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国産メーカーが送り出したバイクの中で、名車?または迷車?それともマイナー車?のどれに分類すればいいのか、迷うバイクはいくつかあります。スズキ RF900Rもそんな1台です。
ナナハン縛りが解けて登場したスズキ・RF900R

Photo by Ayr Classic Motorcycle Club
1990年代前半、アンダー400ccクラスにレプリカバイクブームの落ち着きが見られ、代わりにカワサキ ゼファーなど、ネイキッドバイクのブームが到来していました。
国内販売モデルは、排気量の上限を750ccとした自主規制が1990年に解除され、ナナハンオーバーのモデルが続々と登場。
スズキ VX800が、初めて750ccを超えた国内正規販売モデルでした。
そして1994年にはスズキ GSX-R1100やGSX1100Sカタナ、1995年にはGSF1200といったモデルの国内仕様が登場するなど、スズキからナナハンオーバーモデルが国内正規販売車として、続々と登場したのです。
その後、ホンダが発売したCBR900RRファイヤーブレードは、ナナハンオーバーモデルに新たな風を吹かせ、大型バイクに多彩なジャンルが生み出され、性能も格段に向上していきます。
そんな中で登場したのが、スズキ・RF900Rでした。
しかし、このRF900Rも大型バイクブームの波にのるかと思いきや、大きな注目を浴びることなく、いつの間にか生産終了になってしまった1台でした。
スズキ・RF900Rとは

出典:https://motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rf900r%2094.htm
スズキ RF900Rとは、1994~1999年まで生産された排気量900ccの大型バイクです。
また、RF900R以外に400ccのRF400Rと600ccのRF600Rも販売され、RF400Rは国内正規販売のみ、RF600Rは海外輸出仕様のみの設定でした。
そしてRF900Rにも、国内仕様と輸入仕様が存在し、最高出力は国内仕様が89PSだったのに対し、輸出仕様は135PSを発揮し、300km/hスケールのメーターが装着されていました。
さらに、当時の為替相場が1ドルに対し80円を切ることもあったので、国内仕様より逆輸入車のほうが安く購入できたことから、並行輸入モデルの方が売れており、RF900Rの国内仕様車は当時からレア車的存在でした。
スズキがRF900Rを登場させた理由は

ホンダ・CBR900RRファイヤーブレード / 出典:https://bikeswiki.com/Honda_CBR900RR

カワサキ・ZX-9R / 出典:https://bikeswiki.com/Kawasaki_ZX-9R

ヤマハ・FZR1000 /出典:https://bikeswiki.com/Yamaha_FZR1000
1990年代に入ってから、CBR900RRファイヤーブレード以外にも、カワサキ ZX-9R、ヤマハ FZR1000など751ccから1,000ccまでのフルカウルモデルが各メーカーから出揃います。
フルカウルスポーツモデルは、サーキットをガンガンに攻めて走ることが可能で、なおかつワイディングや高速クルーズも軽くこなせることから注目が集まるようになっていきました。
スズキもそれに続こうと、GSX-R750とGSX-R1100の間を埋めるべく、RF900Rを登場させたのです。
ちなみに、弟分のRF400RとRF600Rの方が1年早く登場しており、RF900Rは400と600と共通の車体に900ccのエンジンを搭載させ、クラブバーの有無、マフラーの大きさ、シートカウル側面のダクトの有無ぐらいしか違いがなかったため、モデル名のロゴを確認しない限り、3モデルを見分けることは困難でした。
エンジン・フレームは完全新設計
RF900Rのエンジンは、GSX-R1100をスケールダウンさせたものと説明されることが多々あります。
しかし、確かにいくつか共通部品を用いてはいますが、RF900Rのエンジンは完全専用設計でした。
シリンダーヘッドはGSXシリーズとは異なり、吸気ポート入口は前方19°の角度がついたストレート形状で、エアボックスは6リットルも大きくなって、上から下へキャブレターを通り混合気がよりスムーズに入るよう設計されています。
フレームは、一体プレス成型で剛性を大きくしたスチール製ツインスパーフレームを採用したことで、フレーム単体で10%の軽量化を果たしますが、シートレールの取り外しは不可。
初期型のボディーカラーが赤だったときは、フレームまでも赤色に塗られていたため、シートカウルやタンクまでの一体感がどこか新鮮な感覚でした。
高速ツアラーバイク?それともスポーツバイク?
RF900Rはツアラーバイクなのか、それともスポーツバイクなのか、区別しがたいモデルです。
主にはビッグツアラーモデルのように言われますが、跨ってみるとステップ位置は高く、セパレートハンドルも角度がついて思ったほど高くもありません。
しかもツアラーバイクには装着してほしいセンタースタンドはなく、レーサーレプリカ並みにハンドルの切れ角が少なかったのもツアラーバイクとしては難点。
それでも、大きなフロントカウルは高速クルーズ時に風を十分に跳ね除け、ライダーへの負担を軽減してくました。
そのため、CBR900RRやZX-9Rと同クラスであれば、スポーツ走行メインだけどツーリングもこなせるバイクですが、RF900Rはツーリング向けだけど、乗ってみると意外にスポーツバイクだったのです。
強烈なインパクトがあったテスタロッサ風のサイドスリット

フェラーリ・テスタロッサ / Photo by Adam Smith
RF900Rで最もインパクトがあったのが、サイドカウルに入ったスリットです。
一見するとフェラーリ テスタロッサが頭をよぎり、スズキとフェラーリがデザインで業務提供を結んだのかと思ってしまったほど。
これが海外では評価されず、一部ではデザインの盗用ではないかと批難なれることもありました。
勿論そんなことはなく、RFシリーズのデザインはテスタロッサではなく魚のエイがモチーフになっており、RFシリーズのサブネームには『スティングレイ』が使われていたとかいなかったとか、曖昧な説が残っています。
そう言われてみれば、エイにも見えるような気もしますが、スズキのスティングレイといえば2007年2月に発売された軽自動車『ワゴンRスティングレイ』も存在していますから、スティングレイ構想は2輪車ではなく4輪車に持ち越された……というのは少しこじ付けが苦しいでしょうか。
ともかく、RFシリーズ3モデルは一度もモデルチェンジされることなく、1999年で生産終了となり、RFシリーズを流用した後継モデルさえも開発されることはありませんでした。
スペック

出典:https://bikeswiki.com/Suzuki_RF900
1998年式 スズキ・RF900R | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,130×730×1,165 | |
軸間距離(mm) | 1,440 | |
シート高(mm) | 805 | |
乾燥車両重量(kg) | 203 | |
エンジン種類 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ | |
総排気量(cm³) | 937 | |
ボア×ストローク(mm) | 73.0×56.0 | |
圧縮比 | 11.3:1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 99[135]/10,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 100[10.2]/9,000 | |
変速機形式 | 5速 | |
タンク容量(ℓ) | 21 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17 |
後 | 170/60ZR17 |
まとめ
RF900Rは、ツアラーバイクもしくはスーパースポーツのどちらになるかといわれると、結論は難しく、程よくツアラーバイクで、程よくスーパースポーツなバイクであり、何かに秀でたこともありません。
どちら付かずがRF900Rらしさであり、良いとこであったり、悪いところであったりします。
その立ち位置に共感してくれる人が少なかったせいで、マイナー車というレッテルがこびりついたのかもしれません。
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