あまり見かけることのないサイドカー。バイクにサイドカーがつくことで、操作性だけでなく道交法や車両法で二輪車とは異なる扱いに変わります。かなりマイナーなカテゴリーと思われますが、サイドカーの歴史は深く、これまで多くの方の移動や運搬に役立ってきました。

Photo by Joel Abroad

奥深きサイドカーの世界へようこそ

サイドカーはバイクが誕生した19世紀末には存在しており、四輪車が高額だった頃の3人乗車可能なコミューター、または荷物を運搬するための積載車として活躍していました。

特に軍事車両としては四輪車の台数を補うために多くのサイドカーが投入され、中でもBMWやトライアンフ、ハーレーダビッドソンといった老舗バイクメーカーは、サイドカー付き軍用車両の受注生産により、メーカーの規模を拡大できた背景もあります。

レーシングサイドカー / Photo by Cattlefodder

モトクロスにもサイドカーのレースはあります! / Photo by Dirk Gently

今ではサイドカー付きのバイクに乗っているのは相当な愛好家のみとなってしまいましたが、発展途上国ではタクシーなどで使われています。

また、マン島TTレースやFIMの選手権においてサイドカーレースも行われ、”サイドカー”とひと括りでまとめても、その種類は多種多様なのです。

サイドカーとは

Photo by Proggie

サイドカーはバイクや自転車など、二輪車の横に一つの車輪が付いた車台を取り付けた三輪の車両で、『側車(そくしゃ)』とも呼ばれます。

また、横に取り付ける部分単体でもサイドカーまたは側車と呼ばれることもあり、側車部分が取り外しできる構造のものを『側車付二輪自動車』と定義します。

50cc以下のサイドカー(側車)

50cc以下(または定格出力600W以下)のいわゆる原付は、2輪、3輪以上でも道路運送車両法(以下:車両法)で第一種原動機付自転車扱いです。

車両法で車格は長さ2.5m、幅1.3m、高さ2.0m以下であることが定められており、側車の有無に関わらず原付扱いになるため、管轄は市町村役場になります。

そのため、税区分およびナンバープレートの色や形式区分は自治体によっても異なるため、原付に側車を取り付け、または既に側車が装着されているものから取り外した場合、管轄の市町村役場に確認してもらう必要があります。

また第一種原付は、公道での法定速度は30km/h以下、交差点において二段階右折が必要で、積載制限が30kg以下、乗車定員は1名のみで側車に人を乗せることはできません。

50cc超125cc以下のサイドカー(側車)

排気量が50cc超125cc以下(または定格出力600W超1kW以下)の場合は、車両法で『側車付二輪自動車』として扱われます。

車格は長さ2.5m、幅1.3m、高さ2.0m以下のもので『側車付軽二輪』とされるため車検は不要ですが、この車格を超える場合は『側車付オートバイ』で小型自動車に属すため車検が必要です。

そのため、第二種原付としては扱われないので、高速道路および自動車専用道路は法律上通行可能で、運転するには小型限定自動二輪免許以上が必要となります。

しかし、側車を取り付けたことで二輪車単体での性能を発揮することが難しくなり、高速道路や自動車専用道で最低速度に達すことができない場合は通行できません。

また、小二輪通行止め対象の一般道は通行不可ですが、二人乗り禁止の道路標識がある場合であっても、側車付二輪自動車では2名以上・乗車定員以下まで乗車可能です。

車両法上、小型自動二輪車側車は第二種原付ではなく『側車付二輪自動車』として扱われるため、側車を取り付け、または既に側車が装着されているものから取り外した場合は、車両法上の車格が変わるため、その都度ナンバープレートの登録変更をしなければなりません。

125cc超250cc以下のサイドカー(側車)

排気量が125cc超250cc以下(または定格出力600W超1kW以下)の場合、車両法で『側車付二輪自動車』として扱われます。

排気量は250cc以下で、車格が長さ2.5m、幅1.3m、高さ2.0m以下のものは『側車付軽二輪』となり車検不要。

この排気量または車格を超える場合は、『側車付オートバイ』として小型自動車になるため車検が必要です。

側車を取り外し、または再度取り付けて公道を運行する場合には、その都度ナンバープレートを取得・登録し直さなければなりません。

250cc超のサイドカー(側車)

排気量が250cc超の場合は、幅が1.3m以下であることが規定されていて、『側車付オートバイ』になるため、車検が必要です。

さらに、250cc以下のバイクと同様に、側車の取り外し・取り付けの度、ナンバープレートを取得・登録し直さなければなりません。

51cc~250ccのサイドカーと同じく、側車を取り外して取り付ける場合は、ナンバープレートを取得・登録し直すことが必要です。

サイドカーと特定二輪車との違いとは

ヤマハ・NIKEN(ナイケン) / © Yamaha Motor Co., Ltd.

近年、ヤマハや伊ピアッジオから前2輪・後1輪のバイクが販売されています。

また、ピザやファミレスのデリバリーに使われる原付も前1輪・後2輪のものが多く採用されています。

これらは3つの車輪が設置されていますが、側車付二輪自動車やトライクのような三輪車とは扱い的に何が違うかというと、これらは特定二輪車とよばれるもので、扱いはほぼ二輪車と同じです。

特定二輪車の条件は3個の車輪を装着し、前後いずれか2個の車輪が車両中心線に対して左右対称に配置されていること。

横に並んだ2個の車輪が460mm未満で離れていること、そして車体全体が傾斜して旋回する構造であることです。

サイドカーに必要な免許と装備は

普通自動車免許で乗車可能なウラル・ギアアップ / (C) 2007-2017 Ural Japan Corporation.

二輪免許が必要なサイドカー

側車付二輪自動車に乗る場合、排気量に準じた二輪車免許が必要です。

よって、50cc以下で原付免許以上、125cc以下で小型限定自動二輪免許、400cc以下で普通自動二輪免許、401cc以上で大型自動二輪免許ということになります。

また、車両にクラッチ操作が不要であれば、AT限定でも運転可能です。

高速道路の二人乗りは、年齢20歳以上で免許取得後3年以上が経過していることが条件で、側車付二輪自動車であれば、車検証に記載の人数の乗車で走行可能。

例えば、車検証に乗車定員3人と記載されていれば最大3人まで、乗車定員4人であれば最大4人まで一般道、高速道路ともに乗ることができます。

また、乗員は全員ヘルメットを装着することが必要です。

普通自動車免許のみでの操作できるサイドカーおよびトライク

二輪免許不要で、普通自動車免許で乗車可能なものもあります。

3輪のうち、後ろの2輪が駆動するもの(フルタイム、パートタイム2輪駆動車)と、前輪2輪・後輪1輪の仕様で後輪1輪のみ駆動するステアリングハンドルタイプのものは、どの排気量区分でも普通自動車免許で乗車可能です。

また、乗員はヘルメットをかぶる必要はありません。

サイドカーの税金/自賠責保険/任意保険は

出典:写真AC

~50cc 51~125cc 126~250cc 251cc~
50cc超90cc以下 90cc超125cc以下
自動車税 2,000円/年 2,400円/年 2,400円/年 3,600円/年 6,000円/年
重量税 非課税 非課税 非課税 届出時4,900円 初度登録時5700円
※3年間
通常3,800円
13年経過4,600円
18年経過5,000円
※2年間
自賠責保険 7,500円/12ヶ月 7,500円/12ヶ月 7,500円/12ヶ月 8,650円/12ヶ月 11,520円/24ヶ月

税金や自賠責保険は、二輪車と同じです。

しかし、任意保険は保険会社により異なり、『側車付軽二輪』または『側車付オートバイ』として、二輪車とは保険料が違う場合があります。

まとめ

サイドカー(側車)の概要まとめ
排気量 ~50cc 51~125cc 126~250cc 251cc~400cc 401cc~
車両規格 第一種原動機付自転車 側車付二輪自動車
免許 原付免許 小型限定自動二輪免許 普通自動二輪免許 大型自動二輪免許
乗車定員 1人 2名以上・乗車定員以下
高速道路 不可 可能
軽自動車税 原付第一種 原付第二種 軽二輪車 小型二輪車
重量税 非課税 非課税 軽二輪車 小型二輪車
自賠責保険 7,500円/12ヶ月 7,500円/12ヶ月 8,650円/12ヶ月 11,520円/24ヶ月

サイドカーはバイクを今までよりさらに楽しむ手段のひとつ。

パッセンジャーをタンデムシートではなく、側車に乗せることでタンデム走行とは違った感覚が楽しめます。

側車に荷物を詰め込んで、長旅やキャンプなんかも楽しそう!

愛犬家であれば、側車に愛犬を乗せてツーリングなんてのも、いいですよね。

サイドカーがあなたのバイクライフを、もっと楽しいものにしてくれるかもしれません。

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