ホンダのハイブリッドスポーツ「CR-Z」は、レースでも活躍した車ですが、2017年1月に販売が終了してしまいました。その「CR-Z」のルーツは1983年に発売された「バラードスポーツCR-X」にまで遡ります。その後、「CR-X」、「CR-X・デルソル」とモデルチェンジのたびに名称が変わっていった稀有なモデルである「CR-X」と、その後継モデルとして2010年に登場した「CR-Z」がどのようなクルマだったのか、そしてモータースポーツとのかかわりをご紹介したいと思います。
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バラードスポーツCR-X 誰も見たことのなかったFFライトウェイトスポーツ
1983年~1987年
1983年に発表された「バラードスポーツCR-X」は、同年に発売された3代目シビックの派生車種「バラード」シリーズとして登場。
テールエンドを断ち切った「コーダドロンカ」と呼ばれるファストバッククーペボディーをまとい、アウタースライドサンルーフ、ドライブコンピュータ+デジタルメータ、ルーフベンチレーションなどという新しいアイテムが選択できるなど、従来のハッチバックとは異なる 2+2のデートカーとして若い層の人気を集めました。
また、エンジンはシビックと共通の1.3Lと1.5L(のちに1.6Lも追加)が採用され、けっしてパワフルなものではなかったのですが、シビックのハッチバックよりも180mmも短いホイールベースやローギアード化されたMT仕様などによる、クイックなハンドリングが持ち味のFFライトウェイトスポーツとして人気を集めました。
モータースポーツへの参加
シビックのハッチバックの方が軽量だったこともあり、モータースポーツへの目立った参戦はありませんでしたが、無限が、ブリスターフェンダー、専用のフロントマスクとリアスポイラーなどを「無限 CR-X PRO」の名称でリリースしており、このパーツを組み込んだが「無限 CR-X」が鈴鹿サーキットのマーシャルカーとして用いられていました。
ホンダ CR-X Si のスペック
全長×全幅×全高(mm):3675×1625×1290
ホイールベース(mm):2200
車両重量(kg):860
エンジン仕様・型式:ZC 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1595
最高出力:135ps/6500rpm
最大トルク:15.5kgm/5,000rpm
燃費:14.8km/L
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:70万円前後(2017年5月時点)
ホンダCR-X リッター100PSの俊足モデル発進!
1987年~1992年
前年にバラードがラインナップから消滅したため単独モデルとして登場した2代目は、全体にワイド&ローのパッケージングとなりました。
また、徹底したフラッシュサーフェス化により、CD値0.30という優れた空力性能をも達成したデザインとなったのです。
中でも特徴的なのは、後方視界を確保するため、リアエンドに「エクストラウインドウ」が採用され、黒いピンドットにより外板パネルとの一体感が生まれました。
そのシャープなフォルムは先代以上に若い世代の人気を得ることになりました。
また、アウタースライド式サンルーフの他にUVカットガラス製の「グラストップ」を装着する新オプションが設定されるなど、装備類も格段に向上したのも人気の要因と言えます。
1989年には1.6Lの「VTEC」エンジンを搭載した新グレード「SiR」が追加設定され、その160PSという最高出力はリッターあたり100PSという市販のNAエンジンとしては驚異的な出力を実現しました。
モータースポーツへの参加
先代と同様に無限が、「無限 CR-X PRO.2」をリリースし、鈴鹿サーキットにおいてマーシャルカーとして用いられていました。
ホンダ CR-X(CRX:E-EF8) SiR 1990年式のスペック
全長×全幅×全高(mm):3800×1675×1270
ホイールベース(mm):2300
車両重量(kg):970
エンジン仕様・型式:B16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1595
最高出力:160ps/7600rpm
最大トルク:15.5kgm/7,000rpm
燃費:13.4km/L
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:40~150万円(2017年5月時点)
ホンダCR-Xデルソル 新境地、クーペとオープンの融合
1992年~1997年
それまでのファストバックスタイルのハッチバックから一転、CR-Xには新たに「デルソル」というマスコットネーム」が加わり、ホットハッチ的なイメージから「マツダロードスター」のようなオープントップでクルージングするモデルとなりました。
その特徴的な電動オープンルーフのアルミ製「トランストップ」は、スイッチ操作のみで屋根をトランクルームの専用ホルダーに収納することを可能にし、クーペとオープンという2つのボディスタイルを手軽に楽しめるようになっています。
最後のCR-Xとなったデルソル
エンジンには前期型に1.5L、後期型に1.6Lが設定され、「SiR」の出力は170PSに向上していますが、車両重量はボディの大型化とオープントップ機構のために1,000㎏を超え、初代から続くFFライトウェイトスポーツとは別次元の車種となりました。
そのため人気と販売台数は伸び悩み、日本国内でのスペシャリティクーペ市場の低迷もあり、1997年8月に生産終了となってしまいます。
CR-Xというネーミングもこのモデル以降使われることはありませんでした。 そして時は進み、2010年2月、CR-Xの実質的な後継車種CR-Zが発売されるのです。
ホンダCR-Xデルソル 1995年式SiRのスペック
全長×全幅×全高(mm):4005×1695×1255
ホイールベース(mm):2370
車両重量(kg):1100
エンジン仕様・型式:B16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1595
最高出力:170ps/7800rpm
最大トルク:16.0kgm/7300rpm
燃費:13.6km/L
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:28~88万円(2017年5月時点)
CR-Z ハイブリッドスポーツの登場と終焉
2010年~2017年
CR-Zは、低燃費のハイブリッドカーでも運転する楽しさを感じられる2+2のライトウェイトスポーツというパッケージングで、まさに初代CR-Xを彷彿させるものでした。
そのハイブリッドシステムは、1.5Li-VTECエンジンとIMAシステムを採用し、走りの楽しさと25.0km/L の優れた燃費性能を高次元で両立させています。
また、ドライブ・バイ・ワイヤ、モーターアシスト、CVT変速制御、電動パワーステアリング、エアコンなどを統合制御する「3ドライブモードシステム」などの先進機能も装備し、発売当時には初のハイブリッドスポーツとして話題を集めました。
そして、その年の日本カーオブザイヤーを受賞したこともあり、2+2のクーぺモデルながら爆発的な販売台数を記録したのです。
モータースポーツへの参加
モータースポーツにおいても、2012年からレーシングハイブリッドシステムを搭載した車両がGT300クラスに投入され、2013年には無限CR-Zがシリーズチャンピオンになったり、アジアン・ルマン・シリーズなどでも活躍するなど、CR-X時代を含めて最もメジャーレースで活躍している車両です。
ホンダ CR-Z 2016年式aファイナルレーベル(ZF2)のスペック
全長×全幅×全高(mm):4105×1740×1395
ホイールベース(mm):2435
車両重量(kg):1150
エンジン仕様・型式:LEA 水冷直列4気筒SOHC16バルブ+モーター
総排気量(cc):1496
最高出力:120ps/6600rpm
最大トルク:14.8kgm/5,000rpm
燃費:19.4km/L
トランスミッション:6MT/CVT
駆動方式:FF
中古車相場:39~329万円(2017年5月時点)
まとめ
ハイブリッド化により、一度はライトウェイトスポーツを復活させたかと思われましたが、2017年1月、CR-Zはモデルチェンジされることなく販売を終了します。
クルマの志向の多角化と、ユーザーの求めるニーズには、結局受け入れなかったのです。
今、求められているスポーツモデルは2ドアのクーぺモデルではなく、SUVスタイルが主流となっています。
これを見事に受け止めたのがトヨタの「C-HR」でした。
これは、CR-XやCR-Zに憧れた世代にとっては何とも理解しずらい現状で、スポーツモデルらしいスポーツモデル。
それもNSXのような庶民の手が届きにくいモデルではなく、きびきびと走れてスタイリッシュな車種の登場を期待せずにはいられません。
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