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耐久レースシーンで無敵艦隊とよばれたホンダRCBの血統を受け継ぐCB1100R。登場後も出場レースで勝利を重ね、ホンダCBシリーズのレベルを向上させたモデルとしても語り継がれる伝説のバイクです。ホンダがレース参戦のために発売したホモロゲーションモデルの中ではかなり古く、今となっては実際に乗って楽しむバイクというよりコレクションとして所有しているオーナーがほとんどで、かなり希少なモデルとなっています。

出典:https://www.throttlestop.com/Cycle.php?a=1983-honda-cb1100r
CBシリーズの中で強烈なインパクトだったホンダCB1100R

ホンダCB1100R / 出典:https://classic-motorbikes.net/honda-cb1100r/
ホンダはレースに出場するためのレギュレーション規定をクリアするために、いくつかのホモロゲーションモデルを販売していきました。
その中の1台であるホンダCB1100Rは、歴代ホモロゲーションモデルの中で最もCBシリーズのレベルアップに貢献したバイクかもしれません。
1980年代初頭のCBシリーズといえば、大型バイクではCB750FやCB900F、中型であればCBX400Fなど印象的なモデルが続々登場していましたが、その中で強烈なインパクトを放っていたのがCB1100Rでした。
そのデザインやエンジン性能を知れば、CB1100Rがどれほど特別なモデルだったか、理解して頂けると思います。
ホンダCB1100Rとは

ホンダRC1000 / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.
CB1100Rはかつてホンダが生産・販売していた大型バイクです。
CB1100Rが登場する前、ヨーロッパを中心とした耐久ロードレース選手権ではホンダワークスマシンRCBやRC1000が圧倒的な速さで連戦連勝をおさめていました。
一方で市販車を改造したマシンで争われるプロダクションレースでは、レギュレーションの中に排気量制限がなかったためCBシリーズで最上級モデルとなるCB900Fではライバルに勝つことが難しく、ホンダはプロダクションレースでも勝てるバイクを目指してレギュレーションクリアを念頭に置いたホモロゲーションモデルの開発に着手。
そうして登場したのがホンダCB1100Rでした。
CB900Fをベースに排気量を1,062ccまでアップし、ART製鍛造ピストンや強化プライマリーチェーン、さらに容量26ℓのアルミタンクやFRP製カウリング、そして大容量オイルクーラーやシングルシートなどを搭載。
限定生産のホモロゲーションモデルだったため、ライン生産ではなく一台一台組み立てる方式で生産されました。
ホンダCB1100Rの開発エピソード

ホンダCB900F / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.
CB1100Rは公道用市販車とはいえ、開発はレーサーバイクとほぼ同じ状態で進められました。
そのため、開発に携わったのはホンダ本社の開発陣だけでなく、ホンダの耐久レーシングチーム『HEAT(ホンダ エンデュランス レーシングチーム)』やホンダ社内レーシングチーム『ブルーヘルメット』のメンバーも招集。
まさにレース必勝態勢ともいえるメンバーが、CB1100Rを作り出したのです。
開発方針は『市販車のままの状態で耐久レースに勝てること』、『生産コストはCB900Fの1.7倍以下』とされ、フランスで行われるボルダルジャン12時間耐久レースへの出場を目標に掲げました。
しかし、CB1100R開発開始から8か月というあまりにも短すぎる開発期間しかなかったため、ボルダルジャン出場には間に合わせず、約1か月後の1980年10月19日にオーストラリアで開催されたカストロール6時間耐久レースに出場。

CB1100RB1/ 出典:http://www.motogallur.com/cb1100rb.php
しかも、カウル製作が間に合っていなかったため、一番最初に登場したCB1100Rはネイキッドモデルの『CB1100RB1』でした。
それでもCB1100RB1は、カストロール6時間でデビューウィンを飾ります。
とはいえこれは、連戦連勝だったRCB1000/RC1000の公道仕様であれば、当然の結果だったのかもしれまん。
そんなカウルレスのCB1100RB1は、カストロール6時間出場のホモロゲーションに適合させるために急遽作られ、オーストラリア輸出仕様で500台が出荷されました。
そして、少し遅れて1981年式ホンダCBX-Bのアッパーカウルが装着されたCB1100RB2が登場。
しかし、完成度に不満をもっていたホンダ開発陣は、早々とモデルチェンジしCB1100RCへと進化させるのです。
そして1982年に登場したCB1100RCはフルカウル化され、カウル素材に量産車初のカーボンを採用。
シートカウルはタンデムを可能にするために、カバータイプのものに変更されています。
また、フロントホイールを19から18インチへと変更。
フロントフォーク直系を37から39mm、フロントブレーキディスクをベンチレーテッドディスクにするなど改良され、エンジンも進化したことで最高出力120馬力、最高速度245km/hを達成しました。
その後1983年にはCB1100RDとなり、耐久レースのレギュレーションに適応させるため、カウル先端をアクスルシャフトより後方に装着してフォークレッグの横で左右とも70mmずつカット。
その他、フロントサスを可変ダンパーに変更し、リアサスにアルミリザーバータンクを取り付け冷却力を向上させました。
そしてホモロゲーションモデルとして開発されたCB1100Rに取り付けられるパーツは、ほとんどがレースに勝つための高額なものが採用されたため、車体価格はなんと250万円!
ホンダ歴代レーサーホモロゲーションモデルでみれば、VFR750R(RC30)が148万円、RVF750(RC45)が200万円だったため、1980年代前半に販売されたことも考慮すれば相当な高額設定となっています。
ホンダCBR1100Rのスペック
1981年・CB1100R RB | 1982年・CB1100R RC | 1983年・CB1100R RD | ||
---|---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,215×770×1,340 | 2,200×770×1,280 | 2,200×770×1,280 | |
軸距(mm) | 1,490 | 1,490 | 1,490 | |
シート高(mm) | 795 | 795 | 795 | |
乾燥重量(kg) | 235 | 233 | 233 | |
乗車定員(人) | 1 | 2 | 2 | |
エンジン種類 | 空冷4ストローク4気筒DOHC4バルブ | 空冷4ストローク4気筒DOHC16バルブ | 空冷4ストローク4気筒DOHC16バルブ | |
排気量(cc) | 1,062 | 1,062 | 1,062 | |
内径×行程(mm) | 70×69 | 70×69 | 70×69 | |
圧縮比 | 10.0 | 10.0 | 10.0 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 84[115]/9,000 | 88[120]/9,000 | 88[120]/9,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 96.6[9.86]/7,500 | 98.0[10.0]/7,500 | 98.0[10.0]/7,500 | |
トランスミッション | 5速 | 5速 | 5速 | |
タンク容量(ℓ) | 26 | 26 | 26 | |
タイヤサイズ | 前 | 3.50-V19 | 100/90-V18 | 100/90V18 |
後 | 4.25-V18 | 130/90-V18 | 130/90V18 |
まとめ

第40回東京モーターショー 2007に出品されたホンダCB1100Rコンセプトモデル / © Honda Motor Co., Ltd.
CB1100R生産終了後も現在まで多くのCBモデルが登場し続けていますが、やっぱりCB1100Rだけは別格。
最近、レース専用のホモロゲーションモデル『CBR1000RR SP2』が全世界500台限定で登場しましたが、『CB』でみれば唯一のレース専用モデルがCB1100Rです。
なんと言っても、耐久レーサーのキングであるRCBのレプリカモデルだった事からすれば、全世界のホンダファンから注目の的にされるのは当然の事。
国内のCB1100Rオーナーズクラブは国内会員のつながりだけでなく、各国オーナーズクラブと欠品部品の調達やレストアのノウハウなどの意見交換を行い、オーナーそれぞれがCB1100Rを楽しんでいます。
2007年東京モーターショーでは、CB1100Rを現代版にアレンジしたコンセプトモデルが発表され、CB1100Rの復活が期待されていましたが、11年経過した現在もまだ市販化されていないのは残念な話。
ユーザーだけでなくホンダにとってもCB1100Rには熱い思い入れがあるようで、現代版CB1100Rの復活はまだまだ翹望したいところです。
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