BMWのスーパースポーツモデル『S1000RR』の新型が登場しました。新型は、各メーカーが総力を結集させて開発する、多くのライバル車に勝る速さを実現する可能性を秘めています。さらに、BMWの乗用車でお馴染みの『Mパッケージ』がS1000RRでも登場し、今まで以上にスポーティーなモデルに!スーパースポーツバイク好きを納得させる1台に仕上がっています。
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10年の時を経てS1000RR初めてのフルモデルチェンジ
BMW S1000RRがデビューからちょうど10年目に当たる2019年に、初めてのフルモデルチェンジを果たしました。
そもそもS1000RRは、BMWがリッタースーパースポーツバイク(以下:リッターSSバイク)クラスに本格参入するために開発。
BMWが初めて作ったリッターSSバイクでありながら、とてつもない速さで国産メーカーやヨーロッパメーカーの牙城を崩す存在となったミラクルバイクでした。
10年間の中で改良が重ねられ、熟成されてきましたが、今回のフルモデルチェンジでは、そのほとんどを一新。
世界中のSSバイクフリークの注目を集めています。
BMW・S1000RRとは
BMW S1000RRは、BMWがスーパーバイク世界選手権(WSB)に参戦するために、BMW Motorrad(BMWの二輪車部門)により開発され、2008年4月からドイツ ミュンヘンで生産を開始。
2009年から、販売が開始されました。
WSBには、2009年シーズンからS1000RRを投入し、BMW勢の最高位はトロイ・コーサー選手のシリーズランキング13位でした。
しかし、3年後の2012年シーズンはマルコ・メランドリー選手が3位を獲得。
それまで、BMWと言えばボクサーツインエンジンとシャフトドライブのツアラーバイクのイメージが強く、並列4気筒エンジンを搭載したKシリーズがラインナップされるようになってからもシャフトドライブ駆動でした。
そんな4気筒エンジンを横置きに搭載しチェーン駆動という、スポーツバイクでは当たり前のレイアウトを採用したS1000RRですが、意外にもこのレイアウトを採用したのはBMWの歴史上初のこと。
S1000RRを近代リッターSSクラスへ投入することはBMWにとって大きな挑戦でしたが、当時販売されていた国産4メーカーのリッターSSバイクよりも優れたパワーや最高速を記録。
発売早々国産4メーカー並びにイタリアのドゥカティ、アプリリアを脅かす存在となったのです。
またS1000RRは、現在までに8万台のセールスを記録し、今ではBMWの顔ともいえるモデルになりました。
初めて作ったSSバイクで、ライバルメーカーより勝るパワーと完成度を実現させたS1000RRは、BMWの開発力の高さを改めて示したモデルでもあるのです。
トランスミッション以外はすべて新設計
新型S1000RRは、一見ヘッドライト形状が変更されただけのように思われますが、実はトランスミッション以外はすべてが新設計。
中でも、先代モデル比で-11kgの軽量化を実現し、車両重量は197kgとなっています。
それに加えて、排気量はそのままで8馬力アップの207馬力まで引き上げられました。
エンジンは、BMWのフラットツインエンジンにも採用された可変バルブタイミング機構である『BMWシフトカム・テクノロジー』を採用。
ハイカムシャフトは9,000rpmを境に切り替わり、低回転時から高回転までフラットにパワーが出せる特性になっています。
といっても、エンジンは200馬力越えの怪物。
レブリミットは従来モデルから400rpm引き上げられた14,600rpmにもなる高回転型で、公道でレッドゾーン付近まで回すことを想像すれば恐ろしく感じてしまいます。
リッターSSバイクでは唯一無二の新型フレックスフレーム採用
S1000RRのフレームは、今まで国産メーカーで使用されるオーソドックスなアルミツインスパーフレームでした。
それが新型では、メインフレーム部分が下側に湾曲した形状に変更され、パイプ部分が細くなっています。
この新型は『フレックスフレーム』と呼ばれ、従来比で1.31kgも軽量化を果たし、ポジションの自由化と低重心化を実現。
フレーム全体のしなやかさを追求した形状となりました。
新旧スペック&価格を比較
2019年モデル BMW新型S1000RRスタンダード仕様 | 2017年モデル BMW S1000RR Premium Line | ||
---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,073×846(全高は未公開) | 2,055×720×1,140 | |
軸間距離(mm) | 1,441 | 1,440 | |
シート高(mm) | 824 | 815 | |
車重(kg) | 197 | 208 | |
エンジン種類 | 水冷4ストローク並列4気筒 | 水冷4ストローク並列4気筒 | |
排気量(cc) | 999 | 999 | |
ボア×ストローク(mm) | 80×49.7 | 80×49.7 | |
圧縮比 | 13.3:1 | 13.0:1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 152[207]/13,500 | 146[199]/13,500 | |
最大トルク(N・m/rpm) | 113/11,000 | 113/10,500 | |
変速機 | 6段リターン式 | 6段リターン式 | |
タンク容量 | 17.5 | 17.5 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17 | 120/70ZR17 |
後 | 190 / 55 ZR17 | 190 / 55 ZR17 |
モデル | グレード | 価格 |
---|---|---|
2019年モデル・BMW新型S1000RR | スタンダード仕様 | ¥2,277,000 |
レースパッケージ(DDC付) | ¥2,536,000 | |
Mパッケージ | ¥2,677,000 | |
Mパッケージ(DDC付) | ¥2,787,000 | |
2017年モデル・BMW S1000RR | Premium Line | ¥2,195,000 |
各ディメンションを見直しスポーツ性能が向上
S1000RRはフレームが変わったことも影響し、スペック上で従来モデルと比較すると車体の各ディメンションが変更されています。
新旧のスペック値以外では、スイングアームが2.5mm延長され、キャスターは23.5°から23.1°に、トレールは96.5mmから93.9mmに変更されて、ホイールベースが3mm延長されました。
このように、ホイールベースが伸びたことで安定性を増しながら、フロント周りのレスポンスも向上させ、スポーツ性能の向上が図られています。
BMWではお馴染みのMパッケージがバイクでも初登場
加えてトピックなのが、4輪車のBMWではお馴染みの、『Mパッケージ』がS1000RRでも登場したこと。
Mモデルといえばスポーツ性を高めたグレードになりますが、S1000RRには専用のボディカラー『HPモータースポーツカラー』が採用されています。
さらに、カーボン製ホイールや、走行モードをより細かく調整可能な『ライディング・プロPro』、軽量バッテリー、専用シート、リア車高調整およびスイングアーム調整機構が備わった専用サスペンションキットが搭載されました。
そして、スタンダードよりも-3.5kgの193.5kgと、さらなる軽量化を実現。
コンペティティブな1台を好むのであれば、Mパッケージをベースにするのがオススメです。
また、新型S1000RRには従来モデルと同様に、DDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)付のグレードが別で用意されています。
まとめ
S1000RRがデビューした時、他メーカーよりもいち早く、トラクションコントロールやクイックシフターなどの電子制御デバイスを導入したことで、そのハイテクぶりに驚かされました。
もちろん、新型S1000RRも従来型より電子制御の性能が向上し、高速道路やワイディング、サーキットや路面が滑りやすい運転時など、どんな場面でも最適なセッティングをボタン一つで設定できてしまいます。
といっても、開発競争が激しいリッターSSバイクの最前線を行くモデルであるため、どちらかといえば上級者またはプロライダー向けの過激なバイク。
従来モデルは安易にアクセルを開けようもんならワープするかのように加速をしていったため、大幅な軽量化と200馬力越えを達成した新型S1000RRがそれ以上の速さを手に入れたのであれば、乗ることを躊躇してしまうレベルです。
そんな新型S1000RRを、どんなライダーが購入し、どんな驚きのレビューをしてくれるのでしょうか。
今から楽しみで仕方ありません。
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