今年も8時間にわたって激闘が繰り広げられた2016鈴鹿8耐、YAMAHA FACTORY RACING TEAMが2年連続で圧勝し幕を閉じた。セーフティカーが出ないガチンコ勝負な展開の中、後続を次々と周回遅れにする速さに驚いた人も多かったと思うが、その中で唯一同一ラップで8時間を駆け抜けたのが、TeamGREENだった。参戦3年目、悔しさは残るものの来年につながる2位表彰台だった。

Photo by Tomohiro Yoshita

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13年ぶりに直系チームが復活、最初の2年は苦戦続き

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カワサキは1990年代はワークス体制で参戦しは何度も上位争いを繰り広げてきており、その中には今回のメンバーでもあった柳川明もいた。

しかし、陣営は1993年の優勝を最後に勝利から遠ざかっており、2000年を過ぎるとワークス体制での参戦を休止。長い間、沈黙が続いていた。

そこから13年の月日が経った2014年、全日本でも活躍するTeamGREENが直系チームとして参戦を表明。

決勝では目まぐるしく天候が変わるなか、一時は2位まで上り詰めるが途中転倒などもあり、結果は12位。

チームも「13年ぶりの参戦で見よう見まねのレースになってしまった」と悔しさをにじませていた。

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翌2015年は、特に速さという面で大幅な進歩を見せる。

金曜日の公式予選では渡辺一樹が2分6秒656で全体ベストをマーク。ヤマハが圧倒的な速さをみせた週末の中で、唯一ヤマハの前に出たライダー・チームだった。

トップ10トライアルでも果敢に攻めていったが、わずかに及ばず2番手。

決勝での逆転にも期待が高まったが、序盤からまさかの不運に見舞われることになってしまい、最終的にトップから5秒遅れの9位に終わってしまった。

 

勝負の3年目、新マシン投入に優勝経験者が加入

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そして迎えた2016年。カワサキは満を持して新型「Ninja ZX-10R」を導入。さらに柳川、渡辺に加え、鈴鹿8耐で2度の優勝経験をもつレオン・ハスラムが加入。合同テストから全日程チームに帯同しマシンの熟成に努めた。

予選ではハスラム、渡辺の力走もあり、僅差の戦いを制し3番手。決勝はベテランの柳川がスタートライダーを担当。ヤマハ・ファクトリーには及ばなかったが、8時間にわたって3人がミスのない走りを披露した。

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その結果、序盤から接戦を演じていたヨシムラ・スズキにも競り勝ち、218周で2位表彰台を獲得。セーフティカーが出ないガチンコ勝負でのレースとなった中で、唯一トップと同一周回で走りきった。

以前からカワサキで活躍してきた柳川にとっては、鈴鹿8耐の表彰台は1999年以来、実に17年ぶり。

「みなさんのおかげで、ようやく2番まで来れました。ただ…やっぱり優勝したいです!」と、今回の結果を成果として捉えつつも、やはり勝ちたいという本音をもらしていた。

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柳川と同じくTeamGREENのエースとして鈴鹿8耐に挑戦してきた渡辺にとっては初の表彰台。

「いやー本当に長かったですね。ここ2年が本当に悔しい結果で終わってしまっていたので、こういう場に初めて立つことができて…言葉にならないですね。レース中、本当にたくさん緑の旗を振ってくれているのがわかりましたし、それが力になって、こういう結果につながりました。来年もみなさんの応援を力に変えて、もう一つ上のステップに踏めると思うので、ぜひ来年も応援をよろしくお願いします」と、来年への強い思いを発していた。

そして、今回はTeamGREENの快進撃を支えたレオン・ハスラム。

「鈴鹿8耐で走るということは僕の夢でもある。そんな中、今年はカワサキで走ることができて本当に幸せだった。このレースはただでさえ完走することが難しいのに、2位まで来ることができた。これはチームメイトと、ここまで頑張ってくれたスタッフのおかげ。そして応援してくれたみんなのおかげです。本当にありがとう!」と感謝の気持ちを伝えていた。

まとめ

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結果的にはトップから2分17秒差の2位。一見、ヤマハに置いていかれて負けたという表現もできる。

しかし角度を変えて見れば「あんなに強かったヤマハに、1台だけ同一ラップで食らいついた」と捉えることもできる。

ヤマハ側は明確な発言はしていなかったが、あそこまでいけば全車周回遅れという快挙も目指していたかもしれない。

それを阻止したTeamGREENにとって、今回の2位は価値あるものだったのかもしれない。

新型ZX-10Rもまだまだ伸び代があるマシン。来年はさらに進化をし、鈴鹿サーキットがライムグリーン一色に染まるレース展開が…待っているかもしれない。