1980年代中盤のバイクブームに登場した、ホンダMBX125F。ホンダのワークスマシンNS500で開発されたATAC機構を採用し、スムーズな加速とトルクを実現。125ccらしい軽量でスリムな車体とVT250FやMVX250Fを思わせるホンダ車らしいスタイルで、ミニバイクやスクーターが属する原付/原付二種のなかでも高い人気を誇りました。

 

© Honda Motor Co., Ltd.

 

ワークスレーサーのDNAを受け継ぐエンジンを搭載させたホンダMBX125F

 

レーサーレプリカブーム黎明期、250ccや400ccクラスを筆頭にバイクの技術が著しく向上し、毎年のように多数の新車が続々と登場していました。

国内二輪車メーカーはミドルクラスのレーサーレプリカに一挙手一投足で開発に注力していましたが、同時期に開発された小排気量クラスも劇的に速くなっていたのです。

そのため当時開発された原付(50cc)・原付二種(51~125cc)には、現在においても名車とさえれるモデルが多く存在しており、レーサーレプリカ好きであればホンダMBX125Fを覚えている方もいらっしゃると思います。

ユニークな2ストV型3気筒エンジンを採用したMVF250Fと、高回転まで一気に回る4ストエンジンを搭載したVT250Fを彷彿とさせるスタイリング。

搭載された2スト単気筒エンジンには、WGPに参戦していたGPレーサーやモトクロスレーサーで培われた2スト技術をフィードバックさせ、まるで市販レーサーのホンダRS125R-Wのような作りでした。

また、高速道路は乗れなくても保険料の安さや燃費の良さでお手軽感がありつつ、ホンダ2ストレーサーのDNAを受け継ぐ運動性能の良さを味わえたMBX125Fは、今となれば夢のようなバイクではないでしょうか。

 

ホンダMBX125Fとは

 

© Honda Motor Co., Ltd.

 

MBX125Fは、1983年にホンダが発売したスポーツバイクです。

MBXシリーズはMBX50(50cc)、MBX80インテグラ(80cc)、MBX125F(125cc)の3モデルがラインナップされ、MB50とMB80の後継モデルとして登場したため、MBX50とMBX80インテグラは発売前から知られたモデルでした。

一方で、MBX125は新設計フレームに1982年に登場したモトクロスバイクMTX125Rのエンジンを搭載した、全く新しいロードスポーツとして登場。

排気量だけでなくスタイルもそれぞれ個性的でしたが、50と80はフレームなどの部品を共有、MBX125Fのみ50と80との共有部品は少なく、MVX250FやVT250Fを思わせるスタイルにデザインされています。

さらに、MVXやVTに共通となる車名の最後につく”F”は、ホンダが提唱する”Fコンセプト”を表現。

Fコンセプトは、街乗りやツーリング、ワイディングやサーキットでのスポーツ走行まで、マルチに使える性能をもつスポーツバイクを意味し、MBX125Fが支持された要因でもありました。

そして車体設計は軽量、高剛性のセミ ダブルクレードル型フレームに124cc 水冷2ストローク単気筒ケースリードバルブ式のエンジンを搭載。

ホイールはMVX250FとVT250Fで装備されたブーメラン型スポークで、サイズはフロント16インチ/リア18インチホイールでした。

また、ホンダ独自のプロリンク式リアサスペンションを採用するなど当時のホンダ最先端技術が詰め込まれています。

 

エンジンにはホンダワークスマシンNS500のノウハウを反映させたATACが採用

 

1982年 ホンダ NS500

1982年 NS500 / © Honda Motor Co., Ltd.

 

MBX125Fに搭載されるエンジンは、ATAC機構と呼ばれるテクノロジーが備わっています。

これは自動調整トルク増幅排気システムとも呼ばれ、ホンダがロードレース世界選手権500ccクラスに送り込んだワークスマシン ホンダNS500で開発が進められたワークスマシン直系のテクノロジーです。

そんなATAC機構の原理は以下のように説明されています。

エンジン回転数を電気的に検知して、ソレノイドが反応。

リンケージを介入させて、サブ・チャンバーに連結したバルブの開閉を行ないます。

低回転時にはバルブが開いており、脈動圧力波はサブ・チャンバーへと導かれますが、高回転時にはバルブが閉じて主排気系だけが機能します。
引用:https://www.honda.co.jp/factbook/motor/NS250/19840400/003.html

簡単に言うとサブチャンバーとATAC用のバルブを設けることでエンジン回転数に合わせて適当な排気管容量を確保でき、排気効率をアップさせるのがATACの目的です。

さらに『ベンチュリー型排気チャンバー』と呼ばれるチャンバーも搭載。

ベンチュリーとは流体の流れを絞り、流速を増加させて低速部にくらべて低い圧力を発生させる機構のことで、MBX125Fのチャンバー内は膨張室手前でパイプ内の断面積が縮小されています。

かなり複雑な排気システムですが、これで低回転域でもトルクを増幅させて扱いやすいパワー特性を目指しました。

しかし、MBX125Fユーザーのレビューを見ると低速トルクは全くないという意見もチラホラ。

やはり小排気量の2ストエンジンで低回転のトルクを求めるのは、ATAC機構を搭載したとはいえ困難だったのかもしれません。

 

ホンダの力作だったが、ライバルだったRZ125に速さ劣る結果に

 

1982年式 ヤマハRZ125 / 出典:http://rd350lc.net/STORY125jp.htm

 

ホンダが手塩をかけ開発したMBX125Fですが、MBX125Fでレースに出場するライダーも若干数でした。

なぜなら、そんなMBX125Fが生産されていた時代は、125cc公道用市販車が出場できるプロダクション125ccクラスではライバルのヤマハ RZ125の速さが光っていたのです。

また、フロント16インチはMBX125Fのみだったので、ハイグリップタイヤが売られていないなど、レースではかなり不利な状況。

MBX125F以外にカワサキAR125も出場していましたが、開催されるほとんどのレースでRZ125が優勝を飾り、いつの間にかプロダクション125ccクラスはRZ125のワンメイク状態になってしまいます。

そのため、サーキットでパフォーマンスを発揮できなかったことでMBX125Fがマイナー車というイメージをたどることになりました。

 

ホンダMBX125Fのスペック

 

© Honda Motor Co., Ltd.

 

1983年 ホンダMBX125F
全長×全幅×全高(mm) 1,965×700×1,110
軸距(mm) 1,305
乾燥重量(kg) 109
乗車定員(人) 2
エンジン種類 水冷2ストローク単気筒
排気量(cc) 124
内径×行程(mm) 56.0×50.6
圧縮比 7.5
最高出力(kW[PS]/rpm) 16[22]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 17.6[1.8]/8,500
トランスミッション 6速
タンク容量(ℓ) 13
タイヤサイズ 80/100-16
90/90-18
価格(円) 279,000

 

まとめ

 

 

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MBX125Fの開発コンセプトやデザインは素晴らしかったのですが、時代はスペック値の高さや峠、サーキットの速さを求めていたためMBX125Fは日の目を見ずにわずか1年で生産終了となりました。

ホンダは2ストの開発で出遅れ、ヤマハRZシリーズという2ストの絶対王者が存在していたので、あの手この手で起死回生を狙ったモデルを発売しました。

そこで登場したMBX125FやMVX250F、NS400Fなどは、ライバルと同価格帯に抑えながらも高価なパーツや複雑でコストのかかる設計が成されていたので、ほとんどが採算度外視のモデルだったのでしょう。

速い2ストロークを作ろうとするホンダの努力は、MBX125Fを見ればひしひしと感じられると思います。

 

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