、かなりの広さ。
ここをリズミカルに走り抜けるには、かなりのスピードが必要で、微妙なブレーキコントロールの重要性が感じられます。
ちなみに、このS字2つ目の左コーナーとなる5コーナーが、決勝の最後にジョナサン・レイが転倒したポイントで、モニターやコースを前に絶叫した方も多いのではないでしょうか。
S字最後の右コーナーは、他のコーナーのようにアウト側からイン側に向かってのカントがほとんど付いていないので、かなりフラット。
高速で走っているとアウト側に向けて逆に傾斜しているように錯覚することから、「逆バンク」と呼ばれているそうですが、全速力で走ってみても傾斜しているようには感じませんでした。
そしてダンロップコーナー。
なぜこのコーナーはダンロップコーナーと呼ばれているのか、不思議に思っている方も多いと思いますが、昔はタイヤの形をした看板「ダンロップブリッジ」が設置されていた名残だそうです。
このコーナーは観客席から見ていても、上り勾配であることが分かりますが、実際に歩いてみると思った以上に上り坂となっていて、この時点で引き返そうか少し迷ったほどでした。
1962年にドイツ人ライダー、エルンスト・デグナーが転倒したことにより、名付けられたこのコーナー。
映像などで見ているより、かなり急な2つの複合コーナーになっていて、ここで転倒するライダーが多いのも納得のレイアウトです。
写真にも写っている立体交差をきっかけに、コースが左回りに変わる重要なポイントでもあります。
110Rが思っていたより急なカーブである事にビックリ。
そこからすぐにヘアピンで、しかも右カーブからの急すぎる左コーナーなので、ここが一番操作が忙しそう。
鈴鹿サーキットにあるコーナーの中でも1.2を争う転倒ポイント、MuSASHiシケインは、2輪専用に2004年から設定されたコーナー。
ヘアピンを抜けて、スプーンに向かって加速したいはずの場所でもあるので、そう考えると狭くて難しい印象です。
この辺りからは観客席もなく、歩いているとなんだか孤独な気分になってきました。
そして、スプーンカーブに向けての緩やかなカーブ、250Rは長いの一言で、ここまでのコースレイアウトの忙しいイメージからは一変し、静かで単調な道がひたすら続きます。
そして、スプーンカーブは、ただただ広い!!
コーナー自体の広さもそうですが、イン側もアウト側もランオフエリアがかなり広くて、なんだかコース上にポツンと取り残された気分になりました。
西ストレートは想像以上に森に囲まれていて、街灯も少ないのでナイトセッションの時は全く見えていなくても不思議じゃないレベルです。
私が歩いた時間が18時ぐらいだったのですが、それでもかなりの薄暗さでした。
しかも、約1.2kmの直線。徒歩だとゴールはまだまだです。
そして、緩やかなようで結構しっかりと曲がっている130Rは、歩いていても意外にあっという間で、すぐに次の日立オートモティブシステムズシケインへの入り口が見えてきます。
130Rと日立オートモティブシステムズシケインのちょうど間ぐらいにピットロードの入り口があり、ピットインするライダーはここからピットロードへ戻るのですが、意外に狭くてびっくり。
「あ、見落としたからもう1周回らなきゃピットに帰れない……。」なんてことも有りそうなほど、入り口は目立ちませんでした。
鈴鹿サーキットのシンボルとも言える観覧車が見え、もうすぐゴールだとちょっとホッとする日立オートモティブシステムズシケインは、コースレイアウト全体としても最後の難関的ポイント。
レース中も目を離せない熱いバトルが繰り広げられるコーナーの1つですが、右・左とかなりタイトなラインに曲がっていて、この操作だけでもかなり忙しそうなコーナーで、テールトゥノーズの接戦が繰り広げられているのかと思うと、少し感動します。
そんなクイックな日立オートモティブシステムズシケインを抜けると、緩やかに下る最終コーナー!ここからホームストレートに向けて一気にアクセル全開です!
このNGKの看板の下に見える白い線、コントロールラインを通過すれば、1周です。
写真を撮りながら、私の足で休まず歩いて約1時間10分。
今年の8耐公式予選のトップタイムは、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行選手の2分5秒922。
徒歩とバイクというだけでも違うのは当たり前ですが、この道のりを世界のトップライダー達は2分5秒とか6秒でまわれてしまうのか~と、実際に歩いてみるとその凄さをさらに実感することができました。
まとめ
レースに参戦するチームやライダー達がコースを知る上で、かなり重要な時間となるTrack Walk。
実際に歩いてみると、レースに参戦していなくても多くの発見がありました。
そして、なにより驚いたのは、コース上のゼブラが職人さんの手で塗られていること。
考えてみれば、ゼブラだってメンテナンスされているのは当然なのですが、実際に塗装中の光景を目の当たりにすると、なんだかとても新鮮でした。
作業中の職人さんに聞いてみたところ、毎年2回、8耐とF1日本グランプリの前には塗り直しをするそうです。
さらに、スポンサーロゴもキレイに貼り変えられていたりと、意外な手作り感になんだか親近感を感じます。
来年は東京オリンピックの関係で、7月19日が決勝日となる鈴鹿8耐を観戦する時は、是非この約1時間10分の道のりを思い出してくださいね。
きっと、新たな面白さが見えてくると思います。
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