自動車のタイヤは、フェンダーを10mm以上はみ出すと、違法改造車となって車検が通らなくなります。なぜタイヤがフェンダーからはみ出てはいけないのでしょうか。それには国内の車やバイク、歩行者の安全を守るために定められた、「保安基準」が関係しています。今回はタイヤがフェンダーからはみ出してはいけない理由を解説します。
なぜタイヤがフェンダーからはみ出してはいけないのか
車のタイヤがフェンダーからはみ出してはいけない理由は、安全のためです。
もし回転中のタイヤに物が接触してしまうと、物体は簡単に吹き飛ばされ、その衝撃で路面の石が巻き上げられます。
この石が人に当たると大惨事になる恐れがあり、そのような事故を防ぐために自動車のタイヤは、フェンダーからはみ出してはいけないというルールになっているのです。
この内容は保安基準に規定されており、これまではフェンダーからタイヤが一切はみ出てはいけないことになっていました。
しかし2017年6月22日に保安基準の一部が改定され、10mmまでならタイヤがフェンダーからはみ出てもよいことになっています。
保安基準とは
保安基準とは、正式名を「道路運送車両の保安基準」と言います。
これは国内で走る自動車の構造、装置、乗車の定員などの技術的最低限度の基準を定めた省令であり、昭和26年に国土交通省令として制定されました。
公道を走る全てのクルマは、その装置や構造などがこの省令に沿ったものでなければならず、検査や点検、整備などもこの基準に沿って実施されます。
ちなみに、タイヤのフェンダーはみ出しについては、保安基準の第18条 検査規程5-26に規定されていて、車検時は以下のポイントがチェックされます。
自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車
軸中心を通りそれぞれ前方30°及び後方50°に交わる2平面によりは
さまれる走行装置の回転部分(タイヤ、ホイール・ステップ、ホイー
ル・キャップ等)は当該部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外
側方向に突出していないこと。引用元:http://www.oaspa.or.jp/event/2017/2017062301/20170623_02.pdf
また、改定では以下の規定が追加されました。
この場合において、専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員10人以上
の自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及び
そりを有する軽自動車並びに被牽引自動車を除く。)であって、車軸中
心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30°及び後方50°に交
わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分について
は、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出して
いないもの」とみなす。引用元:http://www.oaspa.or.jp/event/2017/2017062301/20170623_02.pdf
つまりこの新たに加えられた規定によって、タイヤはフェンダーから10mmまでなら突出してもよいということになったのです。
ただ飛び出して良いのはあくまで「タイヤだけ」。
ホイールやホイールキャップ、ホイールボルトなどをフェンダーからはみ出させてはいけません。
そのため、車のドレスアップでタイヤとホイールをフェンダーからはみ出すギリギリのラインで合わせようとする「ツライチ」は、見た目のカッコ良さと規定を両立する、理想のカスタムと言えるかもしれません。
なぜタイヤが10mm以上はみ出しても良くなったのか
今回、車のタイヤが10mm以上はみ出してもよくなったのは、「国際的な自動車基準の調和」の観点からで、海外で定められている基準に合わせた流れです。
しかし、よく考えてみればそれもおかしな話であり、「回転中のタイヤに物が接触した場合の被害を抑える」ために従来の保安基準では、「タイヤはフェンダーからはみ出してはならない」とされていたのです。
つまり安全のためにタイヤを一切突出させてはならないとしていたのに、それを取っ払ってしまったわけですから、事故防止の観点から見ると、不安要素が残ります。
しかし、これはあくまで一つの可能性ですが、自動車の関税をなくすために都合が悪いので、従来の保安基準を改定し、タイヤを10mm突出させても良い「国際的な基準に調和」した、と考えることもできます。
その根拠は、リブがフェンダーより突出した輸入車の存在。
保安基準の改定でそれらにフェンダーカバーを取り付ける必要がなくなり、コストの問題が解消され、より多くの車を輸入できるようになりました。
まとめ
2017年の保安基準改定で、タイヤをフェンダーから10mm以内ならはみ出しても良くなったので、車検には通りやすくなったと言えます。
とはいえ、10mmというのは微差の範囲なので、足まわりをカスタムする場合はタイヤがフェンダーから規定以上はみ出していないか、よく確認する必要があることに、変わりはありません。
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