トヨタビスタ店の目玉車種として創業当初から発売され、当初はマークII 3兄弟で最もアバンギャルドなハードトップとして、2代目以降はラグジュアリー性を兼ね備えたスポーティセダンとして歩んできたクレスタでしたが、3兄弟最後の揃い踏みとなったX100系、クレスタとしては最後の5代目でその歴史に幕を閉じることとなりました。
誕生から16年、ついに最後となる5代目クレスタ登場
1990年代前半、先代のデビュー初期こそ流行の3ナンバー専用ボディを持つスポーティセダンとして歓迎されたものの、世は急速にミニバンやSUV、ステーションワゴンといったRVブームに傾いていき、マークII 3兄弟の人気にもかなり陰りが見えてきました。
そこで起死回生、3兄弟の絆を維持しつつも、それぞれキャラクターをより一層明確化したX100系へモデルチェンジ。
クレスタは、5代目となります。
そんなX100系での3兄弟のキャラクターは概ね以下のような感じです。
【JZX100系マークII 3兄弟、それぞれのキャラクター】
マークII:従来からの保守層向けスポーティ&ラグジュアリー路線
チェイサー:レース参戦やTRDスポーツ仕様もラインナップするアグレッシブスポーツ路線
クレスタ:高級ラグジュアリーセダン路線
これによりそれまでほぼ共通だったボディも変わって、マークIIは従来通りロー&ワイド、チェイサーは全長を切り詰め軽快感と厚みのあるフロントマスク、クレスタは居住性向上のためルーフ高を上げたスタイルとなりました。
しかし、モデルチェンジ時点ではそのどれが正解か、それぞれ販売店やユーザー層も違うだけに、何とも結果の読めない展開になってきます。
3兄弟の中でも新世代ラグジュアリー路線を模索
ラグジュアリー路線を選んだクレスタは、先代までと同様のセダンスタイルではありましたが、快適性の向上や豪華内装といったデラックス路線の一方、ターボ車も存在するスポーティグレードこそ残したものの、ターボ車を含むほとんどのグレードから5速MTが廃止されました。
グレード名も以下のように一新されています。
【ラグジュアリーグレード】
スーパールーセント→エクシード
【スポーツグレード】
ツアラー→ルラーン
【廉価グレード】
シュフィール / SC→スーパールーセント / SC
マークIIやチェイサーとは異なる高級ラグジュアリーセダンとしてのイメージを強調するためか、グレード名まで大きく変えましたが、ツアラー系はともかく初代以来伝統の『スーパールーセント』を廉価グレードに貶めてしまう必要性については、疑問が残ります。
実際、後にはクレスタ健在を示すためか、スーパールーセントだけをアピールするTVCMも作られました。
さらにJTCC(全日本ツーリングカー選手権)での活躍などでチェイサー・ツアラーVと、それに引っ張られるようにマークII・ツアラーVの人気が上昇しますが、クレスタ・ルラーンGは4速ATのみでキャラ違いが著しく、せっかくの流れに乗れなかった感も。
特にクレスタから走りのイメージを抜いたことで従来からのトヨタビスタ店ユーザーに与えた影響は大きかったのか、後継車のヴェロッサでは過剰なほどのスポーツイメージを与えられたような印象も残しました。
それでも後輪駆動のクレスタならドリフト!
チェイサーのようにレース参戦こそ無かったものの、5代目に至っても『クレスタ』ブランドは健在ということだったのか、4速ATしか無いものを5速MTに載せ替えてまでドリフトに参戦するユーザーは存在しました。
手頃かつ塊感あるデザインでスポーティなのは先代JZX90であり、JZX100クレスタはスポーティイメージの薄まったデザインでしたが、逆にそれが良いとばかりに派手なタイヤスモークを上げながら、ファンは5代目クレスタを横に向け続けたのです。
主なスペックと中古車相場
トヨタ JZX100 クレスタ ルラーンG 1996年式
全長×全幅×全高(mm):4,750×1,755×1,420
ホイールベース(mm):2,730
車両重量(kg):1,480
エンジン仕様・型式:1JZ-GTE 水冷直列6気筒DOHC24バルブ ICターボ
総排気量(cc):2,491
最高出力:206kw(280ps)/6,200rpm
最大トルク:378N・m(38.5kgm)/2,400rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:FR
中古車相場:4.8万~205万円
まとめ
1980年以来長く続いたクレスタも、2001年6月をもって21年の歴史を終えました。
その次の代は、マークIIがクレスタの後を継いだような4ドア路線に、チェイサーはアルテッツァにバトンを渡し、ヴェロッサはマークIIの新たな兄弟として斬新なデザインと過激なスペックを誇るグレードを準備するという大波乱。
トヨタとしてもこの時期の迷いは相当なもので全てがマークXに統合されるまで続くのですが、クレスタ後継のヴェロッサはそれよりひと足早く、2004年4月のトヨタビスタ店廃止(ネッツ店への統合)で姿を消しました。
トヨタビスタ店と共に生まれたクレスタが、その最後を待たずに廃止されたのはいささか残念でしたが、流行の急激な変化という荒波を乗り切る荒療治の中では、致し方無かったのかもしれません。
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