2016年のスーパー耐久第2戦SUGO「3時間耐久レース」の決勝レースが15日、スポーツランドSUGOで開催された。アクシデントが相次ぎ3度のセーフティカー導入される大波乱のレース展開。その中で勝敗を分けたポイントはどこだったのか、詳しく振り返っていく。

Photo by Tomohiro Yoshita

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2グループ分けによりハイペースの序盤戦

3時間耐久で争われる今回のSUGOラウンドが、ST-X,1,2,3クラスの「グループ1」とST-4,5の「グループ2」に分かれて決勝レースが開催された。

S耐ならではの混走シーンが少なくなったが、その分最高峰のST-Xクラスは#24スリーボンド日産自動車大学校GT-R、#5 Mach MAKERS GTNET GT-R、#3ENDLESS・ADVAN・GT-Rがリード。GT-R勢同士のハイペースがバトルが序盤から展開された。

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ところが、開始から30分を過ぎると早くも波乱が発生。28周目にコースオフしたマシンの回収のためセーフティカー(SC)が導入される。ここから順位が目まぐるしく入れ替わり、戦況を把握していく混戦に突入していった。

このSCのタイミングを利用して、上位陣は早めに1回目のピットストップを敢行。今回はドライバー交替を含むピットストップを最低2回行わなければならない。しかし、トップの24号車はステイアウト(コース上に留まること)を選択したのだ。

※ここがポイント(1)「24号車のみがステイアウトを選択」

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ST-Xクラスでは国内トップレースでの参戦・優勝経験がある「プラチナドライバー」を1人登録することができるが、レース中で走れる時間は全体の40%までの制限されている。

2番手以下を走っていたライバルたちのほとんどは中盤、もしくは最終スティントでプラチナドライバーを担当させる作戦だったが、24号車のプラチナドライバーである藤井誠暢は逆にスタートを担当した。

もちろん、ここで入っても何も問題はないが、1時間12分走れるにも関わらず45分程度でバトンタッチしてしまうのは、得策ではないと判断。

レース再開後に再びリードを広げて残る2人にステアリングを託すことにしたため、ピットには入らなかったと考えられる。

マシン回収もスムーズに終わり33周にレースが再開。予定どおり藤井は猛プッシュで後続を引き離しにかかり、自チームのピットストップ時間を稼ぎにかかる。しかし、彼らも予想していなかった“2度目の誤算”が待ち受けていた。

わずか数周しか経っていないにも関わらず2度目のSC導入が通告される。今度は馬の背コーナーでST-1クラスのマシンがクラッシュしたためだ。

ドライバーは無事だったが、クラッシュパットに突っ込みマシンは横転。回収には時間がかかってしまう。

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これを見て24号車はピットインし内田優大にバトンタッチ。結果的に4番手に後退してしまうが、悪影響を最小限に抑えることに成功。

限られた時間の中でリードを作った藤井のパフォーマンスが光った前半スティントだった。

2番手を走っていた5号車GT-Rがスピン

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コースがクリアになり46周目にレース再開。改めて仕切り直しになるかと思われたが、またアクシデントが発生。51周目の最終コーナーでST-2クラスのマシンがトタブルでストップ。

この時に出たオイルに乗って2番手を走行していた5号車がスピン。マーシャルの手を借りて再スタートを切るがトップから周回遅れとなってしまい勝負権を失ってしまう。

このオイル処理のために3度目となるSCが導入。オイルが広範囲に出ていたこともあり、清掃車の出動する事態。約30分にわたってSC先導状態が続いた。

終盤はニッサンGT-R対メルセデスSLSのスプリントバトルへ

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この間にST-Xクラスは各車が2回目のピットを完了。残り1時間の61周目に再スタートが切られた。

度重なるセーフティカーの間に、#10Adenau SLS AMG GT3がトップに浮上したが、すぐ背後に2番手まで追い上げてきた24号車、さらに3号車GT-Rと#8ARN SLS AMG GT3も加わり、ニッサンGT-R対メルセデスSLSの計4台による大バトルとなった。

その中でも一番勢いがあったのが24号車の平峰。10号車を駆るマイケル・グリーンを攻め立てプレッシャーをかけていく。しかしグリーンも優勝への千載一遇のチャンスを手放すまいと必死にブロック。なかなか突破口を見出せず10ラップ以上にわたって攻防戦が続いた。

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それでも優勝への執念が強かった平峰は、ついに80周目のS字でインを突きトップに浮上。さらに3号車の峰尾恭輔もメルセデス2台をかわし、2番手に浮上した。

最後はGT-R同士の争いとなったが、平峰が最後まで後続を寄せ付けない走りを見せトップチェッカー。開幕2連勝を飾った。

※ここがポイント(2)「各ドライバーが最高のパフォーマンスを発揮」

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一度はSCの関係でトップの座を譲ることになった24号車だが、最後には混戦を制して再びトップの座に戻ってチェッカーを受けた。

ただ今回はSC出動回数も多く、一つの判断を誤れば大きく順位を落とす可能性も十分にあった。その中でチャンスを引き寄せたのは、それぞれの場面を担当したドライバーが、その場その場で最高のパフォーマンスを発揮したからと言えるかもしれない。

前半の藤井は1回目のSC後からの短い時間で後続との差を広げるエースらしい「速さ」を見せつけたレース運びを披露。結果的にピットストップで順位を落としたものの、あれがなければ最終的な逆転も不可能だっただろう。

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中盤の内田はオイルも出るなど混乱が多かったが、その中でミスやアクシデントもなく走行。そして先行するライバルに後れをとることなく走れたことが、終盤の平峰の逆転劇につながった。

その平峰も少ないチャンスで10号車をオーバーテイク。トップに立って以降は3号車のプラチナドライバーである峰尾相手に一歩も引かない堂々とした走りを披露した。

これらの要素が全て揃ったからこそ、今回の乱戦を制することができたのかもしれない。

まとめ

次戦の第3戦は三重県の鈴鹿サーキットで開催。4時間の耐久レースで夜にチェッカーを受けるなど、これまのS耐になかった演出があるなど、見どころも満載だ。そして、いよいよタイトル争いが激化していくシーズン中盤に突入。SUPER GT、スーパーフォーミュラと並んで見逃すことのできない国内トップレースのひとつである。