今シーズンも、全日本F3選手権に挑戦している三浦愛。前回、鈴鹿サーキットで行われた第4・5戦では見事にポイントを獲得。Cクラスにステップアップしてから苦戦が続いていたが、そのイメージを払拭する力強い走りを見せた。あれから3週間、入賞できたという自信を持って臨んだ富士スピードウェイでの第6・7戦。そこには新たな課題と、新たな目標が待っていた。

©︎Tomohiro Yoshita

「これが自分の今の実力」…悔しさと反省で終わった雨の第6戦

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5月13日に行われた第6戦。富士スピードウェイは朝からあいにくの雨模様。特に午前中は雨量がひどく、フルウエットコンディションの中での予選。

今回は第6戦用、第7戦用に10分ずつのセッション時間が設けられ、それぞれのベストタイムでグリッドが決定。三浦は雨の中果敢にアタックしたものの、両レースとも9番手。思うようにタイムが上がらず、不本意な結果となった。

午後の決勝レースも、序盤に10番手に下がると、そこからなかなか順位を上げられないレースが続く。途中、前方を走る山口大陸がスピンを喫し、これで9番手を手にいれるが、12周目の最終コーナーで自らもスピンを喫してしまい、11番手まで後退。そのままチェッカーフラッグを受けた。

レース後、他車の失格と、ペナルティがあり最終的には9位という正式結果になったが、前回の鈴鹿ラウンドでの2戦連続入賞から程遠い結果に。順位もそうだが、12周目の自身のミスを責めている様子だった。

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「単独で走っていて、徐々にペースも上がってきていた中、最終コーナーのアウト側でリアタイヤを(ダートに)落としちゃって、スピンしてしまいました。完全なポカミスです」

「攻めた結果といえば結果なんですが、止まりきれなかったわけでもなく、単純に自分がギリギリ攻めていたところを落としてしまった」

「前との差がそこまで広がらなかったので、最後まで追いかけたかったですし、どう頑張ってもポジションをあげることはできないので、タイムだけでも(良いものを)残したいという思いで、走っていました。それなりにポジションはキープできましたが、予選もタイムが出せていなかったですし…」

「トライできたことは良かったと思いますが、ミスをしてしまったところが(自分の実力が)まだまだだなと感じました。スピンまではいっちゃいけないし、コースに留まれるようにしておかないといけない。それも、かなり攻めたわけではなく、ポカミスに近いものだったので、反省しかないですね」

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レースを終えた三浦は、悔しさというよりかは、自分自身の中にまだまだ未熟な部分があることを再認識して、反省しているというかやるせない表情を見せていた。

「悔しいですけど、これが今の実力なんだなと感じました」

「タイムを出すため、速く走るための技術がどうこうじゃなくて、レースの中での駆け引きだったり組み立てだったり、ちょっとした時の判断だったりが、ドライバーとしての強さがまだまだ足りないんだな、と……」

「第7戦はスタートを決めて、多分入賞圏内を走れるペースでいけるはずなので、あとは自分の細かいミスを減らして確実に組み立てて行くしかないです」

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前回の鈴鹿でポイント獲得できた嬉しさと達成感がある反面、ここでのポジション争いを定着化させ、さらに上へとステップアップしたいと考えていた三浦。

しかし、ここからの領域で戦っていくためには、自身のドライビングスキルやラップタイムの向上だけではなく、接近戦の中での正確かつアグレッシブなドライビングが必要。

もちろん、こういった雨の状況下でも抜群の速さを引き出せなければならない。

それが今の自分には、まだまだ足りていないのかもしれない。

自信を持って臨んだはずの富士ラウンドだが、また新たな課題を突きつけられる1戦となった。

 

“なんとかしなきゃ!”最後まで攻め続け、勝ち取った第7戦での1ポイント

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翌日の14日に行われた第7戦。一転してドライコンディションとなり、三浦は気持ちを切り替えてマシンに乗り込んだ。

全日本F3では数少ない女性ドライバーということもあり、注目・人気度はライバルよりも高く、グリッドでも多くのファンに囲まれていた。しかし、コックピット内の三浦はただ一点だけを見つめていた。

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“今日こそポイントを獲得する”

スタートでは、上位のマシンで接触もあり、9番手から一気に6番手へポジションアップ。さらに前日の第6戦では2位に入っているイェ・ホンリーの背後につけ、攻略を目指した。

その後、大津弘樹に抜かれるも、ホンリーの前に出て6番手を取り戻すが、中盤以降はタイヤが苦しくなりペースが伸びない。

後ろには4台のマシンが連なり、防戦一方の展開。その中で、最終コーナーでわずかにミスしたところをブルーノ・カルネイロに突かれ、残り6周で7番手に後退。

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フタを開けてみれば、昨日同様にポイント圏外へ落ちてしまう。

昨年までの三浦なら、このままズルズルと後退してしまっていったかもしれないが、前日の悔しさもあってか、この日の彼女は一味違っていた。

「やっぱり、1回入賞しているので、これが6番手争いだという意識はずっとありました。この1ポイントは大きいなと思っていました」

「カルネイロ選手に抜かれて差が少し広がってしまいましたが、“何とかしなきゃ!”“何か(チャンスが)ある”と思って、ずっとプッシュし続けていました。ここで7位と6位だと、次に向けての流れも全く変わってしまうので、本当に何とかしなきゃ…という感じでした」

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抜かれた当初は少し差も広がっていたが、1ポイントへの執念で、カルネイロとの差を詰めにかかる。そして、終盤になって数少ないチャンスが。

カルネイロの前方に周回遅れのマシンが発生。この処理に手間取ってしまいペースが落ちてしまったのだ。

そこで一気に間合いを詰めた三浦は、ファイナルラップに入るところのメインストレートでオーバーテイク。最後の最後で6番手を取り返した。その後は、とにかく必死で逃げ切り、チェッカーフラッグ。最後は0.8秒と僅差だったが、21周に渡る激闘の末、1ポイントを掴み取った。

 

「次の岡山では入賞が絶対条件」

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レース後、取材のためEXEDYチームのピットを訪れると、そこには全てを出し尽くし、充実した表情の三浦がいた。

前回の鈴鹿ではラッキーもあった中で掴んだ入賞だったが、今回は最後の最後までバトルをして、わずかなチャンスを見逃さずに攻めていって掴んだ1ポイント。鈴鹿以上に手応えと感じている様子だった。

しかし、余韻に浸っている暇もなく、次は2週間後に岡山国際サーキットで第8・9戦が控えている。

ここまで3度の入賞を果たし、すっかりトップ6圏内を争うメンバーの仲間入りを果たしたが、彼女はすでに“その先”を見据えていた。

「今はポイント(6位以内)を取らないと自分の中ではレースとして全然ダメ…という感じです」

「ただスキル的にも、あと一歩上のレベルにいかないと、この先はキツくなるかなと思いますし、もっと上位に絡んでいけない。本当に自分との戦いです」

「あとペースも0.3秒くらい上がれば、もっと楽に前についていけると思うので、引き続き頑張りたいです」

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そして、岡山ラウンドに向けては、こんな力強いコメントを披露してくれた。

「前回も岡山は、決勝のペースはよかったので、次はスーパーフォーミュラも開催されるので路面コンディションは変わると思いますが、上り調子ではあるので、自信もっていけば問題ないかなと思います」

「クルマ的にもどんどんレベルしていける方向にもっていっています。全部のポテンシャルが上がってきているから、うまくまとまれば…いけるかなと思います」

「入賞は絶対条件で、またその上を目指したいなと思います」

 

まとめ

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三浦自身もコメントしていたが、鈴鹿での初入賞を機に、一つ一つの発言やレース前後の表情にも大きな変化が現れているように感じた。

鈴鹿でポイントを獲得できるだけのパフォーマンスを証明でき、富士ラウンドでは、そのポジションを維持することができた。

そして、このポジションに満足せず、次はもっと上に行かなければならない。そこで見つかった今回の課題と、今後の目標。これらをどのように改善して岡山ラウンドにやってくるのか。非常に楽しみなところ。

彼女のCクラス初表彰台が見られる日が、着実に近づいているのを感じたレースウィークだった。

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