数万点にわたる部品の集合体であるクルマは、使用中、動きや振動に常にさらされていることから、「慣らし運転」が必要といわれることもあります。エンジンの回転数を抑えた運転をしばらく続ける「エンジンの慣らし運転」は、聞いたことがある方も多いと思いますが、実はサスペンションにも同じように慣らし運転があることは、意外と知られていない事実です。今回は「サスペンションの慣らし運転」について、ご紹介します。
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サスペンションの慣らし運転は必要なのか?
サスペンションの慣らし運転の必要性に関しては、賛否両論あります。
しかし、結論から言うと、サスペンションの慣らし運転は必要です。
量産されるクルマのサスペンションは、少なからず誤差が生じます。
そのため、もしもサスペンションが100%の完成度であったとしても、組み付けられた状態でのマッチングが完了するまでには、ある程度の走り込みが必要。よって、サスペンションの慣らし運転は必要なのです。
特に、純正のサスペンションから社外品のサスペンションや車高調に組み替えた際は、サスペンションの慣らし運転をした方が良いといえるでしょう。
純正装着サスペンションの慣らし運転
工場出荷時点で装着されている純正サスペンションには、慣らし運転は必要ないという方もいますが、純正サスペンションも慣らし運転をすることで、本来のポテンシャルを正しく発揮することができるようになります。
では、具体的にどのように慣らし運転をすれば良いのでしょうか。
減衰力調整機能付き
近年、多くのクルマに装着されている減衰力調整機能付きのサスペンションから解説していきます。
減衰力調整機能は、可変ダンパーと呼ばれることもあるサスペンションで、走行シーンに応じてサスペンションの減衰力を任意に調整することができたり、クルマのシステムと連動して自動で減衰力の調整をしてくれたりします。
減衰力調整機能が付いている純正装着サスペンションの場合、コンフォートモードなど乗り心地重視の設定で、500km~1000kmほど走行しましょう。
サスペンションがよく動くモードにしておくことで、サスペンションを構成するコイルやショックアブソーバー内部の動きがスムーズになります。
運転方法としては、優しい走行で、歩道などの段差は優しく乗り越えて行くように心がけましょう。
減衰力調整機能なし
減衰力調整機能がないサスペンションの場合は、500km~1000kmほどは優しい運転を心がけると良いでしょう。
歩道などの段差は優しく乗り越え、突発的な強い入力はなるべく避けるよう心がけると馴染みが良くなります。
社外サスペンションの慣らし運転
よりスポーティーな乗り心地などを求めて、社外のサスペンションを組み付けるオーナーもいます。
この社外サスペンションこそ、慣らし運転は重点的に実施することをおすすめします。
もちろん、クルマとサスペンションのマッチングを良くする目的もありますが、ドライバーが新しいサスペンションの走行フィールに慣れる必要もあるからです。
また、慣らし運転が終わったら、アライメントの調整やサスペンション取り付け部分の増し締めも忘れずに実施するようにしましょう。
では、具体的な慣らし運転の方法を解説していきます。
社外サスペンション慣らし運転の方法
社外サスペンションへの組み替えが終わったら、500km~1000kmは優しい運転を心がけるようにしましょう。
急な操作や荷重が多くかかるハイスピードでのコーナリングなどは控え、サスペンションの動きを良くすることに重点をおいて走ることがポイントです。
また、減衰力を調整できるサスペンションの場合、減衰力は少し柔らかめのセッティングにしておくと、コイルやショックアブソーバーの動きが滑らかになります。
慣らし運転終了後
慣らし運転が終わったら、アライメントの調整とサスペンション取り付け部分の増し締めをしましょう。
これは、製品の精度が高くなっているとはいえ、車体とのマッチングやサスペンションの動きなどにより、取り付け部分などが緩んでしまう可能性があるからです。
サスペンションの慣らし運転が指定されているクルマ
多くのクルマは、メーカーから慣らし運転を指定されることはありません。
しかし、なかにはメーカーから慣らし運転の詳細な方法が指定されているクルマも存在します。
そのクルマは、日産 GT-R。
日本が誇るマルチパフォーマンススーパーカーであるGT-Rは、なんと2000kmまでメーカー指定の慣らし運転をしなければなりません。
0~500kmまでは、緩やかなアクセル操作、エンジン回転数は3500rpm以下、急操作および悪路の走行を控えるよう、指示されています。
そして500km~1000kmまでは、低速ギア(1~3速)で緩やかなアクセル操作、急操作および悪路走行を控え、ショックアブソーバーの設定をコンフォートモードにするよう指定。
1000km~2000kmまでは、Mレンジを使ってエンジンの回転数を高めに維持し、急操作および悪路の走行を控え、ショックアブソーバーの設定をコンフォートにしておくようメーカーから指定されています。
そうして2000kmを超えると、いよいよ本領を発揮する段階に入ることができるのです。
高いパフォーマンスを発揮させるために、2000kmを走行するまでメーカーが指定する慣らし運転をしなければならない日産 GT-Rには、慣らし運転の項目に、ショックアブソーバーのモード指定があることからも、サスペンションの慣らし運転は必要といえるでしょう。
まとめ
サスペンションの慣らし運転が必要かどうかという議論には、賛否両論あります。
しかし、愛車と長く付き合うためにも、サスペンションの慣らし運転は、しておいた方が良いというのは間違いありません。
純正装着されているサスペンションはもちろん、社外サスペンションを装着したときには、より慎重な慣らし運転と慣らし運転後の調整が必要になることを覚えておきましょう。
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