ドライバーとパッセンジャーの2人1組が華麗な操作をみせてくれるサイドカーレース。そのマシンやレギュレーション、ジャンルなど奥深きサイドカーレースについてご紹介します。

掲載日:2019.9/19

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2輪でも4輪でも味わえない魅惑のサイドカーレース

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サイドカーレースは2輪レースや4輪レースに比べ、マイナーかもしれません。

しかし、実はモトクロスやダートトラック、トライアル競技まで様々なカテゴリーが存在しています。

3輪の車両に2人で乗り、側車に乗るパッセンジャーがコーナーで荷重移動の為にマシンを行ったり来たりして、サイドカーから地面すれすれまで身体を投げ出し高速でコーナーを駆け抜ける様子は、サイドカーレースならではの光景でもあり、魅力のひとつです。

サイドカーレースとは

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サイドカーレースは、側車付きの車両を用いてドライバーとパッセンジャーの2名で速さを競うレースの総称です。

日本では2輪や4輪レースより認知度は低いのですが、2輪レースの本場である欧州では非常に人気が高く、サイドカーレースの最高峰『FIMサイドカー世界選手権』は、かつてWGP(ロードレース世界選手権|現:MotoGP)の中でサイドカークラスとして開催されていた過去もあります。

サイドカーレースのクラス分け

F4クラス / (C) JRSA

日本で行われるサイドカーレースは、『F1クラス』、『F2クラス』、『F4クラス』の3クラスに分けられます。

クラス レギュレーション
F1クラス ・リアミッドシップエンジン
・ロングホイルベースモノコックシャシー
・エンジンは2ストで最大排気量500ccまたは4ストで最大排気量1,340cc
・車両最小重量370kg※国際レースの場合、FIM規定の4ストで最大排気量600ccに従う
F2クラス ・フロントミッドシップエンジン
・ショートホイルベースパイプフレーム
・エンジンは2ストで最大排気量500ccまたは4ストで最大排気量1,340cc
・自然吸気のみ
・車両最小重量350kg※国際レースの場合、FIM規定の4ストで最大排気量600ccに従う
F4クラス ・全長2,400mm以下、全幅1,300mm以下、全高550mm以下エンジンは2ストで最大排気量100ccまたは4ストで最大排気量150cc
・ホイール・タイヤはカート用

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Sidecar_World_Championship

このうち、F1クラスはFIMサイドカー選手権、F2クラスはマン島TTレース サイドカークラスで採用されており、F4クラスは日本独自のクラスとなります。

F1/F2クラスの車両エンジンは市販二輪車の4気筒エンジンを流用し、クランクシャフトやストロークの変更はできませんが、ピストン、ピストンリング、カムシャフト、コンロッド(チタン不可)等の部品交換は可能など、改造範囲が広いのが特徴です。

ホイールは前輪の最大幅9インチ、後輪の最大幅11インチとなっており、タイヤはスリックまたはトレッド付きのものを使用。

フロントタイヤ幅は215mm以下、リアタイヤ幅は254mm以下と定められています。

シャシーは基本的にレーシングサイドカーメーカーにより制作されたものを使用しますが、自作シャシーも使用可能。

サイドカーメーカーはスイスの『LCR』が最も人気が高く、国内では矢崎フレーム(YZF)といったメーカーも活躍しています。

サイドカー操作におけるドライバー/パッセンジャーの役割

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レーシングサイドカーは本車の後輪のみが駆動し、運転席にはハンドルやシフトペダルなど操作類がすべて搭載されています。

ドライバーは車体の加減速・ハンドル操作のすべてを行いますが、旋回時はバイクのようにライダー荷重移動で車体全体を傾けるのではなく、ハンドルの舵角が旋回力となります。

そのため、コーナリング時は遠心力により車体荷重が一気にコーナー外側へかかるため、左右非対称な3輪車両では横転する恐れがあります。

そこでパッセンジャーは、車体上を移動しながらコーナー内側へ車両の重心を移行させる役割を担うのです。

サイドカーマシンの右側に本車、左側に側車が配置される場合、右コーナーではパッセンジャーが本車へ上乗りになり、左コーナーでは側車の外側へ身体を移動、長い直線では側車の中央に伏せながら空気抵抗を極力さけるように乗っています。

ロードレースまでトライアルまで多ジャンル

サイドカーレースはロードレースだけでなく、モトクロス、ダートトラック、トライアルまで幅広いジャンルが存在します。

サイドカークロス

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サイドカークロスは、サイドカークロス専用車両で競い合い、『EML』や『VMC』、『WSP』といったサイドカークロス車両メーカーも存在します。

また、エンジンは2ストロークエンジンの搭載が可能で、しかものオーストリアのMTH製630ccやドイツのZabel製700ccといったエンジンを搭載しているため、大排気量2ストロークエンジンのサウンドが聞ける2ストフリークには魅惑のレース。

欧州各国を転戦してシリーズチャンピオンを決める『サイドカーモトクロス世界選手権』も開催されており、ヨーロッパではサイドカーロードレースと同じく人気の高いカテゴリーです。

サイドカートライアル

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Motorcycle_trials

サイドカートライアルは、トライアル車両に側車を取り付けた車両で競い合います。

従来のトライアル競技同様に、ドライバーまたはパッセンジャーの身体の一部が地面と接触すれば減点され、減点スコアが最も少ない選手が優勝するレギュレーション。

イギリスではサイドカートライアルの最高峰とされる『ブリディッシュ・サイドカー・トライアル・チャンピオンシップ』が開催され、競技は3つのレベルに分かれてシリーズ全10戦を戦い、それぞれのレベルの優勝者が決定します。

サイドカースピードウェイ

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サイドカースピードウェイは、楕円形のオーバルコースで競い合うサイドカーのダートトラックレースです。

オーストラリアでは二輪や四輪レース同等に人気が高く、イギリス、アメリカ、ニュージーランド、南アフリカなどワールドワイドでレースが行われ、FIMトラックレーシングゴールドトロフィーと呼ばれる世界選手権も開催されていました。

排気量1,000ccのスーパーバイク専用エンジンを搭載したサイドカーは、最高出力180馬力、最高速度は130km/hに到達。

サイドカーがコーナーで高速ドリフトをしながら走る姿は圧巻です。

まとめ

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3輪のサイドカーで、ドライバーとパッセンジャーの息が合った操作を見ていると、2輪、4輪レースにない非現実的な面白さに魅了されてしまいます。

これからサイドカーレースの観戦、さらにはレース参戦にも挑戦してみれば、あなたの知らないモータースポーツの新たな楽しさが発見できるかもしれません。

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