2007年のデビューから、2020年時点で13年が経過する日産のフラッグシップスーパーカーGT-R。これまで何度もフルモデルチェンジや次期型が噂されてきましたが、いまだにモデルチェンジされていません。なぜ、日産R35 GT-Rはフルモデルチェンジしないのでしょうか。
Photo by yuta.saito
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日産R35 GT-Rとは?
日産R35 GT-Rは、2007年にデビューした「マルチパフォーマンススーパーカー」です。
2ドアクーペですが、後席を備える2+2シーターのスーパーカー。
3.8LV6ツインターボエンジンをフロントボンネットに収め、後輪側にトランスミッションを配置したトランスアクスルレイアウトを採用。
前後重量バランスを最適化するとともに、四輪駆動による高い走行安定性が特徴で、オンロードのみならず、アイスバーンでもハイパフォーマンスドライビングを楽しむことができる唯一のスーパーカーとして、現在でも世界中で高い人気を誇っています。
国産車としては珍しくモデルイヤー制を取り入れ、毎年進化し続けていることもGT-Rならではのポイント。
ベーシックなグレードからサーキット走行に向いているスパルタンなグレードまでラインナップされており、好みに応じたGT-Rをチョイスすることができます。
2007年から毎年進化を続け、エンジンの出力アップ、サスペンションの見直し、ボディ剛性の強化、エクステリアデザインやインテリアデザインの変更など、毎年必ず前年のGT-Rを上回る進化版が登場。
2020年現在でも進化を止めることなく成長し続けている、日本が誇るスーパーカーです。
これほどにまでGT-Rが進化し続けてこれたのには、明確な理由があります。
それは、2007年型GT-Rが登場した時にも話題となりましたが、「日産 GT-R」になったことです。
R34 GT-Rまでは「日産スカイラインGT-R」が正式な車種名でしたが、R35 GT-Rからは「スカイライン」の名がなくなりました。
これには、深い意味があったのです。
スカイラインからの独立
GT-Rが「スカイライン」を名乗らなくなった理由は、スーパーカーとしての独立だけが目的ではありません。
R35 GT-Rの開発責任者である水野和敏氏は、ポルシェやフェラーリと同等以上のスーパーカーを作るために、スカイライン系統とは全く異なるプラットフォームを使う必要性があると判断したのです。
世界の名だたるスーパーカーたちに真っ向勝負を挑むためには、スカイラインのプラットフォームでは戦うことができないため、スカイラインから独立せざるを得なかったのです。
最後に決まったR35 GT-Rのエンジン
R35 GT-Rのパフォーマンスを支える心臓部であるエンジン。
実は、V6を搭載することは、一番最後に決まったと開発責任者の水野氏は話しています。
重量バランスと高いドライビングパフォーマンスを発揮させるためには、最適な車両重量と前後重量配分が必要であり、重量バランスに見合ったエンジンサイズがV6でした。
もちろん、自然吸気V6エンジンでは世界のスーパーカーと対等に戦うことができないため、ツインターボによりトルクと出力をアップさせています。
さらに、開発責任者のこだわりは、エンジン内部にまで及んでおり、究極の燃焼効率が追求されました。
アルミニウムを使って軽量化を図り、燃焼室内は0.2mmのメッキ加工のみ。
燃焼室において燃料を青白い炎で瞬間的に爆発させることで、燃焼効率を上げることに成功しています。
そんなエンジニア水野和敏のこだわりが生み出したR35 GT-R専用エンジンが、「VR38DETT」なのです。
V6ツインターボ「VR38DETT」エンジンは、現在でも細部に改良が加えられ、2007年の登場時点では480PS/588Nmでしたが、ハイパフォーマンスグレードのNISMO(ニスモ)では600PS/652Nmまで引き上げられました。
エンジニアのこだわりが細部にまで宿っているエンジンは、今も効率を上げられる余地があるということを証明し続けています。
10年以上先を見据えたR35 GT-Rのプラットフォーム
R35 GT-Rの進化は、止まることなく現在も続いています。
エンジンパフォーマンスの向上やサスペンションチューニングの変更、軽量化、内装・外装のブラッシュアップなど、手を加えることで進化する部分はまだ多くあるでしょう。
また、R35 GT-Rに使われているプラットフォームは、「PMパッケージ」と呼ばれるトランスアクスルを採用したプラットフォーム。
PMはPremium Mid-ship(プレミアム・ミッドシップ)の略で、フロントエンジンを前輪軸上から後方寄りに配置するフロントミッドシップレイアウトになっている点が特徴です。
また、後輪側にトランスミッションなどを配置する独立型トランスアクスルとなっていて、独立型トランスアクスルは世界初のレイアウトであり、汎用性が高いプラットフォームとして開発されました。
つまり、ガソリンエンジンだけではなく、他の動力源にも対応することができる画期的なプラットフォームが「PMパッケージ」なのです。
それだけではなく、R35 GT-Rのようなスーパーカーから、セダンやワゴン、SUVなどにも応用できるプラットフォームとして開発されたパッケージが「PMパッケージ」であるため、今後「PMパッケージ」を使った新しいモデルが登場する可能性も秘めています。
モデルチェンジの必要性がないR35 GT-R
汎用性の高いプラットフォーム「PMパッケージ」を採用しているR35 GT-Rは、現在のプラットフォームのままで新たな動力源を搭載することができます。
言い換えてしまえば、モデルチェンジをする必要性がなく、動力源の載せ換えだけで、新しいスーパーカーとしてリリースすることができてしまうということ。
環境問題から自動車の電動化が進むことまで視野に入れ、多くの動力源に対応できるプラットフォームを使用していることから、R35 GT-Rはモデルチェンジ「しない」のではなく「しなくても問題はない」ため、13年にわたり進化し続けることができ、フルモデルチェンジすることなくスーパーカーの第一線で活躍し続けられているのです。
まとめ
ここまで見てきたうえで、日産R35 GT-Rがフルモデルチェンジしない理由は、フルモデルチェンジの必要性がなく、他の動力源にも対応できる汎用性の高いプラットフォームを採用していたからだったと言い切っても問題ないでしょう。
多様化する動力源を見据えたプラットフォーム「PMパッケージ」は、前後重量バランスに優れているため、R35 GT-Rの走りを支えるにふさわしいパッケージでもありますが、自動車業界全体の未来まで担っているパッケージと言い換えることもできるでしょう。
今後、日産が「PMパッケージ」を使ってどのような調理をしていくのかを楽しみにしながら、R35 GT-R進化の続報を期待しましょう。
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