1990年代に、突如として「ワゴンであれば猫も杓子も大人気!」というステーションブームが巻き起こったかと思うと、アッという間に終わった事がありました。各クラスで短くも熱いライバル同士の争いがあった中でも、火付け役のスバルがラインナップしていない「Lクラス」で当初人気を独占し、後にクラウンエストートと激闘になったのが、日産の初代「ステージア」でした。
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「ここならスバルはいない」無風のLクラスワゴンへ降臨
1989年に発売されたスバル復活の一撃、初代「レガシィ」はツーリングワゴンが大ヒット作となり、それまで「ライトバンでしょ?仕事用の車に休日も乗ってるの?」と、かなり安く低く見られていたステーションワゴンが、一躍、日本市場での人気ジャンルに躍り出ました。
その勢いたるや、もはやワゴンなら何でも良いのだろうとばかりに、ライトバンのビジネスワゴン仕様(乗用登録)も含めた古くからの継続生産車も人気となり、各社ともバブル崩壊での販売の失速を取り戻さんと、ビッグマイナーチェンジで新しく見せたワゴンや、全くの新型ワゴンを挙ってラインナップします。
しかし、やはり人気の中心は火付け役のスバル車で、ライトバン仕様を持たないワゴン専用ボディで人気を博し、同じくワゴン専用ボディのホンダ USアコードワゴンを除けば、トヨタですら「スバルにはかなわん」という状態へ陥ります。
そして、いつしかワゴンは「3列目を畳めばワゴンにもなる」ミニバンへ取って代わられ、スバル以外は細々と売るだけになっていきました。
とはいえ、スバルがラインナップしていないジャンルなら、まだ勝負になる!というスキマはあるもので、それが2~3リッタークラスのLクラスFRワゴンだったのです。
LクラスFRワゴンカテゴリでは、1990年代半ばになってもまだ、トヨタ クラウンやマークII、日産 セドリック/グロリアといったアッパーミドル~プレミアムクラスがラインナップされており、1980年代半ばに発売された旧型モデルのバン/ワゴン仕様が改良を受けつつ何となく継続販売され、ワゴンブームの影響が皆無ではないとはいえ、無風状態もいいところでした。
そこへ1996年10月、C34(7台目)ローレルをベースにワゴン専用ボディで最新鋭の初代ステージアが登場し、人気となります。
そしてワゴンは欲しいけど古かったり格下はイヤという保守層から、もっと速くて立派なワゴンが欲しいという若者まで、初代ステージアは引っ張りだこの大人気となりました。
しかも、あくまでローレルがベースとはいえスタイリングはスカイラインに近く、当時デザインの評価があまり芳しくなかったR33(9台目)スカイラインよりスマートでスタイリッシュに見えたこともあり、スポーツセダン層にとっても無視できない存在となったのです。
さらに日産は、スカイラインGT-R用のRB26DETTエンジンを搭載した、5MT&4WDの「260RS」を、しっかりとオーテックに作らせていました。
長いオーバーハングと直線的なデザインで、高級感とスポーティさはベース車以上
デビュー直前のスクープなどでその姿が明らかになっていくにつれ、初代ステージアの特徴として話題になったのは、他のステーションワゴンでは類を見ないほど長いオーバーハングと、その後端までピンと張るように伸びた、長大かつ直線的なルーフラインでした。
Cピラーが上に向け前傾している部分だけが、「セダンのキャビン直後にラゲッジを付け足した感」があったのは御愛嬌でしたが、ボディに対してキャビンがあからさまに大きく、デザイン上のバランスに難があったその当時のスカイライン/ローレルに比べ、実際の全高は高いのに、ルーフが長い分だけキャビンが低く見えます。
それで全幅はスカイライン/ローレルとスカイラインGT-Rの中間くらい(1,755mm)だったため、いかにもスポーティなワイド&ロースタイルという印象です。
しかも、直立に近いボルボ850風なテールゲート、全体的に丸みというよりスクエアに近く、傾斜した部分もパキっと角が立ったメリハリのあるデザインは、かつての510ブルーバードのスーパーソニックラインや、B12”トラッドサニー”のスクエア(四角)感とも共通性が感じられ、変に曲線を多用するよりシャープさが感じられました。
エンジンはベース車同様に、2リッターSOHC/DOHC直6自然吸気と、2.5リッター直6DOHC自然吸気およびターボでしたが、スカイライン/ローレルにはなく、セドリック/グロリアにしか設定のないアテーサE-TS 4WDの「2.5リッター4WDターボ車(RS FOUR系)」も設定されたので、ベース車より格上の動力性能を誇ります。
もちろん型式がローレルベース(WC34)でも、「スカイラインワゴンGT的なクルマ」とされたため、「スカイラインGT-Rワゴン的な」オーテックバージョン260RSも作られましたが、それだけでは満足せず、主にR34系スカイラインや同GT-Rのフロントを移植した通称「スカージア」など、フェイス スワップ仕様のカスタムカーも数多く存在しました。
主要スペックと中古車価格
日産 WGNC34 ステージア RS FOUR V 1996年式
全長×全幅×全高(mm):4,800×1,755×1,495
ホイールベース(mm):2,720
車重(kg):1,620
エンジン:RB25DET 水冷直列6気筒DOHC24バルブ ICターボ
排気量:2,498cc
最高出力:173kw(235ps)/6,400rpm
最大トルク:275N・m(28.0kgm)/4,800rpm
10・15モード燃費:7.7km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F・R)マルチリンク(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
260RS以外:9.9万~299.9万円・27台
260RS:195.9万~528万円・8台
今はGT-Rワゴンな260RSの中古車が意外に穴場?
初代ステージア発売後もしばらくは、同クラスFRワゴンのライバルが全くの不在という状態で、1999年になってようやく70系マークIIワゴン/130系クラウンワゴン後継として、170系「クラウンエステート」が登場し、ステージアの独占状態は終了します。
それでもクラウン系とはだいぶ雰囲気の異なる車のちめ、1998年のマイナーチェンジを経てもなお引き続き人気だったものの、モデルチェンジした2代目はV35スカイラインベースのため、当然V6エンジンを搭載。
初代ステージアは日産最後の、そして最強の直6ワゴンとして、2001年10月に販売を終えています。
その頃になるとステーションワゴンブームはすっかり沈静化し、2代目ステージアもライバルもパッとしないままその代限りで姿を消してしまいました。
そのため、初代ステージアは国産Lクラスワゴンの短くも熱い全盛期における、最大の名作だったと言えそます。
おかげで通常モデルも同時代のスカイライン並の人気で、260RSに至ってはプレミア価格がついていますが、高いと言ってもR33スカイラインGT-Rほどではないため、「豪快な4WDスポーツワゴンに乗りたい!」というユーザーにとっては、案外穴場かもしれません。
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