今回、イギリス発のタイヤブランド「DAVANTI(ダヴァンティ)」が新たに送り出したハイグリップスポーツラジアルの「PROTOURA RACE(プロトゥーラ レース)」。お求めやすいコスパに優れた価格と性能で多くの指示を得ていましたが、新たに改良版の新型をリリースしたというではありませんか。
そこで、レーシングドライバーの塚本ナナミさんとともに、進化の具合を徹底テスト。一般道から高速道路、さらにサーキットに至るまでリアルな使用感を比較しました。果たして、その仕上がりはどこまでドライバーを笑顔にさせるのか?新旧モデルのガチ比較、スタートです。
Photo : Takanori ARIMA Text : Shingo MASUDA

目次
街乗り&高速道路で進化具合をCheck!

まずは公道インプレッションからということで、一般道を走り出した印象は、スポーツ系ラジアルらしい「しっかり感」。マンホールや舗装の継ぎ目など、小さな段差もしっかりと伝えてきます。また、ロードノイズは、コンフォートタイヤと比べれば当然大きめですが、車内で普通に会話ができるレベルです。
今回のテスト車両であるナナミさんのトヨタ 86(ZN6)は、86 / BRZレース用車両であり、更にラリーで使用するため、底面に鉄板を張った言わばレース車両。余分な内装は剥がされマフラー音も大きく、足回りはTRD製のレーシングサスペンションに交換されています。
車が車だけに・・・と言っては失礼かもしれませんが、オーナーであるナナミさんも「私の車でここまでロードノイズが抑えられているということは、一般的なスポーツカーならかなりストレスなく走れますね」と好印象を口にします。

続いて高速道路へと向かいます。一般道で感じたしっかり感は、当然高速道路でも感じられ、直進安定性も申し分ありません。また、どうしても高速域で気になってくるロードノイズは、一般的なスポーツタイヤと同等レベル。快適で静粛性を求めている車種であればつゆ知らず、スポーツカーに乗っているオーナーであれば十分満足できる“快適性”だと感じます。
しかし、そんなことに感心していてもしょうがありません。PROTOURA RACEの主戦場は“サーキット”ということで、千葉県にある「袖ケ浦フォレストレースウェイ」に向かいます。
【サーキットタイムアタック①】まずは旧型プロトゥーラ レースの実力をCheck

いよいよ袖ケ浦フォレストレースウェイに到着後、早速、当日の気温(23℃程度)を考慮し、エア圧は180kPaに合わせ旧型プロトゥーラ レースでタイムアタック。当日は気候が良かったこともあり、走行台数はやや多めなため、思うようにクリアラップが取れない状況です。
当初は2周のアタックを予定していたものの、クリアが取れずそのままアタックを続行。途中車の状況を見つつクーリングを挟みながら、結果的に13ラップをこなしてもらいました。まずはタイムということで、計測結果を確認したところ、驚くことに11ラップ目にベストラップを記録しているではありませんか!通常の所謂サーキット向けタイヤの“美味しいところ”はせいぜい2〜3ラップ。ハード目のコンパウンドだとしても5〜6ラップのところ、11ラップ目にベストが出ていることには驚きです。

ナナミさんによると「温まりは早く大きなクセはなく素直な反面、あまり無理は効かない印象です。“もう少しいけるかも”と攻め込んでいくとややグリップの不足を感じます。ただ、ラップタイムを見てもらえれば分かる通り、周回を重ねても大きな落ち込みが無いのは安心ですね。実際後半でベストタイムが出ているので、初心者の方がグリップの限界を感じながら練習するにはいいと思います!」とのこと。
走行後のエア圧は約220kPaと、温まり方は一般的な印象です。一発のタイムを狙うというのは厳しいかもしれませんが、安定してサーキット走行を楽しみたいというライトなユーザーには、十分おすすめできます。
【サーキットアタック②】新型プロトゥーラ レースでは想像以上の結果に

続いて、新型プロトゥーラ レースに履き替えコースイン。結果を先にお伝えすると、なんと約4秒もタイムアップ!旧型のときと比べて走行台数が少ないため、単純な比較はできませんが、約2kmのサーキットでこれほどの差が出たのは驚きです。
タイムアタックを終えたナナミさんにコメントを求めたところ、「これは全くの別物です!完全に生まれ変わってます!」とかなり興奮気味に話してくれました。180kPaでスタートしたエア圧は約250kPaと、旧型よりも高いという結果。その原因については、「旧型よりもかなりアグレッシブに攻めることができたので、より多く熱が入ったのかもしれない」とのことでした。

「縦横のグリップバランスで言えば、やや縦が強い印象ですが、決して横方向が弱いという感じではありません。コーナリング時に荷重をかけるとちゃんとタワミながら支えてくれて、懐の深さがあります。旧型で感じた“無理が効かない”ということもなく、限界を超えてしまっても待っていればしっかりグリップは戻ってきます」とかなり好印象のようです。

サーキットのタイムアタックは、気温、路面温度、湿度、風、一緒に走行している台数、車のコンディションなどさまざまな条件によって結果は異なります。そのため、同日同車種だからと言って、単純な比較はできません。しかし、「顔のアップはダメです!」というほど汗をかきながら本気のアタックをした結果、約2kmのサーキットで4秒弱のタイム差が出たことは決して無視できない結果です。
イギリス発祥のダヴァンティ「プロトゥーラ レース」とは

ダヴァンティは、2015年にイギリスで誕生した新進気鋭のタイヤブランド。コストパフォーマンスに優れ、軽自動車からセダン、スポーツカー、貨物自動車まで幅広いラインナップを備えています。
今回取り上げているプロトゥーラ レースは、同ブランドのスポーツタイヤであり、ストリートからサーキットまで対応。165/55R14という軽自動車サイズで、¥5,990(※従来モデル、原稿執筆時点の価格)とコストパフォーマンに優れています。

改良版として新たに展開された新型プロトゥーラ レースは、トレッドコンパウンド・プロファイル・ストラクチャーを改良。従来品であるプロトゥーラ レースの耐摩耗性や汎用性は維持しつつ、ステアリングコントロールやハイスピードでの安定性が向上されているとのことです。
トレッドパターンは全く同じで、旧型と新型で見た目の違いはありません。正直、どこまで違いがあるのかなと懐疑的でした。しかし、結果はご覧の通り歴然!その違いをよく見ると、カーカスと呼ばれるタイヤ内部の構造体に違いがあることがわかります。

画像ではやや見にくいかもしれませんが、今回取り上げた235/40R18で新旧を比較すると、nylon(ナイロン)が1から2に増えており、構造(ストラクチャー)自体を強化していることが分かります。
適合するサイズさえあれば、まだ溝が十分残っている旧型モデルのユーザーでも、今すぐ買い換えても損はありません。
まとめ

「普段乗りからサーキットまで、車を思いっきり楽しみたい」という欲張りなドライバーに向けて、新型プロトゥーラ レースは確実にその期待に応えてくれるタイヤです。しかも、とてもリーズナブルで、今回のサイズ(235/40R18)の価格は12,390円(税込み)!有名メーカーでは3万円前後してもおかしくないサイズのスポーツタイヤでこの価格というのは、正直かなり驚きです。
サーキットでは十分なパフォーマンスを発揮し、周回を重ねても大きな落ち込みはなし。そして、そんなスポーツタイヤでありながら、一般道や高速道路では十分な乗り心地と静粛性を確保しており、まさに「走る楽しさ」を満足させられるタイヤだと断言できます。サーキット走行を楽しみたいけどタイヤ代が気になる、普段乗りからスポーツ走行までこなしたいのなら、ぜひこの新型プロトゥーラ レースを選択肢に入れてみてください。