カスタムやチューニングカーに精通しているドライバーでもあり、自身のマイカーをカスタムしてドリフトやサーキット走行を楽しんでいる谷口信輝選手は、いったいどんなコンセプトでカスタムをしているのでしょうか?また、自動車業界に対してどんな考えを持っているのでしょうか?後編は谷口選手の価値観や思想を語って頂きました。
俺はサラブレッドじゃ無いから
ーーー今の若手レーシングドライバーに、車好きが少ないというのは本当ですか?
レーシングドライバーって、基本車好きじゃない人が多いからね。
子供の頃からやらされてきただけで、乗るのが仕事だから車が好きでっていう人は少ない。
俺がよく雑草系ドライバーって車好き走り屋兄ちゃんがレーサーになって、土屋圭市っていうのがいて、織戸学っていうのがいて、谷口信輝っていうのがいて、この次の俺の下が出てこないんだよね。
みんな一番上のおっちゃんも次のおっちゃんも「10年に1人の逸材だ。」って自分で言ってるけど、俺もう15年は経つけど俺の下が出てこないんだよね。
だけど、運転がうまい人とか速い人とかはいくらでもいるわけ。
それ以外の人を魅了する魅力的なものなのか、土屋、織戸、谷口っていうのはドリフトもレースもできて、さらに媒体持ってて、ファン層をいっぱい持っててっていうところが他のドライバーと違う強みじゃんね。
そういう俺らの次みたいな、同じようなキャラは今はいないよね。うまい人はいっぱいいるよ。
あとは真面目な人が多くて・・・。
もちろん真面目はいいことなんだけど、例えばレースの優勝者のインタビューがあって、「今日はチームがいい車用意してくれて、タイヤメーカーさんがいいタイヤを用意してくれて、相方のお陰で勝てました」みたいな。
超優等生なことを言うと、ライターさんからしたら「またこのコメント…。」「さっきのレースも次のレースもこの後のレースもみんなこれ。」みたいな、おもんないってなるわけじゃん。
それが正しい回答なんだけど、俺とかは違うわけ。
何か裏話とか、実はこういうことがあったんですよとか、何かちょっとした毒とか欲しいんでしょ?みたいな。
俺は、書き手側の気持ちを考えて喋るから、色んなライターさんはちょっとネタに困ったりページ数に困ったら、「何かない?」みたいに俺んとこに来る。
だから喋る時は俺は書き手のためを思って喋るし、俺は露出してもらえるしっていうところで、そういうのを分かってない人が多いじゃん。
要は俺はサラブレッドじゃないから、人の顔色伺わなくていいっていう。
若いトヨタの育成ドライバーとかは、「こんなこと言ったら怒られる。」とかあるわけじゃん。何か言うと誰かに角が立つとか。
だから、一辺倒な当たり障りのないことをね。
俺はそんなの関係ないからさ。
スーパーGTで優勝したけど途中で小暮にぶつけられてスピンして、優勝会見でサーキット中に俺のモニターが写されて喋ってる時に、カメラに向かって「小暮、まだ帰るなよ。」と、「後で話あるから帰るなよ。」ってカメラに向かって言ったら、インタビュー終わった後に小暮が俺の部屋に来たけどね、「すいませんでした。」って。そういうとことかもね(笑)
意外な事実!?ネット通販でパーツを買う
ーーー話は変わってカスタムカーについてなんですが、谷口さんはインターネットでパーツを買う事はありますか?
全然あるよ。
今86とかいじってるんだけど、86にロードスターのメンバーとか使ってるから、ロードスターのアームなわけ。
脚をダブルウィッシュボーンにするから、ロードスター用のキャンバーを付けるのにアッパーアームとかその辺をこの間ネットで探して買ったりしたよ。
あと、俺がそこのメーカーに電話すると「協賛しますよ。」って言われちゃうから、ネットで買うことは結構多い。手軽に買えるのもいいよね。
ーーー谷口さんのカスタムのやり方って、一般の人とかが参考にしやすいものになってると思っているんですが、何かポリシーやコンセプトみたいなものはありますか?
基本的には、エグいやり過ぎのものはやらない。あれだけ例外だから。(指差して)ゲテちゃん。
あれは、D1ドライバーの川畑真人に「好きなようにやってくれよ。」って言って、川畑に1台ポイッと渡したからあんななっちゃったけど(笑)。
俺は基本的にはスマートな感じがよくて、86とかも世の中の86オーナーが「谷口のような86にしたい。」と思うようなっていうのがコンセプトだから、86の弱点とかどんくさいとことかを消して、一番俺が思ういい状態っていうところを目指してつくったから、誰に乗らせても俺の車は絶賛される。
トヨタ系チューナーも「こんなんがいたら困る。」って言って、「まずいな、これ。」「これ誰にも乗せないで。」みたいな。
乗り心地もいいし、パワーも下から上までウワーッていくし、非常に高評価。
でも世の中の人たちからしたらシャコタンツライチとか、俺が言ってるのはぬるいわけじゃん。
でも、こちとら公共の電波で合法の枠の中でやってるから、これぐらいがせいぜいなんだよね。
フェンダーがリムに刺さっていくような、タイヤとリムの間にフェンダーが入っていくようなのはあの番組では無理だから、あくまでもオンルールの中でのやつだからね。
ーーー実際は、もっとシャコタンな感じがいいんですか?
車にもよるけどね。あとは、俺はいいおっちゃんだから、車高の低さは知能の低さじゃないけど、やっぱり年齢と共にある程度は、恐らく指一本入るより下げるのは、ちょっと俺の歳だとなしかなって。
ーーーなるほど。年齢によって変わっていくって感じですね。
そう。だから、若い人たちには「そんな落ち着かずにもっと落としちゃえよ。」とか思うし、もっとシャコタン乗りを斜めに斜めに、「マンホールは跨がずに踏んで走れよ」と、「轍も跨がずに乗れ乗れ」みたいなね。
「段差でバンパーは擦るもの擦るもの!みたいな感じでやれよ、若者」って思うけど。
そういう一通りのね、「君たち何歳からいい子ちゃんやっとんねん?」と、「いい子ちゃんになるのは、もうちょっと後でいいんじゃないの?」っていうところもあったりするよね。今、社会がうるさいとこもあるけど。
今の日本は過保護??
ーーーというと、今の自動車を取り巻く社会に色々不満が?
トヨタとか自動車メーカーの人に会ったらよく言うんだけど、以前日本車のチューニングカーとか、いわゆるスポーツカーの黄金時代には、スカイライン、ゼット、スープラ、ソアラ、シルビア、ローレル、セフィーロ、セブン、何やかんやいっぱいあったじゃん?
その黄金時代がある時を境になくなってきて、スポーツカーなんか売れないから、利益にならないからって、メーカーがどんどん淘汰していった。
それとイジらせない。イジったら二度とディーラーに入れさせませんみたいなのとか。ディーラーでイジったものだけしか駄目みたいな。
そういう自分さえ良ければいいみたいなことをやってると一瞬は良さげだけど、この業界にも食物連鎖っていうものがあって、まわりまわって自分の首を絞めるよっていうのを昔からよく言ってたんだけど、絶対それはあったはずなんだよね。
世の中の若者から車好きが減ったとか、車離れとか言うけど、もちろんネットやら携帯やらっていうのも理由の一つだけど、自動車メーカーのせいでもあるんだよね。
楽しい車を消していったのはあなた達だし、昔こういう車に乗ってたら女子にモテてたのが変わってきたっていうのも自動車メーカーのせいだし、あなた方の意識が足りないからだみたいなね。
車を流行らせるとこまでがあなた達の仕事でしょって。
今トヨタとかが筆頭に、いろいろと面白そうな車出してくれてるでしょ?
非常に有難くて、ただ値段が若者には買えない値段っていうのもあるんだけど、まずは国土交通省とかが変に厳しくすることばっかだから、日本は良くも悪くも過保護なんだよね。
事故が起きたら誰が責任取るんだ、今後出ないようにどう対策するんだとかって、どこまで過保護なんだと。
車を良くすることは、もちろん企業努力としていいんだけど、自社の全ての車にエコだの安全装備だのって全部にやらなくてもいいと思うの。
安全な車、快適なファミリーカー、スポーツカー、結構手強い車、やんちゃな車とか、いろいろあっていいと思うんだよね。
この全てを管理下に置けるようにしてる事が逆につまんなくしていってるし、そこら辺の日本の過保護をもうちょっと何とかしろと。
陸運局も国土交通省もそんなに締め上げて誰が得するんだっていう・・・。
どこに利権が絡んでるんだ?誰か一人だけ癒着してるだろみたいなね。
日本に免許を取るための自動車学校ってあるけど、あれは免許を取るための学校であって、運転技術を学ぶ学校じゃないんだよね。
だから、全自動車メーカーがお金を出し合って、日本中に運転学校っていうのをつくるべきだと思う。
スポーツドライビングじゃなくて、世の中ペーパードライバーもいっぱいいるし、自動車学校に何とか通って免許も取ったけど、考え方がおかしいやつとかもいっぱいいるし。
そもそも車の運転とはこういうものですよとか、その運転ポジションは駄目ですよとか、ハイヒールで運転しないように、とかね。
車の便利性と楽しさと、そして危険性を教える運転学校みたいなのをね。
日本中に誰もが気軽に行けるような学校を、自動車メーカーがお金出し合ってやるべきだと思う。
そこにレーシングドライバーの天下りがいけばいいと思う。
プロでやっていけてないとか、もう現役引退した人とか・・・そう思うけどね。
まとめ
谷口信輝選手へのインタビューを通じて編集部が感じたのは、自分の美学を実現し続けるために妥協を許さないストイックな人という印象でした。
レーシングドライバーとしては遅咲きとも言える30歳でデビューし、レースに限らずドリフトでも活躍。
数々の自動車雑誌やWeb媒体でのインプレッションなど、サーキット以外でも多方面で活動しています。
そんな谷口信輝選手の活動から、これからも目が離せません!
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