今でこそトヨタの軽自動車 / コンパクトカー部門としての性格が強いダイハツ工業ですが、かつては貨物車王国で1960年代には多数のトラックやバンをラインナップしていたこともありました。結局トヨタや日産ほどの販売力を持たなかったのでトヨタの傘下入りして今に至りますが、ダットサン トラックなどと同ジャンルのハイラインなど、古い商用車ファンには懐かしい1台かもしれません。

 

ダイハツ ハイライン / 出典:https://www.classiccarcatalogue.com/DAIHATSU%201963.html

 

ブリスカやライトスタウト等とダットサンの牙城に挑んだハイライン

 

ダイハツ ハイライン1962年発売当時のカタログ / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/13-daihatsu-hiline-1962-i.html

 

1958年に小型キャブオーバー型トラックのベスタで4輪自動車に参入したダイハツは、その後もキャブオーバー式、ボンネット式のトラックや軽トラのハイゼットを発売し、ちょっとした『貨物車王国』。

急速に3輪トラックからの入れ替えが進んでいました。

1962年に登場した1t積みトラックのハイラインも、まさにそんな1台です。

 

1,500ccクラスで68馬力と、当時の1t積みトラックの中ではパワフルだったハイライン。/  出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/13-daihatsu-hiline-1962-i.html

 

ハイラインが発売された1962年当時の小型トラックは、トヨタ・スタウトが1.25~1.5t積み、日野 ブリスカが750kg積み、プリンス・ライトマイラーが1.25t積みであったところ、日産のダットサントラックがモダンなデザインと手頃な1t積みでベストセラーとなっていました。

ユーザーとしては1t積みボンネットトラックが「そのくらい積めてサイズ的にもちょうどいいし、乗用車感覚で乗れる。」と好評だったようですが、1t積みは他にマツダ B1500(1961年発売)があったくらい。

後にトヨタがライトスタウト(1963年発売)で、日野が2代目ブリスカ(1965年発売)でダットサン トラックを追撃しますが、ハイラインはそれより先に登場できたわけです。

 

ハイパワーと積載性の高さが魅力

 

同時期のコンパーノ・トラック(上)が500kg積みだったのに対し、ハイライン(上)は1t積みだった。マイナーチェンジで丸目4灯式ヘッドライトになった後の姿。/ 出典:https://www.classiccarcatalogue.com/DAIHATSU%201968.html

 

ダットサントラックの牙城に挑んだ各社の小型ボンネットトラックの中ではマツダ B1500に次ぐ2番手となったハイラインですが、元々の社名が『発動機製造』だったエンジン屋のダイハツは、面目躍如とばかりクラス最強の1.5リッター68馬力エンジンを投入しました。

以下は同時期同クラス車の動力性能比較です。

ダイハツ ハイライン:1.5リッター68馬力

日産 ダットサントラック(320型):1.2リッター55馬力

マツダ B1500:1.5リッター60馬力

トヨタ・ライトスタウト:1.5リッター60馬力

日野 ブリスカ:1.3リッター55馬力

日産 ダットサントラック(520型):1.3リッター62馬力

まさにハイラインは頭1つ抜けており、1クラス上のパワフルさを誇っています。

 

ロングホイールベースで当時最長クラス2.4mの荷台長を誇ったハイライン。 / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/13-daihatsu-hiline-1962-i.html

 

また、スタンダード版のほかにロングホイールベースのロングボディ版もラインナップされており、最大積載量1tには変わりませんでしたが、その荷台長2,400mmもまたクラス最長レベルです。

また、長尺物の積載には、荷台が長いほどキャビン後方の鳥居を使って斜めに乗せる長尺物の確度が緩く安定し、高さ方向へ突き出す量も減るので有利になりますが、そこでハイライン・ロングボディの荷台長はかなりのアドバンテージを得ていました。

 

ハイラインのライトバンなら仕事も遊びもこれ1台。商用ライトバンは休日のレジャーでファミリーカーとして使うのが、1980年代はじめくらいまで常識だった。 / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/13-daihatsu-hiline-1962-i.html

 

さらに、当時の流行を取り入れたベンコラ(ベンチシート&コラムシフト)の採用で3人掛けシートとなっており、ライトバン仕様は後席も合わせて6人乗り。

休日のファミリーカー用途にライトバンが使われる事が当たり前だった当時、手頃なサイズで6人掛けが可能、そしてパワフルだったハイラインは、ここでもライバルに対するアドバンテージを持っていたのです。

ただ、あくまでトラック用途が本分なのでギア比はフル積載時でも十分な加速や登坂性能、容易な発進に重点が置かれ、最高速まで速かったわけではありません。

デザインも乗用車的でヘッドライトは初期が丸目2灯、1965年のマイナーチェンジ後は丸目4灯、後の1969年にビッグマイナーチェンジで内外装が大きく変わり、ヘッドライトが角目2灯に変わると最大積載量が1.25tにアップしましたが、パワフルなため問題はありませんでした。

 

主なスペックと中古車相場

 

スタンダード、ロングボディ、ライトバンと3種あったハイライン / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/13-daihatsu-hiline-1962-i.html

 

ダイハツ F100 ハイライン スタンダード 1962年式

全長×全幅×全高(mm):4,160×1,560×1,590

ホイールベース(mm):2,565

車両重量(kg):1,140

エンジン仕様・型式:FA 水冷直列4気筒OHV8バルブ

総排気量(cc):1,490

最高出力:50kw(68ps)/4,800rpm

最大トルク:113N・m(11.5kgm)/3,600rpm

トランスミッション:4MT

駆動方式:FR

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

内外装を一新、角目2灯のモダンな姿になった末期型のハイライン / 出典:https://www.imcdb.org/v001009534.html

 

クラス最強エンジンと最長クラスの荷室を持ち車内も広々と、デザインも当時のダイハツ車の例に漏れず欧米で流行の手法を取り入れるなど、ライバルへのアドバンテージにあふれたハイラインですが、10年ほどのモデルライフを通してヒット作とまではいきませんでした。

それには既にダットサントラックが定番モデルとして圧倒的な人気を得ていたこともありますが、結局はダイハツはトヨタでも日産でも無いという『販売力の差』という壁を最後まで超えることはできなかったのです。

その後、1967年にトヨタ傘下入りしてからも販売は続けたものの、結局1972年に1代限りのモデルライフを終え、ブリスカが評価された日野のようにトヨタの小型トラックを任されることも無く、ダイハツは新興国向けを除き、小型トラックから次第に離れていくこととなります。

1970年以降は主に軽自動車とコンパクトカーメーカーとなっていくダイハツにとって、1960年代は、このハイラインに代表される「独自に堅実かつ性能や実用性にも優れたモデルを開発できる実力がある。」と証明した時代。

トヨタの1部門のように見られている時代が長いものの、独自開発の許される自動車メーカーとして存続できているのは、ハイラインのような車をかつて作っていたからという自信やトヨタからの敬意があるからかもしれません。

 

[amazonjs asin=”B077P9S5FB” locale=”JP” title=”PHILIPS(フィリップス) ヘッドライト HID バルブ D2S 6000K 2500lm 85V 35W アルティノンWX Ultinon WX 純正交換用 車検対応 3年保証 85122WXX2JP”]

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!