2019年で66回目を迎えるマカオGP。世界一難しいとも言われるこの市街地サーキットでは毎年クラッシュが多発し、完走するのも至難の業。そんなマカオGPの成り立ちや過去の優勝者の歴史、そして今年の注目ポイントなどをご紹介します。
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マカオGPとは?
マカオがポルトガル領だった1954年から始まったとされるマカオGP。
サーキット建設をするような技術や予算がなかったことから、一般道を封鎖して行われる市街地レースとして開催されました。
初開催の1954年から30年近く、フォーミュラーカーからツーリングカーまで混走する今では考えられないようなレースでした。
その後、1983年からF3の世界一決定戦を行うこととなり、そこから現在に至るまで若手の登竜門として開催されるようになりました。
また、現在は併催レースとしてWTCRやFIA GTワールドカップなど、ツーリングカーレースも行われています。
ツーリングカーの場合、車体サイズが大きく、接触上等なスタイルも相まって、毎年アクシデント多発のレースになることが多いのが特徴です。
コースの特徴
マカオのコースについて取り上げる際、よく海側と山側という表現があります。
コース図の下側、長い直線が続くのが海側と呼ばれるエリア。
ここではスリップストリーム合戦が繰り広げられ、数多くのオーバーテイクが繰り広げられてきました。
一方でコース図の上側、曲がりくねったエリアが山側。
ここは旧市街地の細くてツイスティな道が使われていて、少しのミスでクラッシュに追い込まれてしまう危険なエリアです。
マカオが若手の登竜門と言われる所以がここにあり、海側で直線速度が遅いと勝負にならないためダウンフォースを削らなければならず、必然的にコーナーの多い山側はドライバーの腕次第でラップタイムが大きく変わるという、ドライバーの能力が結果に直結するコースになっています。
だからこそ、ここで優勝したドライバーはF1をはじめとしたトップドライバーへと羽ばたいていくのです。
F1へと羽ばたいたドライバーたち
マカオGPで優勝して、F1デビューを果たしたドライバーは数多く存在します。
その中でも有名なドライバーたちをご紹介しましょう。
アイルトン・セナ
F3でのマカオGP初代優勝者は、ご存知アイルトン・セナです。
イギリスF3でチャンピオンを獲得し、その勢いを維持したままマカオGPに乗り込んだセナ。
後のチームメイトにもなるゲルハルト・ベルガーなど、強力なライバルが揃う中、予選決勝を通して他を寄せ付けない走りで圧勝。
更にセナの叩き出したコースレコードは、年々車が進化していくにも関わらず、1990年までレコードが更新されないミラクルなタイムでした。
そして翌年1984年、トールマンでF1デビューを果たしたセナは一気にF1でもトップドライバーへと成長していくのです。
ミハエル・シューマッハ
1990年のマカオGPはミハエル・シューマッハvsミカ・ハッキネンの一騎打ちとなり、マカオGPの中でも3本の指に入る名レースと言われています。
この当時はレース1とレース2の合計タイムで競われており、レース1ではハッキネンが優勝。
総合優勝のためにはレース2でハッキネンの前でフィニッシュが必須条件となったシューマッハ。
レース2ではハッキネンの追い上げを鬼神の走りでブロック。
最後にはハッキネンが追突してしまい、シューマッハはリアウイングを失ったものの、なんとか順位を守って走りきり見事総合優勝を果たしました。
シューマッハはこの翌年1991年、ジョーダンからF1デビュー。いきなり速さを見せて衝撃を与えました。
この年は、上位にミカ・サロやエディ・アーバインなど、後にF1ドライバーとして活躍する若手が数多く存在した豊作の年となったのでした。
佐藤琢磨
2001年、日本人として初めてマカオGPを制したのが、現インディカードライバーである佐藤琢磨。
2000年に挑戦した際は、予選で2位につけるものの、決勝ではリタイア。
リベンジを期した2001年、イギリスF3でも圧倒的な速さを見せてチャンピオンを獲得し勢いを持った佐藤琢磨は、マカオでも危なげなく優勝を果たしました。
実はこの時、既に翌2002年のF1デビューが決まっており、チームオーナーのエディ・ジョーダンからは参加を反対されていたものの、必ず勝つからと説得しレースに出場していました。
見事宣言通りに優勝した佐藤琢磨は、その後のF1でも速さを見せたのです。
2019年マカオGPの注目ドライバー
11月14日から開幕し17日に決勝がスタートする今年のマカオGP。
今年も多数の若手が出場するマカオGPを見る上で、注目のドライバーをご紹介しましょう。
角田裕毅
日本人唯一のエントリーとなる角田裕毅は、弱冠19歳にして今シーズンのFIA-F3をランキング9位でフィニッシュしました。
ホンダだけでなく、レッドブルの育成ドライバーでもある角田は、昨年のFIA-F4を14戦7勝でチャンピオンを獲得。
今シーズンは満を持して海外シリーズに進出することになりました。期待されていたものの、シーズン序盤は初めてのピレリタイヤの特性に苦戦し、中々上位進出することができませんでした。
しかし、タイヤに慣れてきた後半戦では、ベルギーGPのレース2で2位入賞し初表彰台を獲得すると、次戦イタリアGPのレース1でも3位表彰台、そしてレース2では初優勝を達成しました。
来年についてはまだ発表されていませんが、まずは初挑戦となる今年のマカオGPで結果を残して来年へのアピールを成功させてほしいですね。
ロバート・シュワルツマン
今シーズンのFIA-F3チャンピオンはリベンジを期して今年のマカオGPに挑戦します。
20歳のロシア人ドライバーであるシュワルツマンは、2017年にフェラーリ・ドライバー・アカデミーの一員に抜擢されると、フォーミュラールノーでランキング3位を獲得。
翌2018年には強豪プレマレーシングからヨーロッパF3にステップアップし、そこでもランキング3位。
そして、GP3とヨーロッパF3が統合された今シーズンはチャンピオン獲得と、順調に結果を残しています。
来年度のFIA-F2への参戦がほぼ決定的と言われているだけに、F3最後のレースとなる可能性の高いマカオGPで優勝という結果を狙いに来るでしょう。
ダニエル・ティクトゥム
カーリンからエントリーしているマカオGP2連覇中の20歳は、イギリス出身のドライバー。
今シーズン途中までスーパーフォーミュラーにチーム無限から参戦していたため、日本でも一定の知名度があるドライバーだと言えるでしょう。
2015年にイギリスF4で報復行為を行った過去からメンタル面に問題があると言われており、今シーズン途中でレッドブル育成から外されSFのシートを失った原因の一つとも言われています。
ただし、速さは一級線。過去誰も達成していないマカオGP3連覇を果たすことができるのか、注目です。
まとめ
難攻不落でドライバーとしてのセンスが問われることから、若手の登竜門として今でも世界中から注目されているマカオGP。
近年ではF1へステップアップした優勝ドライバーがいないのが残念ですが、それでもWECやDTMなどのドライバーとして、各地で活躍しています。
将来のトップドライバーの原石たちが激しく争うマカオGP、公式によるライブ配信もありますし、週末のご予定にレース観戦はいかがでしょうか?
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