レオーネまでのスバル車から全面的な新設計、そしてWRCでの奮闘もあり、どうにかスバル復活への道筋をつけた初代レガシィ。1993年10月に発売されたその2代目は、一新したデザインが好評で、ステーションワゴンブームも相まって本格的大ヒット!ビッグマイナーチェンジでついに280馬力の自主規制に到達したエンジンやビルシュタインショックの純正初採用もあり”レガシィ”自体がひとつのブランドとして定着しました。
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“国産最高のステーションワゴン”を確立した2代目レガシィ
1989年に登場するや、それまでの悪路や雪道では信頼できるが、乗用車との洗練度は今ひとつで、どちらかといえば通好みの車だったレオーネなどのイメージを払拭。
幅広い層を納得させた初代レガシィ。
中でも、乗用専用モデルとして設定されたステーションワゴンが、かつては『商用ライトバンの乗用モデル』に過ぎないとされていたイメージを一変させ、日本にステーションワゴンブームをもたらすキッカケとなりました。
その勢いたるや、レガシィ・ツーリングワゴンそのものがステーションワゴンの代名詞に近い存在で、WRCでの奮闘を知らなければ4ドアセダンの姿が霞むほどでした。
また、1993年10月に行われたレガシィ初のフルモデルチェンジでも、そのイメージを反映。
象徴的だったのは、初代がセダンにより米アリゾナ州フェニックスで速度記録に挑戦したのに対し、2代目はワゴンにより米ユタ州ボンネビルでの最高速記録に挑戦。
平均249.981km/hで”世界最速ワゴン”となったことでした。
グレード構成も2.2リッター車の設定や、後に追加されたSUVモデルのグランドワゴンなどツーリングワゴンの方が分厚い布陣で、2代目までのセダンは『大人気モデル、レガシィ・ツーリングワゴンのベース車』としての印象が濃かったものです。
そのため次の3代目は”レガシィB4”と称してセダンを独立モデルのように見せる演出を行いましたが、それだけ人気のあったツーリング・ワゴンは、他社からのフォロワーを続々と生み出します。
しかし、ライバルのほとんどが化粧直しをしつつも実態はライトバンベースだったことから、5ナンバーサイズで日本向きのちょうどいいボディにも関わらず快適性の高い車内と、上質な走行性能を誇る2代目レガシィにはかないません。
その結果、ステーションワゴンブームは一人勝ちのスバルを残して終焉していくことになりました。
国産市販2リッター車初の”280馬力”と、”ビルシュタインショック”の衝撃
モデルチェンジされた2代目レガシィは、セダン(BD系) / ワゴン(BG系)ともに基本的なパッケージは先代と共通ながら、デザインはフランス人デザイナー、オリビエ・ブーレイが手掛け、5ナンバーサイズとは思えないボリューム感と力強さで好評を得ました。
2018年3月現在のレガシィは北米向け需要がメインとなってかなり大柄になりましたが、3代目までは5ナンバーサイズへ頑なにこだわりつつも高い質感が評判となっており、”コンパクトなプレミアムセダン / ワゴン”はレガシィの特徴でもあったのです。
そのためにもデザインや内外装の質感は非常に重要でしたが、大幅なバージョンアップを見せたのはそれだけではありません。
トップグレード(セダンRS / GTおよびワゴンGT)のエンジンはモデルチェンジ当初のEJ20Gでシーケンシャルツインターボ化、230馬力へ出力向上したほか、ホイールベースを延長して後席の足元スペース拡大など、さらなる快適性の向上を図っています。
それでいて、材料や構造の見直しでボディ延長分の重量増大を相殺し、初代と同レベルの車重に抑え、しかもボディの曲げ剛性やねじり剛性さえ向上させていました。
もっともスバル開発陣はこのモデルチェンジだけでは完全ではないと考えたようで、1996年6月にはビッグマイナーチェンジを行って、さらなる商品力の向上に取り組んでいます。
その目に見える2つの大きな成果がエンジンとサスペンションで、トップグレードのEJ20GターボはEJ20Rターボに変更され、インプレッサWRXやランサーエボリューションIVに先んじて、国産市販2リッター車初の280馬力自主規制値(当時)に到達。
そして、これも国産車では初めてドイツのビルシュタイン製ショックアブソーバーを上級グレードに採用して、それまでの国産ショックアブソーバーとは次元の異なる上質感で、コンパクト・プレミアムとしての面目躍如を図ったのです。
それにより、硬さはあるものの決して不快ではなく、ロールはしても決して不安を与えないヨーロピアンテイスト溢れる乗り心地はレガシィ人気を押し上げ、スバルのために工場設備を増設したほど”ビルシュタイン”ブランドも日本に定着していきました。
初成功となった乗用車ベースSUV”グランドワゴン” / “ランカスター”
2代目レガシィがデビューした頃は、ステーションワゴンブームであると同時に、2018年3月現在も一層過熱しながら続くSUVブームが始まった時期でもありました。
これは、現在のイメージで言えばクロカン4WDがほとんどだったRVブーム(※)が1980年代後半バブル時代から続いていた延長戦と言えるもので、乗用車のサスペンションを換えて車高を上げ、クロカン風装飾を施した”SUV風”も数多くあったものです。
(※当時の”RV”の定義は明確ではなく、クロカン4WDのほかにトールワゴンやミニバンを含む場合もあり、現在売れている車の多くはRVブームを源流としているとも言えます。)
三菱 ギャラン・スポーツやスバル インプレッサ・グラベルEXなどは、現在でこそ先見の明があったと言えますが、当時はキワモノ扱いで、各社ラインナップはするものの、なかなかヒット作は出にくい状況でした。
しかし、海を隔てたアメリカでは”悪路走破性に優れた乗用車”の需要は少なからずあり、そもそもスバルがアメリカ市場で足がかりを築いたのも、4WD乗用車を得意としていたことが大きな要因です。
そのため、北米市場からの要望で開発したアウトバックスポーツ(インプレッサ・グラベルEXの北米版)およびレガシィのSUV風アウトバックも、当初はやはり奇異に思われつつ、次第に販売状況が好転していきました。
そこでアウトバックを日本でも1995年8月、最低地上高を上げて前後バンパーやホイールアーチ、2トーンボディカラーなどが専用の、2.5リッターエンジン搭載のSUV風ステーションワゴン”レガシィ・グランドワゴン”として発売。
ほぼ北米版アウトバックそのままでしたが、セダンは設定せず人気のワゴンのみのラインナップや、ライバルと違ってクロカン的装飾を抑えたのも功を呈したのか、日本でもソコソコの人気を得て1997年にはサブネームを”ランカスター”に改称します。
以後、”レガシィ・ランカスター”(4代目ベース以降は”レガシィ・アウトバック”)は、日本でレガシィのステーションワゴンモデルが設定されない期間も含め、定番モデルとして完全に定着したのです。
これは、1990年代半ばの『キワモノ扱い時代』から2018年3月現在の『SUV風が流行の時代』まで、”SUV風モデル”が存続し続けた珍しい例ではないでしょうか。
主要スペックと中古車相場
スバル BG5 レガシィ ツーリングワゴンGT-B 1996年式
全長×全幅×全高(mm):4,680×1,695×1,490
ホイールベース(mm):2,630
車両重量(kg):1,460
エンジン仕様・型式:EJ20R 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICシーケンシャルツインターボ
総排気量(cc):1,994cc
最高出力:280ps/6,500rpm
最大トルク:34.5kgm/5,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:9.8万~59万円(各型含む)
まとめ
初代レガシィは結果的に成功作ではあったものの、いくつか生じた問題点の中で最大のものは、そのデザインだったかもしれません。
アクが無く万人受けする反面、旧来のスバルファンからは「普通になってしまった。」という印象で、デザインに上質感を求める層からも、物足りなさを感じる声が上がっていたのは事実です。
幸い、1992年にはレオーネを完全に置き換える初代インプレッサを発売。
レガシィは廉価版を求める層やモータースポーツ層に応える必要性もあり、モデルチェンジでの思い切ったデザイン一新が大成功しました。
これにより、水平対向エンジンを核としたシンメトリカルAWDという”スバルらしさ”を維持しながら、コンパクトな5ナンバーサイズ車でも高い品質を求めたい”ユーザーのこだわり”にも応えていけるようになっていきます。
初代も革新的でしたが、現在プレミアムカーブランドとして存続しているスバルの原点は、この2代目レガシィに求められるかもしれません。
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