『宇宙船』とも呼ばれる、名車『DS』を源流とするシトロエンのサブブランドである現在のDSシリーズは、いかにもフランス車らしい前衛的なスタイリングで見るものを驚かせてくれます。そんなシトロエンの超個性的なスタイリングは今に始まった事ではなく、古くは1960年代から脈々と引き継がれてきた伝統です。BMWやアウディ等のドイツ車の様にデザインを大きく変えない事を伝統とするアプローチとは真逆とも言えるやり方で、常に斬新なデザインを提案し続けるシトロエン。今回は、中でも最もチャレンジングであった名車、シトロエン SMを紹介します。

掲載日:2019.10/29

SM

出典:https://www.mecum.com/lots/CA0819-381015/1973-citroen-sm/

奇才ロベール・オプロン氏によるエクステリア

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出典:https://drive-my.com/en/history/186-robert-opron-giant-of-french-car-design-interviewed.html?start=12

デザインを担当したのは、当時のシトロエンのインハウスデザイナーであったロベール・オプロン氏。

1974年までシトロエンに在籍し、以降2000年まではルノーのデザイナーを担当。

フランス車のカーデザインに大きな影響を与えた人物の一人です。

DSのデザインを担当したシトロエンのデザイナーのトップであるフラミニオ・ベルトー二氏が1964年に死去すると、彼はトップの座を引き継ぎ、SM以外にもCXやGX等の代表作を残しました。

革新的なボディシルエット

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出典:https://www.classicdriver.com/en/article/cars/over-engineered-affordable-classics-episode-1-citroen-sm

キャビンからルーフ後方にかけて絞り込まれたシルエットは非常にユニークかつ未来的で、ルーフとリアパネルは溶接されています。

このシルエットは空力効率が非常に高く、cd値は0.26と現代のスーパーカーと比較しても全く引けを取らない驚異的な数値を記録。

ボンネットは航空機レベルのアルミニウムが採用され、車内ベンチレーション用のインテークが開いています。

また、標準仕様のホイールはステンレス製でしたが、オプションでカーボン製のホイールが用意されていたというのも驚くべきポイントです。

目指すは「FFで200km/h巡行」

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出典:https://uncrate.com/1971-citroen-sm/

1960年代後半は、後のスーパーカーブームへと繋がっていくミドシップスポーツの開発を行うメーカーが多かったのですが、シトロエンはトラクシオン アバンから続くFF方式にこだわりを持っていました。

そのためSMは実験車としての性格が強く、当時は不可能とされていた、前輪駆動で200km/hを超えることを目的に作られたクルマなのです。

シャシーはDSをベースとした2ドアで一応4人乗りとなっていましたが、全長約4.9m、全幅約1.8mとかなり大柄なボディであるにもかかわらず、前部座席と空気抵抗を優先した設計により、後部座席は非常に狭くなっています。

複雑怪奇なエンジンルーム

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出典:https://www.motor1.com/news/71937/auction-car-of-the-week-one-owner-1973-citroen-sm/

エンジンは、当時提携関係にあったマセラティ製のV6DOHCエンジンが搭載されています。

マセラティ・ボーラのエンジンをベースとしているためバンク角は90度となっており、2.7リッター、3リッター、キャブレター仕様と機械式インジェクション仕様が存在。

チェーンによるカム駆動となっていますが、非常に特殊な掛け方であることに加え、DSから受け継いだ、トランスミッションとエンジンを反転させて配置させるという独特なレイアウトと合わさって、極めて複雑な構造をしていることでも有名です。

まとめ

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出典:https://www.motortrend.com/1972-citroen-sm-rear-three-quarter-in-motion-2/

ボディ構造からデザイン、駆動系レイアウトまで非常に革新的な技術がぎっしり詰まったクルマだからこそ、このような芸術的なスタイリングのボディを架装できたとも言えるのですが、その代償としてメカニズムの信頼性に欠け、維持管理の手間がかかりやすいと言われるSM。

それでもSMに対するエンスージアストからの人気は非常に高く、今でも中古車市場では高値をキープし続け、値段は上昇傾向にある名車中の名車となっています。

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