今でこそ軽・コンパクトクラスのタフな4WDといえばスズキ ジムニー / ジムニーシエラくらいしか無くなってしまいましたが、その昔、『コンパクトクラスの本格クロカン(クロスカントリー)と言えばダイハツ!』という時代がありました。次第に日本国内で本格クロカン4WDが求められなくなっていくとひっそりと消えて行きましたが、ロッキーとともにその最後を飾ったラガーも忘れられない名車の1台です。

 

ダイハツ ラガー初期型レジントップ  / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

 

小さいながらも本格クロカン4WD、ダイハツ ラガー

 

ダイハツ ラガー初期型メタルトップ (現地名ロッキー) / Photo by RL GNZLZ

 

1974年、コンソルテと同じFE型1リッターガソリンエンジンを搭載するコンパクト4WDとして登場したダイハツ・タフトでしたが、末期にはトヨタ製1.6リッターガソリンエンジンや自社製2.8リッターディーゼルを搭載するなど、排気量をアップ。

1980年には創業したばかりのトヨタビスタ店で販売するためにトヨタへ初代ブリザードとしてOEM供給され、スズキ・ジムニーとトヨタ・ランドクルーザーの中間的モデルとして国内外で人気となりました。

その後1984年4月にはモデルチェンジと共にラガーと名を変え、引き続きトヨタにも2代目ブリザードとして供給しながら販売を続けます。

そして乗用車ライクなクロカン4WDの流行によって、乗用車登録のワゴンを追加していきました。

しかし、世の流れは本格的な悪路走破性よりも「イージードライブと快適性を持ちつつクロカン4WDの形をしていればいい。」という程度であり、本格的過ぎたラガーは次第に時代遅れの存在となっていきます。

そうして1990年にはトヨタ版の2代目ブリザードが販売を終了しますが、海外での根強い需要があったラガーはその後も生産を続け、日本では1997年4月まで、海外では2002年まで販売されるロングセラーモデルとなりました。

その間、エンジンは異なるとは言えブリザード同様ディーゼルエンジンにターボを組み合わせ、ブリザードの販売が終わってからはインタークーラーも追加。

さらに1993年4月のマイナーチェンジで後期型になると、ボディタイプが乗用登録のワゴンのみに絞られ、サスペンションを前後リーフリジッドからフロント:ダブルウィッシュボーン&トーションバースプリング / リア:5リンクリジッド&コイルスプリングへと一新。

一気に近代的な乗用RV的乗り心地を手に入れると共に大型オーバーフェンダー装着で全車3ナンバー車になりますが、見た目の古さが隠せなかったことや、海外版には存在する5ドア仕様が無かったのが惜しいところでした。

 

そのロッキーもフェローザもラガーかもしれない…かなりややこしい海外名

 

これは現地名ダイハツ フェローザですが、ロッキーには無いメタルトップなのでラガーとわかります。 / Photo by Everyone Sinks Starco (using album)

 

ラガーは日本でこそ『ラガー』ですが、海外版の車名は何種類もある上に、非常に複雑です。

先代と同じ『タフト』や、1960年代のダイハツ小型トラックの車名『ハイライン』はわかるのですが、『ロッキー』としてラガーの写真が出てくると一気に困惑が高まります。

なぜなら日本では1990年に発売されたラガーより一回り小さいクロカン4WDが『ロッキー』なのです。

ではロッキーの海外名はと言えば『フェローザ』なのですが、ラガーを『フェローザ』名で販売している地域もあるようで、海外サイトで『ダイハツ・フェローザ』として紹介されると、一瞬どっちなのだろうと思ってしまいます。

しかもラガーとロッキーは形もソックリなため海外でも悩む人がいるようで、「日本で言えばラガーなのはF70系、同じくロッキーに相当するのはF300系」と、型式で識別しているようです。

もちろん、ラガーにはロッキーに無い丸目2灯ヘッドライト(初期型)や5ドアワゴンモデル(日本未発売)、メタルトップが存在し、レジントップはルーフより一段高くなっているなど、よく見れば相違点が結構あります。

それでも、海外サイトでダイハツ・ロッキーやフェローザという車名を見たら、それが日本ではラガーなのかロッキーなのか、注意深く見る必要がありそうです。

 

意外やモータースポーツにも縁があるラガー

 

珍しくもミニサーキットでスラロームを果敢にクリアするダイハツ ラガー中期型レジントップ / ©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

国内モータースポーツでダイハツ ラガーが活躍したなんて話は聞いたことが無い!という人は多いかもしれません。

もちろん、日本国内ではダイハツチャレンジカップというダイハツ車専門ジムカーナがかつて存在し、その後継イベントも含めてラガーがジムカーナを走る姿を見ることはできました。

また、非常にマイナーなので数はそう多くはありませんが、オフロードイベントでリフトアップされた姿の勇ましいラガーが、懸命に岩だらけの道を走破しようともがく姿も見られます。

しかし、もっと意外なことに海外ラリーで活躍したラガーも存在し、パリ・ダカールラリーやキャメルトロフィーのような長距離アドベンチャーラリーなど、日本ではあまり知られていないイベントにも出場していました。

 

主なスペックと中古車相場

 

ダイハツ ラガー初期型(現地名ロッキー) / Photo by Everyone Sinks Starco (using album)

 

ダイハツ F71G ラガー ターボワゴン・ハードトップ ブリオール 1990年式

全長×全幅×全高(mm):3,735×1,670×1,840

ホイールベース(mm):2,205

車両重量(kg):1,510

エンジン仕様・型式:DL 水冷直列4気筒ディーゼルOHV8バルブ ICターボ

総排気量(cc):2,765

最高出力:85kw(115ps)/3,400rpm

最大トルク:221N・m(25.5kgm)/2,200rpm

トランスミッション:5速MT

駆動方式:4WD

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

ダイハツ ラガー後期型(現地名フェローザ。これは海外版にのみ存在した5ドアメタルトップ)  / Photo by Everyone Sinks Starco (using album)

 

1980年代クロカン4WDブームの中、日本国内では驚くほど一般受けしなかったダイハツ・ラガーでしたが、本当にクロカン4WDを欲するマニアや海外ユーザーにとっては大事な車であり、日本ではともかく海外サイトなどを見るとカスタマイズされた現役の姿がまだ見られます。

むしろ今では日本のマニアの方が、中古車は無い、廃車もなかなか見当たらない、部品取りにできそうな残骸でもあれば、それがブリザードであっても、もったいないので取りに行くという涙ぐましい苦労の連続かもしれません。

全く興味の無い人からすれば「なぜにそこまで?」と思うかもしれませんが、維持や再生、パーツ保管に情熱を傾ける価値のある車『ラガー』のために日本全国どこへでも駆け回るマニアは、本当に実在するのです。

たとえ一般受けせず、数は少なくとも、深い深い沼の底で愛される車なのかもしれません。

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