車のカスタムで人気なのが、車高を下げる「シャコタン」です。専門知識があるショップで、理想の車高に調整するのもありですが、基本をつかむことでDIYでの調整も可能です。その際に、絶対に覚えておきたい「レバー比」というものがありますが、レバー比とは、いったいどういうものなのでしょうか。車高調整の方法や法規についても、合わせてご紹介します。

出典:https://www.nismo.co.jp/products/factory_line/sports_suspension/index.html

レバー比とは

Photo by Jake Archibald

車高を下げるときに、必ず覚えておきたいのが「レバー比」です。

レバー比は、車高の調整で変えた長さと、ホイールが取り付けられている部分の移動する量の比率を表したものとなります。

下記の写真は、フロント側のサスペンション周りで、よく使用されるストラット式と呼ばれる形式です。

出典:https://global.toyota/jp/album/images/28125158/?_ga=2.221977560.171936897.1620801698-453689917.1620801698

一番下にあるロアアームと呼ばれる部分と同一線上に、サスペンションのエンド部分が取り付けられているのが分かると思います。

仮に、この型式の車高調で1センチ長さを短くしたら、同じようにタイヤは1センチ移動して1対1の関係性となり、レバー比は1。

では、レバー比が1ではなくなるのは、どのような場合でしょうか?

下の画像をご覧ください。

出典:https://global.toyota/jp/album/images/21800077/?_ga=2.60947948.153181444.1620801630-1625341391.1620801630

先程のレバー比1とは違い、スプリング部分がロアアームの途中に取り付けられています。

この形式では、スプリング部分で車高調整を行っても、タイヤの動く量は同一ではありません。

仮に、車高調で1センチ長さを短くすると、タイヤが1.5センチ移動した場合、レバー比は1.5。

この原理を知らずに車高を調整をすると、思っていたよりも下がってしまったり、上がってしまったなど、トラブルになりかね無い重要なポイントです。

車高だけでない、レバー比の重要性

出典:https://global.toyota/jp/album/images/23067384/?_ga=2.94062106.688720717.1620802730-1512045248.1620802730

一般的な車は、エンジンが搭載されるフロントが重くリアが軽くなっていますが、バネレートを見ると、フロントに比べてリアが硬い車両があります。なぜなのでしょうか?

それは、多くの車のレバー比が、フロント1、リア1以外になっているからです。

テコの原理を思い浮かべると、支点、力点、作用点の3つの点から成り立っています。

レバー比が1以外の場合、支点はロアアームの付け根、力点はタイヤ、作用点は車高調整(スプリング)部分と考え、レバー比、フロント1・リア1.5の車両があったとします。

リアはテコの原理が働いてスプリングを縮める力も1.5倍となり、フロントと同じような柔らかいバネでは十分に力を発揮することができないため、バネレートが高く設定されているのです。

なお、バネレートは、スプリングを1ミリ縮ませるのに必要な力の数値です。

レバー比に次いで重要な、ACF

出典:https://global.toyota/jp/album/images/29933051/?_ga=2.54582765.799210122.1620802051-1412060247.1620802051

レバー比については、ACF(Angle Corection Facter)も一緒に考える必要があります。

これは、足回りのセッティングを行う際の、バネレートなどを計算式で出すときに使用する補正係数です。

サスペンションの取り付けをよく見てみると、タイヤの中心線に対して斜めに取り付けられていることが多く、バネを縮める力は真っ直ぐに掛からないので、その力を正確に算出するために必要な係数となります。

なお、この補正係数を求める方法は、車と数学の知識が必要で、かなり難しいので割愛させて頂きます。

足回りセッティングは非常に難しい

出典:https://global.toyota/jp/album/images/29933051/?_ga=2.54582765.799210122.1620802051-1412060247.1620802051

理論上は、このレバー比によってバネレートなどを決めれば良いのですが、実際はそう簡単にはいきません。

先述したACFやその車の特性、どのような場面で使用するのか、サスペンションの形式などの様々な要因から計算し、足回りのセッティングを熟練した職人が行うことにより、ビシッと決まったものとなります。

ただ単に、足を硬くすれば良いや、車高を落とせばいいと思ってセッティングをしてしまうと、酷い乗り心地になってしまったり、曲がる性能が悪くなってしまうデチューンに向かってしまうため、注意してください。

車高調整のやり方

出典:https://www.nismo.co.jp/products/factory_line/sports_suspension/index.html

ここからは、DIYで車高を調整する方法を紹介します。

足回りを触る作業になるので、安易な気持ちで開始すると、安全面に於いても危険です。整備不良にもなりかねないので、十分な知識と作業ができる環境が揃っている状態で行いましょう。

少しでも不安な場合は、プロに任せるのが無難です。

取り付け例は、フルタップ式の場合となります。

サスペンションが見える状態に

出典:http://ohlins.czj.jp/auto/Products/BTO/S15.html

ジャッキアップをし、タイヤを外したサスペンション周りは、泥などで汚れていることが多いので、まずは綺麗に洗うとことで、この後の作業がしやすくなります。

車高を調整するためのネジ部分には潤滑剤を付け、動きやすくするといいでしょう。

車高調整

出典:http://ohlins.czj.jp/auto/Products/BTO/JZA80_P.html

普段はロックが掛かっていて調整ができないため、専用のレンチでロアブラケットのロックシートを緩めます。

・下げる場合

レーバー比を考慮して下げたい長さ分のロックシートを動かし、スプリング側にあるスプリングシートを締め付ける方向に回すと、ロアブラケットに本体が入り込んでいき、車高が下がります。

・上げる場合

スプリング側のロックシートを緩む方向に回すと、ロアブラケットから本体が出てくるので、上げたい分を出すと車高が上がります。

最後に、ロアブラケットのロックシートを締めます。

アライメント調整

Photo by Wei Hsin Li

車高を変えると、足回りのバランス アライメントが狂います。

そのままの状態で走行すると、真っ直ぐ走らなかったり、タイヤが偏摩耗したりと良いことはないので、きちんと調整を行いましょう。

試走

Photo by Ken Lund

最後に試走を行い、不具合がないかの確認を行います。

車高に関する法規

Photo by MIKI Yoshihito

カッコいいからと、車高を地面スレスレまで下げてしまうと、整備不良で違反となり、道路運送車両の保安基準、第三条には以下のように定められています。

(最低地上高)
第三条 自動車の接地部以外の部分は、安全な運行を確保できるものとして、地面との間に告示で定める間げきを有しなければならない。

その細目告示第二節 八十五条では、「自動車の地上高(全面)は9センチ以上であること」と記載されており、この条件を満たない状態で公道を走行すると、整備不良で違反切符を切られます。

なお、この9センチは以下の部分を除くとされています。

(a) タイヤと連動して上下するブレーキ・ドラムの下端、緩衝装置のうちのロア・アーム等の下端
(b) 自由度を有するゴム製の部品
(c) マッド・ガード、エアダム・スカート、エア・カット・フラップ等であって
樹脂製のもの

さらに車高の測定方法に関しても細かな決まり事があるので、もし車高が保安基準に適合しているか不安な場合は、以下の条件において計測してください。

地上高は、次の方法により求めるものとする。
(1) 測定する自動車は、空車状態とする。
(2) 測定する自動車のタイヤの空気圧は、規定された値とする。
(3) 車高調整装置が装着されている自動車にあっては、標準(中立)の位置とする。
ただし、車高を任意の位置に保持することができる車高調整装置にあっては、車
高が最低となる位置と車高が最高となる位置の中間の位置とする。
(4) 測定する自動車を舗装された平面に置き、地上高を巻き尺等を用いて測定す
る。
(5) 測定値は、1cm未満は切り捨てcm単位とする。

もし、不安なら知識のあるショップで見てもらいましょう。

まとめ

車のカスタムの中でも簡単に行え、イメージを大きく変えることができる、車高調整式サスペンションですが、足回りのセッティングを変えることになるので、乗り心地が変わったり、車の特性が変わったりしてしまいます。

交換する際には、街乗りがメインなのかスポーツ走行がメインなのか、色々な条件を加味した上で、使用用途にあったアイテムの購入をおススメします。