今後市販車として作られないであろう、250cc 4ストローク並列4気筒のオートバイが、街中を走り回っていた時代がありました。250ccなのに音はまるでレーサーそのもの。高回転域まで回るエンジンに、魅惑のかん高いエキゾーストノート。250ccとは思えない贅沢な創り。MC51としてCBR250RRが復活し話題となっていますが、その先代となる4気筒のCBR250シリーズを振り返ってみます。
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メガマックス!MC14 CBR250fourの登場
ホンダはVT250Fで大成功を収めていましたが、それには250cc 4ストローク4気筒のスズキGS250FW、そしてその後に出たヤマハFZ250PHAZERの存在が大きく影響しています。
H・Y戦争と呼ばれる販売競争の中、1986年、後に歴史に残る一台CBR250シリーズを世に打ち出します。
最後発の為、負けるわけにはいかないホンダは、なんと目の字断面のアルミツインチューブフレームにフロントダブルディスクブレーキを装備。
そして最も特徴的なのは、カムギアトレーンを使用したDOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載した事。
カムギアトレーンとは、通常カムシャフトをチェーンで駆動するところを、ギアにより駆動させることにより、フリクションロスを減らしエンジンの高回転化を可能にする機能です。
そのほかクロムモリブデン浸炭コンロッドや、往復運動部品の徹底した軽量化をはかり、さらに新設計の4連キャブから燃焼室までの経路をストレート化、バルブの大径化によって超高回転型のとてもパワフルなユニットとなりました。
なんと、そのエンジンは4ストロークでありながら、45ps/14500rpmと言う、とんでもない出力を出すエンジンとなり、後に2006年までジェイド、ホーネットへと引き継がれる名機となります。
メガマックス、呼吸する精密機械と謳われた名機の登場です。
250cc4気筒DOHC4バルブエンジンは非常に精密で、高価、高品質なものなので、バブルの恩恵を背景に、ホンダの意地をフルに詰め込んだ車両となりました。
しかし、思ったように販売台数は伸びず、わずか3ヵ月で専用色と、オプションであったアンダーカウルを装着したスペシャルエディションが追加される事に。
現車はほぼ残っていない為、相場らしい相場が存在しませんが、現在の中古相場は10万~20万程度が目安となっています。
基本スペック
型式:MC14
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
排気量:249cc
最高出力:45ps/15000rpm
最大トルク:2.6kg-m/10500rpm
フレーム:ダイヤモンドフレーム
全長:2000mm
全幅:685mm
全高:1120mm
サスペンション:Fテレスコピック Rスイングアーム
ブレーキ:Fダブルディスク Rドラム
年間販売台数2万台!フルカウル化されたMC17 CBR250R
当時レーサーレプリカ全盛ブームで、オートバイは大人気でした。
そのような時代の流れの中で毎年のようにモデルチェンジが行われ、CBR250もMC17 CBR250R として1987年、追加仕様として生まれます。
ペットネームにハリケーンを持つこのオートバイは、実質は型式変更もされ別モデルではありますが、基本設計はMC14と同一で共通部品も多い車両です。
キャブレターを大口径化し、マフラーも大容量化。
吸排気バルブを大径化細軸化され、レブリミットがなんと18000rpmまで引き上げらています。
そしてなんといってもリアのディスクブレーキ化が、大きく販売に貢献しました。
当時スポーツバイク全盛期。
CBR250Fourはフロントがダブルディスクなのになぜリアがドラムブレーキなんだ?ドラムブレーキなんてスポーツバイクではない!と言う声が多かったための変更でした。
CBR250Rと車名も変更。フルカウル化され、よりスポーツ色の強い車両となりました。
そして、年間二万台を超える偉業をなしとげる大ヒットとなり、並み居る強豪を抑え販売台数トップに!
250cc史上初めて2万台を超えるセールスを記録した1台となったのです。
これもMC14と同じく非常に台数が少なく相場の算出が難しいのですが、15万~30万くらいが目安となると思います。
基本スペック
型式:MC17
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
排気量:249cc
最高出力:45ps/15000rpm
最大トルク:2.6kg-m/10500rpm
フレーム:ダイヤモンドフレーム
全長:2000mm
全幅:680mm
全高:1120mm
サスペンション:Fテレスコピック Rスイングアーム
ブレーキ:Fダブルディスク Rディスク
レーサーレプリカとして姿を変えたMC19
外観上は完全にレーサーレプリカとなり、とても魅力的になったMC19.
しかし、フロントブレーキをシングルディスクに変更したことがあだとなり、販売台数は伸び悩みます。
性能的には十分な制動力があり、ばね下重量が軽くなるというメリットも高く、動力性能と運動性能のバランスから言うとシングルディスクの方が実は上で、ダブルディスクはオーバースペックだという判断でした。
しかし当時250ccといえども、フロントダブルディスク、リアもディスクブレーキが当たり前の時代。不遇の一台となってしまいます。
当時高校生だった私も、バイク雑誌やカタログを見比べて、いかにハイスペックであるかが重要で、実際の走行性能は重視していませんでした。
元々、CBR400Rとくらべ、250は女性の乗り物として考えられていたため、さらに販売実績の足かせになったようです。
しかし内容的には、エアクリーナーの大容量化やキャブレターの大口径化、フレームはNSRなどにも使われた最新の異形五角目の字断面アルミツインチューブフレームを採用。
リアタイヤのサイズは140にアップするなど、よりレーシーなものとなっていたのです。
また燃料供給方法が、安定した供給のできる燃料ポンプを使用しているのもMC17からの変更点です。
1988年に販売され、ハリケーンのペットネームは健在でしたが、1989年には正式にペットネームは廃止されCBR250Rと言う車名となりました。
中古相場としては25万~50万ぐらいとなっています。
基本スペック
型式:MC19
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
排気量:249cc
最高出力:45ps/15000rpm
最大トルク:2.6kg-m/10500rpm
フレーム:ダイヤモンドフレーム
全長:2020mm
全幅:685mm
全高:1075mm
サスペンション:Fテレスコピック Rスイングアーム
ブレーキ:Fシングルディスク Rディスク
今では考えられない贅を尽くしたオートバイ、MC22 CBR250RR
CBR250RRというと、フルスペックのCBR400RRがあったという理由もあり、女性向けと言う考え方が一般的でした。
見た目はレプリカでしたがシート高も低く、低重心、そして当時の車両としては柔らかめの足回りに、ハイスペックなエンジン。
ライダーの技術を問わず、高レベルの走りを楽しめる「高次元ヒューマンフィッティング&スーパーレスポンスクオーター」という開発コンセプトの元生まれたモデルです。
非常に扱いやすく、すぐれたオートバイだったのですが、なにせ当時はハイスペックで速いのがえらい!と言う時代だったので、乗りやすい、扱いやすい=女性向けのような発想が生まれたのだと思います。
CBR250RRの一番の特徴はLCG(Low Center of Gravity:低重心)フレームです。剛性を前後で変える事で剛性を保ちつつしなやかなコーナーリングを可能にしました。
また今でもレーサーを作る時の基本原則であるマスの集中化を狙ったものとなっており、徹底した低重心化をねらったフレームの副産物として、シート高も非常に低くなっています。
またスイングアームにはガルアームが採用され、マフラーの排気効率をあげる事に貢献しています。
フロントブレーキもダブルディスクとなり、制動力をより強力にしたものとなりました。
エンジンはキャブレターから燃焼室までのポート形状を新設計しストレート化。
クランク周りの剛性をあげ中低速での扱いやすさを向上しています。
そしてレッドゾーンを驚きの19000rpmに設定し、19500rpmで作動するレブリミッターを搭載しました。
この高回転エンジンから発せられるエキゾーストノートは、まさにレーサーそのもので、管楽器が奏でる音楽のように魅惑的なものでした。
1991年にカラーリングの追加、1992年カラーリング変更のマイナーチェンジを経て、1994年の250cc馬力規制を受け、バルブタイミング・マフラーの構造変更により中低速での出力向上と共に40ps/14500rpmとパワーダウンとなりました。
そしてレプリカブームの終焉と共に2000年に生産終了となり、後継機となるジェイド、ホーネットへとその座を譲っていったのです。
中古相場は40万~60万くらいとなっています。
基本スペック
型式:MC22
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
排気量:249cc
最高出力:45ps/15000rpm
最大トルク:2.6kg-m/10500rpm
フレーム:ダイヤモンドフレーム
全長:1975mm
全幅:675mm
全高:1080mm
サスペンション:Fテレスコピック Rスイングアーム
ブレーキ:Fダブルディスク Rディスク
まとめ
当時ハイスペック、高性能のオートバイがとにかくえらい!という時代となっていました。
その為、250cc 4ストのオートバイと言うと、どこか格落ちのような印象に。
実際は、現在これほど戦闘力を持った4スト250ccがないという事実は、時代背景とは言え、当時のオートバイがどれだけ贅沢に創られていたかを物語っています。
アルミフレーム一つを取っても、今研究開発して作り上げたとしたら、とても採算が合わないのは、間違いないと思います。
バブル期のバイクは、材質からしてすべて高品質に創られており、ボルト一本のクオリティーからしても違うものでした。
オートバイにとって、バブル期の恩恵から来る潤沢な資金、レースブーム、オートバイブームの到来、すべてのタイミングが合わさった奇跡の時代だったのかもしれません。
CBR250RR、今の若い人にもぜひ味わってもらいたい一台です!
最高峰のSSならともかく、250ccでこんな魅力的で贅沢なバイクは本当に二度と創られないのではないでしょうか。
CBR250RRは今でも海外では壊れにくい現役車両として東南アジアなどでも人気が高く、中古車相場を押し上げています。もう手に入るチャンスもほとんどないでしょう。
MC51としてCBR250RRが最近復活しました。
2気筒で38.7馬力は驚異的ですし、今の最新技術はやはり素晴らしいものです。
しかし、創りの贅沢さ、豪華さ、その当時の最新技術を詰め込んだ歴史的価値を考えると、最新車両が色あせて見えるほど素晴らしい車両です。
それはバブル期のオートバイ全体に言える事をかもしれません。
呼吸する精密機械なんて、聞いただけで心が躍りますよね!
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