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世界最速の信念を貫き、カワサキ・GPZ1000RXの後継モデルとして登場したZX-10。アルミ製ツインスパーフレームやカウリングのフラッシュサーフェイス化など、後に登場するZZR1100の基本的な設計はZX-10で既に確立されていました。そして、当時の世界最強・最速を死守していたのです。

出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/kawasaki/kawasaki_zx10%2088.htm
カワサキ高速ツアラーバイクを新次元の速さにしたZX-10

Photo by big-ashb
カワサキ ZX-10は1987年に開催された東京モーターショーで発表され、日本国外への海外専用車両として輸出されました。
1984年に登場したGPZ900Rからから現行のZX-14R(ZZR1400)まで、高速ツアラーバイクのトップを駆け抜けてきた水冷エンジン搭載のカワサキ製大型ツアラーバイク。
その中でZZR1100のひとつ前に登場したZX-10Rは、のちのZZRシリーズを開発するうえで大きな影響を与えた隠れた名車です。
Z1からGPz1100Fまでの空冷時代からGPZ900Rニンジャから水冷時代へ突入

カワサキ GPZ900R ニンジャ / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Kawasaki_GPZ900R
カワサキは、1972年に発売されたカワサキ Z1からの世界最速バイクの座を守るために、Z系の1気筒あたり2バルブの空冷4気筒エンジンに独自の進化を加え、年々パワーアップを果たしてきました。
空冷エンジンを貫くためにパワーを上げれば上げるほど、エンジンの熱問題に直面。
高温になっていくピストンやシリンダー、バルブ周りが歪んでしまい焼付くリスクが高くなる問題に対し、材質や形状などを工夫し、83年発売のGPz1100Fでは120PSを達成。
しかしGPz1100Fを最後に、カワサキは空冷エンジンに別れを告げ、84年に水冷エンジンを搭載したGPZ900Rを発表。
小文字の”z”は空冷エンジン、大文字の”Z”は水冷エンジンを表しており、GPZ900Rには『ニンジャ』というサブネームが与えられ、現在のニンジャシリーズに至ります。
新エンジンは先代から約200ccスケールダウンの、908cc水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。
クランクの駆動をカムへつなげるカムチェーンを、従来のセンターではなくサイドに来るサイドカムチェーンレイアウトをに変更したほか、ダイヤモンドフレームや大型フロントフェアリング、16インチフロントタイヤといった、さまざまな新しい技術が採用され、最高速度・加速・コーナリングなど、これまでを上回る性能を実現しました。
※カワサキ車で初めて水冷エンジンを搭載したのはGPZ900Rより以前の78年に発売されたZ1300です。
1,000ccまでスケールアップしたGPZ1000RX、そしてZX-10が発売

カワサキ・GPZ1000RX / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/kawasaki/kawasaki_gpz1000rx%2086.htm
GPZ900Rを997ccまで排気量アップさせた新型モデルGPZ1000RXが、86年に登場。
スチール製ダブルクレードルフレームを採用し、空力抵抗を軽減させるためにフルカウル化。
さらにGPZ900Rではフロント:120/80R16/リア:130/80R18のタイヤサイズだったのに対し、GPZ1000RXではフロント:120/80R16/リア:150/80R16が採用され、後ろは16インチとワイドなタイヤに変更されました。
ちなみに当時は、前後16インチタイヤを装着していたのは、ビモータDB1などスポーツバイクが主だったので、大きなツアラーモデルに採用したのは思い切った選択。
前後を16インチ化したことで、GPZ900Rよりもクリックなハンドリングを目指しましたが、評判が悪く、次期モデルのZX-10では、フロント17インチ・リア18インチに変更。
グリップ力の高い、ラジアルタイヤになりました。
ZZR1100のベースデザインとなる、フラッシュサーフェスされたカウリング
ZX-10はGPZ1000RXから空気抵抗を軽減させるため、カウリングはフラッシュサーフェイス化され、ヘッドランプやウィンカーまで凹凸の少ない曲面を多用。
後に登場するZZR1100のエアロダイナミックス開発のベースになった、近代的なスタイリングになりました。
また、スチールからアルミニウム製になったツインスパーフレームは、『e-BOXフレーム』と呼ばれ、車体の軽量化に寄与。
GPZ1000RXから、乾燥重量16kgも軽くなっています。
世界最速を死守した大幅改良されたエンジン
ZX-10のエンジンは、GPZ1000RXからキャリーオーバーされていますが、大幅な見直しが成され、エンジンヘッドの吸気ポートのストレート化や、シリンダー内の圧縮比をアップ。
キャブレーターは上方から下方へ向かって空気が流れるダウンドラフト型を採用し、混合気が上か下へ向かうため急加速や低回転時でも安定した混合気供給を実現しています。
パワーはGPZ1000RXから最高出力を12PSアップさせた137PS、最大トルクでは3N・mアップの102N・mを発揮し、最高速度270km/h、0-400m加速10.5秒を記録。
これはもちろん、当時の最強・最速のレコードでした。
ZX-10とライバル車との比較
1988年モデル カワサキZX-10 |
1987年モデル ホンダCBR1000F |
1987年モデル ヤマハFJ1200 |
1987年モデル スズキGSX-R1100 |
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最高出力(kW[hp]/rpm) | 100[137]/10,000 | 96[132]/9,500 | 94[130]/9,000 | 92[125]/9,500 |
最大トルク(N・m[kg・m/rpm]) | 102[10.5]/9,000 | 104[10.6]/8,500 | 108[11.0]/7,500 | 103[10.5]/9,500 |
最高速(km/h) | 270 | 258 | 244.3 | 249 |
0-400m到達時間(秒) | 10.5 | 11.0 | 10.9 | 10.7 |
カワサキ・ZX-10のスペック

出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/kawasaki/kawasaki_zx10%2088.htm
カワサキZX-10 | ||
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型式 | ZXT00B | |
全長×全幅×全高(mm) | 2,170×715×1,240 | |
ホイールベース(mm) | 1,490 | |
シート高(mm) | 790 | |
乾燥車重(kg) | 222 | |
タンク容量(リットル) | 22 | |
原動機型式 | ZXT00AE | |
エンジン種類 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC16バルブ | |
総排気量(cc) | 997 | |
ボア×ストローク(mm) | 74.0×58.0 | |
圧縮比 | 11.0:1 | |
最高出力(kW[hp]/rpm) | 100[137]/10,000 | |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 102[10.5]/9,000 | |
トランスミッション | 6速 | |
タイヤ | 前 | 120/70V17 |
後 | 160/60V18 |
まとめ
Kawasaki ZX 10 Baujahr 1990 wie abgebildet LÄUFT FÄHRT mit Schweizer Papiere #Kawasaki https://t.co/a055YmbT29 pic.twitter.com/5WQxOuRaZs
— Vamp Kris (@vamp_kris2102) 2016年11月9日
GPZ1000RXの生産期間は、1986から1988年までの2年間。
さらにZX-10は1988から1990年までの2年間と、短い期間しか生産されていません。
これは、GPZ900RからZZR1100になるまでの繋ぎ的なモデルに思えてしまいます。
しかしそれぞれの役割をみれば、GPZ1000RXはGPZ900Rからさらに排気量をアップし、GPZシリーズを正統進化。
ZX-10は、GPZ1000RXからZZR1100のベースモデルになった転換期を担っています。
そんなZX-10は、カワサキ フラグシップ高速ツアラーモデルをクラストップの性能でバトンタッチした、隠れた名車といえるのです。
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