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伝統の称号を受け継ぎニュルで鍛えたトヨタ最後のスポーツワゴン、カルディナGT-Four!

ステーションワゴンブームも終わりに近付いた2000年代はじめ頃、「結局、レガシィの勝ちで終わるのか」と思われた2リッター級スポーツワゴンカテゴリに、最後のもうひと押しをかけたのが、トヨタの3代目カルディナに設定された「カルディナGT-Four」です。数年前に生産を終了したセリカGT-Fourから称号を受け継ぎ、ワゴンの形はしてるものの、あくまでスポーツカーとして売り出されました。

トヨタ カルディナGT-Four Photo by Andrew Smith

最強の称号を受け継いだ、トヨタ最後のスポーツワゴン

トヨタ カルディナGT-Four Photo by Rutger van der Maar

1990年代に、初代スバル レガシィツーリングワゴン(1989年発売)によって、日本でステーションワゴンブームが巻き起こり、走行性能が高くて快適、荷物も積めて、便利で速くて楽しい車を求めるユーザーが急増しました。

それまでは、「ワゴンなんてライトバンの乗用登録仕様でしょ?」と冷淡だったユーザー達から突然の熱烈コールが送られ、面食らった各メーカーでしたが、ともかく既存車の化粧直しや新型車の開発に、熱心に取り組みます。

こうしてトヨタも1992年にコロナ/カリーナ系の新型ワゴン、初代「カルディナ」を発売。3年後には、遅まきながら2リッタースポーツツインカムの3S-GEを搭載したスポーツグレードを追加しますが、どうもトヨタにしてはパッとしません。

それもそのはずで、初代カルディナにはトヨタ店向けのカリーナバン/クラウンバンと、トヨペット店向けコロナバン/マークIIバン後継として、「カルディナバン」がラインナップされており、乗用登録版カルディナとデザインがほぼ同様だったため、「ライトバンに毛が生えたようなもの」から、少しも脱却できていませんでした。

そこで2代目カルディナは、初代を継続生産したカルディナバン(後にサクシードへ更新)から完全に独立し、スタイリッシュなスポーツワゴンとして再出発。

3S-GE搭載車のほか、ターボ版3S-GTEを搭載した4WDターボの「GT-T」をラインナップします。

2代目カルディナもライトバン仕様はなかったとはいえ、デザインは初代からのキープコンセプト気味で、どこか実用車の雰囲気が抜けなかった事もあり、2002年9月に実用性よりデザイン優先のスタイリッシュな3代目カルディナに生まれ変わります。

さらに、1999年にはセリカ(6代目T200系)が7代目へ代替わりした際に、レビン/トレノの後継も兼ねたダウンサイジングにより、4WDターボ「GT-Four」が廃止されていた事もあり、3代目カルディナの4WDターボ車は、約3年のブランクを経て、ラリーで活躍した伝統の称号を襲名。

「カルディナGT-Four」が誕生したのです。

セリカGT-Four後継というより、先代GT-Tの進化版

トヨタ カルディナGT-Four/出典:https://www.favcars.com/toyota-caldina-gt-four-t240-2005-07-wallpapers-189203.htm

同じトヨタ車という事もあって、「セリカGT-Fourの後継」とみなされる事も多いカルディナGT-Fourですが、当時カローラ店で販売されていたセリカに対し、カルディナはトヨタ店とトヨペット店で販売されていたので、ユーザー層が異なります。

どちらかといえば、2代目でもラインナップしていた4WDターボ「GT-T」へ、ちょうど空いていたGT-Fourの称号を譲ってハクをつけたと言ったところでしょう。

実際、2代目までと比べて、全高を50mmも下げ、リアに向かってなだらかに下がっていくクーペルックのルーフラインなど、ワゴンとしての実用性よりスタイル重視のデザインは、「VIBRANT CRARITY(わくわく、さわやか)」をキーワードとした、砲弾型フォルムでした

そして4輪ストラットから、リアをマルチリンク式に変更したサスペンションや、Nエディションにはフロントに専用倒立型ショックアブソーバーとコイルばね付きパフォーマンスロッド、リアに専用モノチューブ型ショックアブソーバーとトルセンLSDも装備するなど、本気度の高さが伺えます。

ただ、GT-Tにラインナップされた5速MTは設定されず、シーケンシャルシフトマチック4速ATのみ。

その頃には2リッターターボでも常識化していた280馬力自主規制の上限を狙わず、260馬力にとどめた最高出力などから、ワゴンのカタチをしたスポーツカーというより、安定性重視の長距離巡航向けGTという性格でした。

ラリーやダートトライアルなど、国内格式のモータースポーツへ出場するなら必須の「JAF登録車両」にも登録されなかったため、その高性能を公道以外で発揮できるのは、初心者向けイベントや、JAF非公認の草イベント、サーキット走行会などに限られています。

最大のライバルと目したはずの4WDターボワゴン、スバル レガシィツーリングワゴンGT(4代目BP5)には5MTもしっかりと設定され、JAF登録も済ませていたのとは対象的ですが、むしろそういうステージへ持ち込まずとも、誰もがその高性能を気軽に堪能できるという意味での、「GT-Four」だったのかもしれません。

カルディナGT-Fourは、本当に80スープラより速かったのか?

トヨタ カルディナGT-Four /出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-caldina-t240-2002-04-189198.htm

ところで、カルディナGT-Fourには「ドイツのニュルブルクリンクサーキット(北コース)でのタイムアタックで、80スープラより速かった!」という逸話残っています。

いくら10年近く後にデビューした4WDターボとはいえ、公称最高出力280馬力で大トルクの3リッターツインターボ2GZ-GTEを搭載したFRスポーツクーペより、20kgばかり軽いだけの260馬力のスポーツワゴンが速い事など、ありえるだろうかというのが、昔から議論の対象でした。

この真相については、「トヨタが販売マニュアルへ記したラップタイムが50秒も速くミスプリントされており、それがそのままメディアへリークされ、ユーザーに広まってしまった」という話が当時の雑誌に掲載されていたなど、今では真偽の確認が難しい説もあり、真のラップタイプも8分56秒説、同49秒説とバラけています。

ただ、ネット上に残る当時の報道を確認すると、発表試乗会で「ニュルブルクリンクサーキットでは8分46秒のタイムを記録し、30年ほど前に持ち込んだレーシングマシン(車種不明)より安定した挙動だった。」と、当時のトヨタでマスタードライバーを務めていた成瀬 弘 氏(故人)が語っていたようです。

それに対して80スープラRZ(ターボ)のラップタイムは8分58秒とも言われていますが、あくまでトヨタが正式にアタックした記録というわけではないようで、発表試乗会での話も総合すると、「そもそもトヨタ自身が、80スープラよりカルディナGT-Fourが速いと言ったわけではない」という事になります。

主要スペックと中古車価格

トヨタ カルディナGT-Four /出典:https://www.favcars.com/toyota-caldina-gt-four-t240-2005-07-images-189200.htm

トヨタ ST246W カルディナ GT-Four Nエディション 2002年式
全長×全幅×全高(mm):4,510×1,740×1,445
ホイールベース(mm):2,700
車重(kg):1,490
エンジン:3S-GTE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,998cc
最高出力:191kw(260ps)/6,200rpm
最大トルク:324N・m(33.0kgm)/4,400rpm
10・15モード燃費:10.6km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク

(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
32万~49.8万円・7台


トヨタ最後のスポーツワゴン、最後の2リッター4WDスポーツ、最後の3S-GTE

トヨタ カルディナGT-Four Photo by FotoSleuth

宿命のライバル、スバル レガシィツーリングワゴンへ対抗すべく「GT-Four」の称号を得て挑んだ3代目カルディナでしたが、モデルチェンジ翌年に4代目レガシィが3ナンバーボディを得て登場すると、パワーでもMTの設定でも劣ってしまいます。

驚いたことに燃費(レガシィツーリングワゴンGTの10・15モード燃費は5MT/5ATともに12.0km/L)すら劣り、ホイールベースが長い分だけ室内長は勝ったものの、全高を下げたことで室内高が低くて狭さを感じるなど、パッケージ面でもかないませんでした。

ワゴンの実用性を犠牲にしてでもデザインを優先し、当時のユーザーがどちらを選ぶかというトヨタの賭けは、残念ながら涙を飲む結果となり、トヨタはこのカルディナGT-Fourを最後に、スポーツワゴンから撤退。

同時期にクラウンエステートやマークIIブリットも廃止され、ミニバンやSUVへ注力していく事となります。

その後、スポーツ4WDターボは近年になってGRヤリスで復活したものの、あくまで1.6リッターのコンパクトでパワフルな新時代スポーツです。

古風なメカニカルノイズと過給音を車内にけたたましく響かせながら、豪快に加速する3S-GTEエンジンもカルディナGT-Fourが最後となり、わずかに流通している中古車だけが、かつてのトヨタによる最後の果敢な挑戦を現代に伝えています。

 

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著者:兵藤 忠彦

ダイハツ党で、かつてはジムカーナドライバーとしてダイハツチャレンジカップを中心に、全日本ジムカーナにもスポット参戦で出場。 その後はサザンサーキット(宮城県柴田郡村田町)を拠点に、主にオーガナイザー(主催者)側の立場からモータースポーツに関わっていました。

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