イタリアのバイクメーカー アプリリアから、新型RSV4 1100ファクトリーが登場しました。従来モデルより排気量がアップされ、パワーウェイトレシオは1を軽く切るバケモノ!と思いきや、ライダーが思い通り操りやすい、ユーザーフレンドリーな1台に仕上がっていました。

© Piaggio Group

プラス79ccの魔力!パワーウエイトレシオ0.91

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アプリリアは、2019年5月に新型RSV4 1100ファクトリーの販売を開始しました。

こちらは、2018年式 アプリリアRSV4RRの後継モデルとなりますが、従来モデルの999ccから1,078ccに排気量がアップされています。

それに従い、モデル名は『RR』の代わりに排気量を表す『1100』と、さらにワークスマシンを思わせる『ファクトリー』が追加されました。

さらに、中身はプラス79ccになっただけではなく、今までになかった電子制御の追加など、かなりの戦闘力アップを果たしています。

最高出力217馬力に車重が199kgとなるため、パワーウエイトレシオは0.91!

これは、一般ライダーに操り切れるのか不安になってしまうほどの数値です。

WSBKに出場できなくなる?

WSBK(世界スーパーバイク選手権)や各国のモーターサイクルスポーツにおいては、4気筒は1,000cc以下というレギュレーションがほとんどなので、RSV4 1000ファクトリーは、それらのカテゴリーに出場できません。

ドゥカティも同様で、フラグシップモデルのパニガーレV4は1,103ccのロードスポーツモデルなので、レース出場のためのホモロゲーションモデルとなるパニガーレV4Rは、999ccに排気量をとどめています。

一方でアプリリアは、今シーズンのWSBKから完全に撤退。

各国のスーパーバイクレースには、2018年モデルのRSV4RRでプライベーターが出場している程度です。

そのため、アプリリアユーザーのレーシングチームのために、1,000cc未満のホモロゲーションモデルを出すかもしれません。

アプリリア・RSV4とは

2010年シーズンWSBKでRSV4Rを操るマックス・ビアッジ氏 / © 2017 Dorna WorldSBK.

WSBKに参戦するためにアプリリアが開発した、初代『RSV1000R』は1997年に発売されました。

当時は4気筒エンジンが750cc以下、2気筒エンジンが1,000cc以下のレギュレーションだったので、RSV1000Rは998ccV型2気筒エンジンを搭載していましたが、WSBKのレギュレーションの変更に伴い、RSV1000Rの後継モデルとして登場したのがRSV4であり、2009年に登場したモデルでは999ccV型4気筒エンジンを搭載しています。

ちなみにこれは、RSV4Rを投入してから3度のシリーズタイトルと4度のマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得し、アプリリア製SSバイクのレベルを一気に引き上げたモデルです。

国産車にない電子デバイスだらけ!

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現代のSSバイクには、さまざまな電子制御が搭載されています。

トラクションコントロールやクイックシフター、ウイリーコントロールなどが当たり前のように搭載され、メーカー間の電子デバイス開発競争が勃発しており、新型RSV4にももちろんMotoGPマシンやWSBKマシンからフィードバックされた電子デバイスを搭載。

中でも注目なのが、サーキットでピットレーンに入った際にスピードをコントロールしてくれる『アプリリア・ピット・リミッター』や高速道路走行で便利なクルーズコントロールで、これほど電子制御がてんこ盛りとなっている市販バイクは、世界中で新型RSV4だけかもしれません。

APRC:アプリリア・パフォーマンス・ライド・コントロール
機能 概要
ATC:アプリリア・トラクション・コントロール リアタイヤのスリップを軽減させるためトラクションコントロール。ハンドルスイッチ部で走行時でもスロットルを戻さずに8段階で設定可能。
AWC:アプリリア・ウイリー・コントロール ライダーがウイリーしやすくするためのコントロール機能。ウイリー時の角度を水平方向に対して25°ごとに傾くとウイリーが始まる瞬間や終わるときに路面が設置する瞬間を検知して、浮いたフロントタイヤが路面に設置するときの衝撃を抑えてくれます。ウイリーコントロールは3段階で調整可能。
ALC:アプリリア・ローチン・コントロール スタート時にクラッチを握ってギアを入れ、ローチンコントロールを作動させるとエンジン回転数を10,000回転に保ち、スタートでクラッチを放せばリアタイヤをスリップさせることなく確実なスタートを実現。2速以上のギアで車速が160km/hに達せば、自動でALCがオフになります。
AQS:アプリリア・クイック・シフト シフト操作時にクラッチを握らずにシフトアップが可能です。新型RSV4 1100ファクトリーではクラッチを握らずシフトダウンが可能で、シフトダウン時は回転数を合わブリッピングまで自動で行ってくれます。
APL:アプリリア・ピット・リミッター サーキットでピットレーンに入った際、ピットレーンの制限速度を選択して、ピットレーン制限速度以上のスピードが出ないようにコントロールしてくれます。
ACC:アプリリア・クルーズ・コントロール クルーズコントロール時に速度を設定すれば、アクセル操作なしで設定速度を維持してくれます。

217馬力のSSバイクが実は初心者向け!?

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新型RSV4には、フロントカウルのサイドに派手なカーボン製ウィングレットが装着されています。

これには時速300km/hで約8kg相当のダウンフォースを得ることと、コーナー立ち上がりでウイリー抑制の効果がありますが、そもそも時速300km/hなんて一般ライダーからすれば非現実的。

そんな制御をフルに使いこなせるわけがなく、逆に危ないと思いますが、レジェンドライダーの原田哲也氏が新型RSV4に関して面白い言葉を残しています。

原田氏のレビューによれば、唐突感は一切なく、コーナーから立ち上がりでもスムーズにトルクが発生していくとのこと。

元アプリリアワークスのエースライダーである原田氏だけに、説得力があります。

また、排気量の78ccアップは、アプリリアのエンジニアが意図的にビギナーライダーでも乗りやすい味付けをしたのだと考えられます。

スペック

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アプリリア・RSV4 1100 ファクトリー
全長×全幅×全高(mm) 2,052×-×-(全幅・全高は未発表)
軸距(mm) 1,439
シート高(mm) 851
車両重量(kg) 199(燃料90%搭載時)
エンジン種類 水冷4ストローク65°V型4気筒DOHC4バルブ
総排気量(cm³) 1,078
ボア×ストローク(mm) 81.0×52.3
圧縮比 13.6:1
最高出力(kw[PS]/rpm) 159.6[217]/13,200
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 122[12.4]/11,000
変速機形式 6速カセット式アプリリア・クイック・シフト(AQS)付フルクロスレシオ
タンク容量(ℓ) 18.5
タイヤサイズ 120/70-ZR17
200/55 ZR17
価格 2,862,000円

まとめ

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プラス79ccとなったことは、レースレギュレーションに沿わなくなったとしても、SSバイクをより一般ユーザーが楽しめるように考えられたチューニングといえます。

79ccの魔力を是非体感してみてはいかがでしょうか。

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