イタリアの老舗バイクメーカー モトグッツィの大ヒットモデルである850ルマンは、日本にモトグッツィを知らしめたモデルであり、世界的にも名車として知られています。ここではそんなイタリアンモーターサイクルの至宝、「モトグッツィ 850ルマン」について紹介します。
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モト・グッツィとはどんなメーカー
モトグッツィといえば、縦置きV型2気筒エンジンを搭載したスポーツバイクやクルーザーバイクをラインナップしており、1921年に設立されたイタリア最古のバイクメーカーです。
現在はレース活動をおこなっていませんが、これまで公式レース3,329戦に参加し、世界選手権チャンピオン8度、コンストラクターズチャンピオン6度、マン島TTレース11度の勝利を獲得するなど、元々はレーシーなバイクを製作していました。
そして第二次世界大戦が終戦してから空冷V型2気筒エンジンの縦置き搭載とシャフトドライブを採用したバイクを生み出し、大型のスポーツバイクやクルーザーバイクといったモデルの開発に注力しています。
その後1960年代には、現在も生産されるモトグッツィV7のオリジナルモデルが登場し、整備性の良さと頑丈な作りから、イタリア政府の白バイにも採用されることに!
そんなモトグッツィの経営は、SEIMM(SocietàEsercizio Industrie Moto Meccaniche)、デ・トマソ、アプリリアと渡り歩き、現在はイタリア最大手バイクメーカー ピアッジオ社の傘下となっています。
モトグッツィ・850ルマンとは
モトグッツィ 850ルマンは、1975年11月に開催されたミラノモーターショーで公開され、1976年に販売が開始されました。
モデル名の850は排気量を表し、ルマンはフランスで行われるルマン24時間耐久レースにちなんで命名されています。
ビキ二カウルとセパレートハンドルなどのカフェレーサースタイルは、同時期に生産された850Tや1000SPと比較すればかなりスポーティーなビジュアルです。
当時ボルドール耐久レースに投入させていたTelaio Rosso 850を参考に、850ルマンは開発され、最高出力80馬力、最高速度200km/hと、当時としてはトップクラスの性能を発揮。
今でいう、スーパースポーツバイクの位置付けにありました。
マーク1からマーク3までが存在
850ルマンはスポーツモデルでありながら、ロングツアラーモデルとしても優れた性能を持っています。
セパレートハンドルでタイトなポジションですが、縦置きエンジンによる安定性はモトグッツィならでは。
フロントフォークはモトグッツィ社パテントであるダンパーユニット別体内蔵式にインナーチューブ径35mmを採用。
ホイールのジャイロ効果を効率よく利用するために、あえて重めのキャストホイールを装着し、高速走行で高い安定性を実現しています。
そんなモトグッツィは、ロードレース世界選手権だけでなく耐久レースでも速さと高い耐久性を発揮していたことから、850ルマンには耐久レーサー譲りのツーリング性能が備わっている事は言うまでもありません。
850ルマン・マーク1(1976~1978年)
850ルマンが登場した1976年から1978年までのモデルは『マーク1』と呼ばれ、いわゆる初期モデルになります。
エンジンは高圧縮化させるためのドーム型ピストンや大径のエンジンバルブ、デロルト製36mm加速ポンプ付キャブレターなどパワー重視のパーツが搭載され、V7スポーツとは別次元のパワーと速さを実現させました。
当時はデ・トマソの傘下にあったことから、長方形のテールランプはデ・トマソによりデザインされたもので、ビキニカウルは同じデ・トマソ傘下にあったベネリ・Seiのカウルと同じものが装着されています。
フロントにはインナーチューブ径35mmのダンパーユニット別体内蔵式フォークが採用され、ブレーキキャリパーがフロントフォークの前方に取り付けられていたのもルマン850の大きな特徴です。
850ルマン・マーク2(1978~1980年)
850ルマンは1978年にフルモデルチェンジを行い、2代目モデルは『マーク2』と呼ばれています。
マーク1のビキニカウルからフルフェアリングへと変更されますが、エンジンシリンダーが斜めに出ているため、フルフェアリングといってもアッパーカウルとアンダーカバーのみのようなスタイルです。
それでも、風洞実験を行い開発されたので、高速走行ではかなりの威力を発揮していました。
フロントフォークは、ダンパーユニットにエアタイプを採用し、エアー圧は2.0~4.0kgcmにセット。
フロントフェアリングを装備したことでフロントヘビーになることの対策としてスプリングレートも強化されています。
850ルマン・マーク3(1981~1984年)
1981年に2度目のフルモデルチェンジが行われ、2代目モデルから80箇所の改良がなされました。
そして、タンク、シート、フェアリングやメーターパネルなど、目に見えるところはすべて変更されたことで、マーク1/2からスタイリングも一新。
エンジンは圧縮比が10.2から9.8に下げられたことで、最大トルクと発生時のエンジン回転数が下げられ、一方で最高出力は6馬力アップされています。
また、吸気系にラムエア効果を取り入れたことで、空気流入量が100km/h走行時に6%、200km/h走行時に24%向上し、高速走行でのさらなるパワーアップを実現させました。
モトグッツィ850ルマンのレース活動
850ルマンは、レースにおいても成功したモデルです。
850ルマンが登場する以前、1973年のバルセロナ モンジュイックサーキット24時間レースで850ルマンのプロトタイプマシンが4位を獲得。
1977年には、ロイ・アームストロング氏により、イギリス『エイボン・プロダクションマシン・チャンピオンシップ』で市販のカスタムパーツのみを装着したマシンで優勝を獲得しています。
さらに、そのマシンはアメリカ AMAスーパーバイク選手権でも、いくつかの優勝を得るなど、スポーツ性能の高さをサーキットでも証明していました。
スペック
出来ることならもう一度乗りたいバイク。MOTOGUZZI 850 Le Man pic.twitter.com/7lWRZXw2nf
— Atsushi《あっち’s mods》 (@kakinuman) 2018年9月2日
1976年式 モト グッツィ・850ルマン マークⅠ | ||
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全長×全幅×全高(mm) | – | |
軸距(mm) | 1,470 | |
シート高(mm) | 775 | |
乾燥車両重量(kg) | 198 | |
エンジン種類 | 空冷4ストローク縦置きV型2気筒OHV2バルブ | |
総排気量(cm³) | 844 | |
ボア×ストローク(mm) | 83.0×78.0 | |
圧縮比 | 10.2:1 | |
最高出力(kw[PS]/rpm) | 58.8[80]/7,300 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 79[8.0]/6,000 | |
変速機形式 | 5速 | |
タンク容量(ℓ) | 22.5 | |
タイヤサイズ | 前 | 3.5H – 18 |
後 | 4.10V – 18 |
まとめ
モトグッツィ850ルマンは、Vツインエンジンを代表する世界的にも名車な1台です。
ハーレーやBMWにもないイタリアンスピリッツ溢れる赤いカラーリングは、今でもライダーを魅了してやみません。
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