2017年の東京モーターショーに『DNコンパーノ』を出展、再び小型セダンへの復帰に意欲を見せるダイハツですが、その元ネタである、1960年代に販売していたコンパーノの後継車としてデビューしたのがコンソルテです。基本的には提携した成果としてダイハツで生産していた2代目トヨタ・パブリカ / パブリカスターレットのOEM車であり、ダイハツエンジンを搭載した独自モデルを持つのが特徴でした。

 

ダイハツ・コンソルテ 2ドアGS / 出典:https://www.classiccarcatalogue.com/DAIHATSU%201974.html

 

 

トヨタと提携しての初仕事!下請け生産していた2代目パブリカのダイハツ版

 

ダイハツ・コンソルテ 4ドア / 出典:https://www.classiccarcatalogue.com/DAIHATSU%201974.html

 

1967年11月にトヨタと業務提携、事実上その傘下となったダイハツ工業ですが、フェローやハイゼットといった軽自動車メーカーとしては存続する一方、小型乗用車 / 商用車はトヨタの下請け開発 ・生産部門としての性格が強まります。

その成果として登場したのがダイハツ池田工場(大阪府池田市ダイハツ町)で生産、1969年4月に発売された2代目トヨタ・パブリカであり、同時デビューしたダイハツ版、その名も『伴侶・提携』という意味のコンソルテでした。

以降、商用車でもライトエース(1970年初代発売)やタウンエース(同1976年)を生産、ダイハツでもデルタ750、デルタワゴンなどの名前で販売するなどトヨタの下請け生産工場として稼働する一方、自ら企画した場合はそのダイハツOEM版を販売する関係が続きます。

もっとも、工場のライン維持に際してトヨタへの依存度が高かったのも事実で、後にはE70系トヨタ・カローラバン / ワゴンの生産終了でFR乗用車ダイハツ・シャルマンの生産継続ができなくなった事もありました。

さらにライトエース / タウンエースバンが2007年に国内生産を終了(現行モデルはインドネシアのアストラダイハツ製)した時は、ダイハツ製FR車のみならず、国内での下請け生産そのものの激減にも直面します。

そうしたトヨタ頼み、トヨタからの大きな影響力を受ける関係というのは、後のトヨタ完全子会社化(2016年8月)を待つまでも無く、2代目パブリカの下請け生産から始まっていたのです。

なお、コンソルテのラインナップは当初は2代目パブリカがベースの2ドアセダン(初期はコンパーノからの伝統でベルリーナと呼称)のみ。

1973年4月に2代目パブリカの上級車、パブリカ・スターレットが登場したことにより、同5月に2ドアクーペが、同10月に4ドアセダンが追加されますが、日野自動車羽村工場で生産していたバンやピックアップはコンソルテには設定されませんでした。

 

単なるダイハツバッジつきパブリカにあらず!ダイハツFEエンジンを搭載

 

ダイハツ・コンソルテ 2ドアクーペ / 出典:https://www.classiccarcatalogue.com/DAIHATSU%201974.html

 

OEM供給(他社で生産している製品の供給を受け、自社ブランドで販売)といえば、自動車の場合は通常、単なるバッジエンジニアリングとしてメーカーや車名のエンブレムをつけかえ、あるいはフロントマスクなど一部デザインや装備を自社仕様にする程度に留まります。

ただし、ダイハツのように『OEM供給を受ける車を自社で下請け生産』している場合は少々事情が異なり、自社のメカニズムやデザインの組み込みが容易となっていて、コンソルテでも各部のデザインがダイハツ仕様となっていたほか、搭載されたエンジンが特徴的でした。

2代目パブリカのエンジンは全てトヨタ製の2U(800cc水平対向)と2K(1,000cc直列4気筒)でしたが、コンソルテはエンジンもダイハツ製のFE(1,000cc直列4気筒)だったのです。

2Kエンジンとはシリンダーのボア(内径)とストローク(行程)が異なり、2Kのボア72.0mm×ストローク61.0mmに対しFEは同68.0mm×66.0mmとショートボア・ロングストロークタイプであり、スペック上の最高出力は同じく58馬力でしたが、発生回転数は500rpm以下でした。

また、最大トルクの発生回転数は同じ4,000rpmだったものの2Kの7.9kgmに対し8.0kgmとわずかに上回り、独自モデルのコンパーノ以来使っていた、低回転からの実用性でわずかに上回るFEエンジンはダイハツのプライドをかけて採用されたと言えます。

もっとも、FEの改良までは認められなかったのか、後に追加されたスポーティグレードやクーペ(パブリカ・スターレットクーペのOEM)用の1,200ccエンジンは、トヨタ製の3Kでした。

なお、FEエンジンはその後も新型FFコンパクトカー(後の初代シャレード)への搭載まで検討されますが、エンジン縦置きFR車用の直列4気筒エンジンでは寸法の関係からタイヤ切れ角の確保が困難であり、コンパクトな直列3気筒CB型エンジン開発へとつながります。

 

日本アルペンラリーやツーリングカーレースで活躍したコンソルテ

 

ダイハツ EP51 コンソルテクーペ(レース仕様) / Photo by 兵藤 忠彦

 

コンソルテが登場する直接的理由『トヨタとの提携』により、小所帯ながらP-3やP-5といった小排気量グランプリカーすら走らせていた、ダイハツ工業本社研究部第4研究室内『RA』グループも1969年6月の鈴鹿1000kmレースを最後に解散。

ダイハツ本体としてはその後も1972年までフェローMAXでミニカーレースに参戦していたようですが、それ以降の活動はスッパリやめてしまいます。

その後はDCC(ダイハツ・コンパーノ・クラブ)を原点とするDCCS(ダイハツ・カー・クラブオブ・スポーツ)および、法人としては別組織なものの所在地は同じだったダイハツ関連企業DRS(ダイハツ・レーシング・サービス)によってモータースポーツ活動を継続。

ただし、1970年代といえばまだダートトライアルやラリー、ジムカーナの全日本選手権が開催されていない時代(全日本ラリー選手権シリーズは1979年から)であり、JAFのモータースポーツリザルトで閲覧出来るイベントにコンソルテの名はなかなか出てきません。

それでもコンソルテや後に登場するシャルマンはレースやラリーでの活躍を続けており、早くも1970年の第12回日本アルペンラリーにて、後にサファリラリーでダイハツチームの監督も務めた寺尾 慶弘氏などがコンソルテ・ベルリーナで参戦した記録が残っています。

その後も1974年の第16回大会まで日本アルペンラリーへの参戦は続きますが、他にはマイナーツーリングカーレースでパブリカ・スターレットやサニー同様、手頃なマシンとして活躍したほか、1983年4月には鈴鹿500kmレースに参戦記録が存在。

さらに同じ1983年12月の全日本ダートトライアル(この時期はシリーズ戦では無く年1戦)にも、改造車のC1クラスでKP61スターレットやB210 / 310サニーに混じり、EP47スターレットが1台参戦しています。

 

 

そして、末期のEP51コンソルテクーペ・レース仕様など後々まで動態保存された個体が残り、ダイハツ車専門ジムカーナ大会『ダイハツチャレンジカップ』の関西戦で高らかにエキゾーストノートを響かせ、名物的存在になっていました。

 

主なスペックと中古車相場

 

ダイハツ コンソルテ ベルリーナ 2ドアデラックス / © TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

ダイハツ EP30 コンソルテ ベルリーナ 2ドアデラックス 1969年式

全長×全幅×全高(mm):3,645×1,450×1,380

ホイールベース(mm):2,160

車両重量(kg):655

エンジン仕様・型式:FE 水冷直列4気筒OHV8バルブ

総排気量(cc):958

最高出力:43kw(58ps)/5,500rpm(グロス値)

最大トルク:78N・m(8.0kgm)/4,000rpm(同上)

トランスミッション:4MT

駆動方式:FR

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

コンソルテ 2ドアデラックス / 出典:http://enautoglobe.com/photo/md/daihatsu-consorte/11/default.htm

 

国産車という括りの中ではかなりマイナーな存在で、紹介されても『2代目パブリカのOEM車でダイハツエンジンを搭載』と軽く触れられる程度なのが、ダイハツ コンソルテです。

しかし、日本自動車史という観点からすれば、生産能力を高めたいトヨタと、単独での生き残りが困難で生産設備の活用、拡充に役立つ提携相手を求めたダイハツや日野とのコラボレーション、その最初の成果のひとつという歴史的には大きな意義のある車でした。

こうして小型車やそのエンジンの開発・生産能力を維持したダイハツは、軽自動車だけでなくコンパクトカー分野でも現在まで高い技術力を保つキッカケを得て、トヨタブランドで販売されたものも含め、数多くのヒット作を生み出していったのです。

 

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