ホンダのフラグシップモデルであるゴールドウイング。その祖先にあたるモデルがGL1000でした。輸出専用モデルとして登場した、どっしりとした水平対向4気筒エンジンは、広大なアメリカ大陸を走り抜けるのに好都合なツアラーバイクです。そんなGL1000について振り返えります。
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ホンダ・GL1000ゴールドウイングとは
ホンダ GL1000ゴールドウイングは、1974年に発表された北米向けの輸出専用モデルで、水平対向4気筒エンジンを搭載。
冷却方式は水冷式で、排気量1,000cc以上など、ホンダ史上初の試みが多くなされた大型バイクでした。
1974年9月にラスベガスで開催されたホンダディーラーミーティングで公開され、製造されたのは埼玉製作所狭山工場。
そして1975年に、米国と欧州で販売が開始されました。
現在のゴールドウイングは数日をかけのロングツーリングを見据え、大型フェアリングやパニアケースなどが搭載されていますが、初代モデルのGL1000はネイキッドモデルで、フェアリング・サイドバックやステレオシステムが搭載されたのは2代目のGL1100からでした。
幻の6気筒マシン・プロトタイプM1
GL1000が登場する前の、1972年にプロトタイプ『M1』が開発されており、このプロジェクトを率いたのは、後にHRC初代社長やホンダ副社長に就任した入交昭一郎氏でした。
彼らはM1に1,470cc水平対向6気筒エンジンを搭載し、シャフトドライブやミッション、リアまわりはBMWから流用します。
CB750フォアの倍もある排気量の、ポルシェ911と同じボクサー6気筒エンジンをバイクに積むなんて、かなり思い切った発想でしたが、出来上がったM1は、最高出力80PS/6,000rpm、最高速度220km/hを目指して設計されたもの。
CB750フォアとは異なり、下からモリモリと湧き出てくるトルクとエンジンの振動を感じさせない滑らかな乗り心地は、試乗した本田宗一郎氏も納得するほどで、どのバイクにもない持ち味でした。
しかし、エンジンの延長線上にギアボックスを置いたことで、ホイールベースが極端に長くなってしまい、窮屈なライディングポジションになることが問題視され、M1は市販化されない事に。
それでも、M1で培った技術はGL1000や後に6気筒エンジンとなるGL1500にフィードバックされることになります。
プロジェクト371始動!キング・オブ・モーターサイクル・ホンダ・GL1000誕生
CB750フォアが大成功をおさめても、常識に囚われず1からバイクを生み出すことを使命とされたホンダの開発陣は、M1の開発では実現できなかった、水平対向型エンジンを変えることはなく、6気筒から4気筒へと変更して開発を進めます。
コードネームは、『プロジェクト371』と名付けられ、CB750フォアの開発にも携わった野末俊夫氏がリーダーとなり、開発がすすめられました。
そんなGL1000のエンジンは、シリンダーブロックとクランクケースが一体化され、トランスミッションはクランクケースの下に配置したことでホイールベースが長くならないように設計されています。
そしてガソリンタンクはシートの下に配置され、本来のタンク部分には中央に小物ケース、左右に電装、冷却水のリザーバータンクなどを設置。低い重心と水平対向エンジンのコンパクトさが相まって、高速クルーズでの高い安定性はもちろん、ライダーに疲れを与えない静粛性と滑らかな加速を実現しました。
さらに燃費は17.9km/リッター(カタログスペック)を実現。
これらはハーレーやBMW、モトグッチなど、それまでのクルーザーバイクにはなかった性能で、GL1000は世界中へ一気に広まったのです。
ちなみに、当時のBMW R90が3,395ドル、モトグッチ850Tが2,699ドルで、ハーレーダビッドソン エレクトラグレイルは3,555ドルだったため、このあたりのクルーザーモデルの相場に合わせてGL1000は2,985ドルとされました。
しかし、国産車のライバルとされたカワサキZ1が2,475ドルと約500ドルも安く、さらに高性能を売りにしたカワサキZシリーズがデビューしたことにより、人気は低迷。
思ったほどのセールスを記録することは、ありませんでした。
それでも、GL1000は世界中から高い評価を得て、ゴールドウイングがバージョンアップするにつれ、北米のクルーザーバイク市場で『キング・オブ・モーターサイクル』といわれ、確固たる地位を築いたのです。
カスタムベースとして注目を集めるGL1000
#Honda GL1000 Gold Wing #Classic #Motorcycle pic.twitter.com/jBAnuYC1HI
— METEORO (@Mecteoro) 2018年10月15日
GL1000は逆輸入車として、ごくわずかしか日本に入ることはありませんでした。
そのため、現在の中古車相場では激レア車です。
しかし、日本だけでなく海外でも相当な希少車として中古車市場では高額で取引されており、1万ドル以上(約107万円)のタグがついている車体も珍しくはありません。
その要因のひとつが、カスタムベースとしても高い人気を得ていること。
水平対向4気筒という強烈なインパクトをもったモデルだけに、唯一無二の存在となるカスタム車のベースとして最適で、実際に有名なカスタムビルダーが続々とGL1000カスタムを製作しています。
また、カスタムの方向性はカフェレーサーやボバー、トラッカースタイルなど多岐にわたり、出来上がったカスタム車を見ると、確かにGL1000でしか出せないオーラを放ち、多くのカスタム車好きを魅了させています。
そうなると、これからもGL1000の中古車は、世界的にどんどん値上がりしていくことでしょう。
ホンダ・GL1000ゴールドウイングのスペック
1975年式 ホンダ・GL1000 ゴールドウイング | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,305×875×1,225 | |
軸距(mm) | 1,545 | |
シート高(mm) | 810 | |
車両重量(kg) | 273 | |
エンジン種類 | 水平対向4気筒SOHC2バルブ | |
総排気量(cm³) | 999 | |
ボア×ストローク(mm) | 72.0×61.4 | |
圧縮比 | 9.2:1 | |
最高出力(kw[PS]/rpm) | 56.9[78]/7,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 83[8.46]/5,500 | |
変速機形式 | 5速 | |
タンク容量(ℓ) | 19 | |
タイヤサイズ | 前 | 3.50 – 19 |
後 | 4.50 – 17 |
まとめ
クルーザーバイク市場は、BMWやハーレーなどの老舗メーカーがリードしていますが、ゴールドウイングに関してはホンダでなければ生み出せない史上最高のビッグクルーザーバイクだと思います。
ゴールドウイングがアップデートされる際は、毎回最新の技術が詰め込まれ、我々を驚かせてくれますが、元祖となるGL1000の存在も頭の片隅に置いておいて頂ければ幸いです。
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