1990年代中盤以降、オペル ヴィータ(本国名コルサ)をキッカケに、高級車を除いたVW ゴルフやポロ以外でも比較的安価でスタイリッシュなヨーロッパ車がよく売れる時代が到来しました。その流れにうまく乗ったうちの1台が、プジョー 206。WRCでの活躍もあって、オシャレなだけではなくスポーティというイメージも強くなったことから、それまでの106 / 205 / 306を上回る、同社の日本での稼ぎ頭となったのです。
ロングセラー、205の後継として日本でヒットした206
フランスの自動車メーカー、プジョーは世界最古の量産自動車メーカーであるにも関わらず日本での知名度は長らく低いままでしたが、1983年にデビューした205が1986年からオースチン・ローバージャパンで販売された事をキッカケに、一気に知れわたっていきます。
205はエンジンとミッションを直列に横置きする、近代的なジアコーサ式レイアウトを採用したFF(フロントエンジン・前輪駆動)車で、特にピニンファリーナのデザインやスポーティな205GTIの存在が当時の欧州車ファンを喜ばせ、プジョーの知名度が上がりました。
日本では1995年まで正規販売されていたので、VW ゴルフなどとともによく見かける海外製コンパクト・ホットハッチの1台でしたが、その205の後継として1998年に登場したのが206。
ピニンファリーナから社内デザインとなったスタイルは先代から一転、キレ長の吊り上がったヘッドライトが特徴的で、国産車とは一線を画した独特の曲線美を持つ、まことにフランス車らしいコンパクトカーでした。
日本では1999年からプジョージャポン(現在のプジョーシトロエンジャポン)で発売し、オートマがなかなか普及しなかったヨーロッパ車らしく5速MTを中心としたラインナップと、そのスタイルでまず走りを好むユーザーから人気を呼びます。
その後WRCでの活躍で人気は高まり、ステーションワゴンやコンバーチブルの追加でバリエーションも豊富となり、プジョージャポンの稼ぎ頭として2007年まで販売されていました。
スポーツイメージと明るいけど派手すぎない洒落たデザインが魅力
206と言えばスポーツカー好きのユーザーにとってWRCの印象が強く、実際WRCでは205T16以来の大活躍を示すのですが、それはあくまで市販車とは異なる世界のWRカーでのお話。
とはいえ2リッターエンジンに5速MTを組み合わせたS16など、106や306でお馴染みだったモデルも設定されていて、「プジョーのネコ足」と言われた絶妙なサスペンションセッティングも健在だったことから、市販車の走りにも高い評価を得ていました。
また、プジョーのロゴにも採用されているライオンのエンブレムがまだ小さい時期のプジョー車であり、派手さは無くバンパーやモール類もボディ同色とは限りませんでしたが、それがまた「オシャレな実用ハッチバック車」としての雰囲気を出しています。
バリエーションは3ドア / 5ドアハッチバックのほか、SW(スポーツワゴンまたはステーションワゴンの略)と2ドアのCC(クーペカブリオレ)がラインナップ。
SWはいかにも実用ステーションワゴンという感じでこれまた派手さはありませんでしたが、CCはコペンなどと同様に電動開閉式ハードトップ式のフルオープンカー。
日本でもコンパクトカーのオープンが少し流行った時期もありましたが、電動ハードトップ時代になるとコンパクトカーでこれを採用する国産車はほとんど無く、その意味でも206CCはニッチな需要をつかんで人気を得たのです。
また、WRCホモロゲーションモデルとして前後バンパーを延長した206GTも登場、バンパー以外はごく普通のスペックでしたが、日本での正規販売は50台のみとあって、なかなか見ることのないレア車となっています。
WRCだけじゃないラリーでの活躍
かつてグループB時代のWRC、そしてグループBラリー廃止後はパリダカ(パリ・ダカールラリー)に持ち込まれて大活躍した205T16や、その後継として同じくパリダカやパイクスピークヒルクライムで活躍したグループSマシン、405T16を擁した名門プジョー。
そのプジョーが206のWRカーでWRCに復活するという事が話題になり、そして実際2000年からマーカス・グロンホルムのドライブで3年連続タイトルを獲得。
2000年と2002年はグロンホルムのドライバーズタイトルとのダブルタイトルを手にしました。
また、ローカルイベントでも活躍、近年でも206RCなどを駆るドライバーがERC(ヨーロッパラリー選手権)に出場するなど、息の長い活躍を見せています。
主要スペックと中古車価格
プジョー 206RC 2004年式
全長×全幅×全高(mm):3,835×1,675×1,440
ホイールベース(mm):2,440
車両重量(kg):1,110
エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,997cc
最高出力:177ps/7,000rpm
最大トルク:20.6kgm/4,750rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:9万~127.8万円(各型含む)
まとめ
プジョー 206は1990年代末頃からアルファロメオやフィアット、シトロエンなどのいわゆる「イタフラ車(イタリア・フランス車)」のブームに乗っかる形で一時期急速に台数を増やしたヒット作でした。
特にハッチバック車は、国産車や日本で最も定着した輸入大衆車VW ゴルフと比べても劣らないくらいの台数が街中で普通に見られたほどで、WRCでの活躍だけではなく、車そのものがデザインなどで高い評価を受けていた1台です。
現在のプジョー車がライオンマークを拡大、日本人としてはやや好みの分かれるフロントマスクになっている事を考えると、かえって今乗ると洒落たフランス車として粋に見えるのかもしれません。
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