2スト250ccレプリカバイクは、ほぼ国産3メーカーの独壇場でしたが、唯一海外メーカーで食い込んでいたのがアプリリア・RS250。日本は馬力規制で40馬力または45馬力だったのに対し、欧州では馬力の縛りがなかった為に、250ccクラスで最もハイパワーなレーサーレプリカとして過激なライダーから人気を博しました。
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アプリリア・RS250とは
RS250はイタリアバイクメーカー・アプリリアにより1995~2002年まで生産されていたスポーツバイクです。
排気量250ccの2ストローク90°V型2気筒エンジンを搭載し『ホンダ・NSR250R』や『ヤマハTZR250R』と販売された時期が一緒だったため、国産2ストレーサーレプリカにとって唯一ライバルだった外車となります。
ロッシも乗ってたRSW250からインスパイアされ登場
250ccクラスのラストシーズンとなった1999年、”Peace&Love” をテーマにカラーリングされたAprilia RS250を駆る @ValeYellow46
この年イタリアGP優勝、そしてタイトル獲得。あれから20年、愛はまだそこにあります。#dainese #MotoGP #ItalianGP#ダイネーゼ pic.twitter.com/pVkArgohwx— Dainese Japan (@dainesejapan) 2019年6月1日
1990年代のWGP(ロードレース世界選手権|現在のMotoGP)250ccクラスでは、ホンダ、ヤマハ、アプリリアによるトップ争いが繰り広げられ、アプリリアはレーサーマシンRSV250/RSW250を投入していました。
レースではマックス・ビアッジ、バレンティーノ・ロッシ、ロリス・カピロッシといったイタリア人ライダーにより多く優勝とシリーズタイトルを獲得。
また、このとき原田哲也さんもアプリリアワークスからRSV250に乗りイタリア人ライダー3人に割ってタイトル争いを繰り広げていました。
RS250は、そんな250ccレーサーマシンをインスパイアして作られているため、レーサーレプリカでした。
見た目はイタ車、中身は国産のスズキ・RGV250Γのエンジン
アプリリアはWGP・250ccクラスで大成功を収めたため、その技術はフルにRS250へ注ぎ込まれたと考えるでしょう。
たしかに、フレームやスイングアームなど芸術的な作り込みがなされていましたが、エンジンはスズキ・RGV250Γのものを搭載していました。
アプリリアの二輪車事業は1970年初頭からモペットやスクーターの生産から始め、その後トレイルバイクの生産を開始。
ロングセラーのアプリリア製スクーターである『スカラベオ』は自社製のエンジンを搭載していましたが、125ccや250ccのモデルにはロータックス社製エンジンを搭載していたモデルが多く、モデルラインナップを拡張させて欧州市場でのシェアを伸ばしていきました。
そしてレースでも目覚ましい活躍をみせ、レーシングバイクのエンジン開発では高い技術力を発揮していましたが、日本メーカーに比べたらアプリリアはメーカーとしては圧倒的に小規模。
しかし、RSV250に近いパフォーマンスを持った公道仕様のバイクを燃費や排ガス、耐久性などを考慮したうえで開発するには莫大な費用が必要で、アプリリアが下した決断は信頼性の高い日本製バイクのエンジンを搭載することだったのです。
当時、スズキはRGV250Γを欧州向けに輸出し、一部のレーシングチームへマシンやパーツ共有などのサポートを行っていたため、アプリリアはRGV250Γに搭載されるVJ22型エンジンの供給をスズキへ依頼。
そして、エンジン以外をオリジナル設計にしたGPレーサーのレプリカ開発に着手し、RS250が生み出されました。
国産にはない豪華な装備を誇った車体設計
Hooligan time #aprilia #rs250 pic.twitter.com/4BXbKSqGw8
— Gill Greggor (@GillGreggor) 2013年8月3日
RS250はRGV250Γのエンジンを搭載していましたが、シリンダーヘッドはアプリリアオリジナルのものを装着しており、エンジンの圧縮比はRGV250Γで7.3だったの対し、RS250では13.3と2ストエンジンにしてはかなり高圧縮になっています。
それに合わせてECU、チャンバーなどはアプリリア独自のパーツが取り付けられ、サイレンサーはカーボン製を使用。
また、RGV250Γのエンジンよりもさらにハイパワーなセッティングがなされており、スペック上ではエンジンの最高出力は72.5馬力を発揮します!
フレームはアルミニウムとマグネシウム合金の削り出して製造されたキャストスインスパーフレームで、バナナ型スイングアームもアルミニウムからの削り出しで作成。
ブレーキにはフロントにブレンド製4ポットキャリパーと298mmブレーキディスク、リアもブレンボ製2ポットと220mmディスクを搭載しており、エンジンを外注に任せた分なのか、フレームやスイングアーム、ブレーキなどにはかなりのお金を掛けた仕様となっています。
また、メータ―パネルには最大40ラップまで記録できるラップタイム表示モニターが装備されていたあたりも、国産2ストレプリカにはない豪華な特徴です。
アプリリア・RS250の新旧スペック
アプリリア・RS250 前期モデル | アプリリア・RS250 後期モデル | ||
---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1,975×690×1,180 | 1,980×690×1,090 | |
軸間距離(mm) | 1,360 | 1,370 | |
シート高(mm) | 810 | 810 | |
乾燥車重(kg) | 140 | 208 | |
エンジン種類 | 水冷2ストロークV型2気筒 | 水冷2ストロークV型2気筒 | |
排気量(cc) | 249 | 249 | |
ボア×ストローク(mm) | 56×50.6 | 80×49.7 | |
圧縮比 | 12.0:1 | 13.0:1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 52.9[72.5]/11,900 | 52.9[72.5]/11,900 | |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 40[4.08]/10,750 | 40[4.08]/10,750 | |
変速機 | 6速ダイレクトドライブ | 6速ダイレクトドライブ | |
タンク容量 | 16.5 | 19.5 | |
タイヤサイズ | 前 | 110/70ZR17 | 120/60ZR17 |
後 | 160/60ZR17 | 150/60ZR17 |
前期・後期の違いは
RS250は1998年のモデルチェンジを境に、前期型は『LD型』、後期型は『LDA型』と呼ばれます。
後期型は、フロントフォークが前期型のマルゾッキ製からショーワ製に変更され、新デザインのメーターパネルを採用。
ホイールとタイヤサイズの変更が実施されました。
また、当時のWGP250ccクラスでロッシやカピロッシが乗っていたRSV250/RSW250をイメージしたカウルデザインにも、変更されています。
ちなみに、後期型のモデル名は、それまでのRS250からRS250GP1とも呼ばれています。
まとめ
RS250が登場した当時、日本国内では250ccまでのバイクに対して最高出力40馬力までという規制がかけられていたため、メーカーとしてはまだまだパワーが出せたはずでした。
そのため、馬力規制のない海外でアプリリアは、RGV250Γのエンジンをベースに70馬力以上のパワーを絞り出し、最高速209.5km/h、0-1/4マイル(約402m)の加速は12.50秒という速さを発揮したのです。
90年代の2ストレプリカ人気を知る方にとっては、RS250は理想であって夢のバイクだったといえるのではないでしょうか。
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